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【基礎編】ツール・ド・フランスとは

 

毎年夏、およそ3週間にわたりフランスを自転車で一周するステージレース、

それが『ツール・ド・フランス』。

 

灼熱の太陽の下も、雨の日も風の日も、屈強な男たちが汗を流し息を切らしながら、坂道を歯を食いしばって登り、でこぼこの石畳を踏み越え、栄光を手にするために3000km以上の道を駆け抜けていく。

 

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数々の名シーンは夏のフランスを巡る風物詩であり、選手たちの汗と骨折と涙と笑顔が織りなす群像劇であり、孤独とチームプレイが交錯する壮大な叙事詩なのだ。

 

第1回大会が開かれたのは1903年。それから100年以上、二度の大戦も、ドーピングの蔓延も、新型ウイルスにも屈することなく繰り返されてきた。それだけの年数をかけて毎年200人もの選手が走っているが、あの黄色いジャージに袖を通した人数は、たかだか250人ほどしかいない。それだけ特別なジャージなのだ。

 

お祭りとしての華やかさも見どころ。悪魔の格好をしたおじさんや空撮を狙った巨大なアートやパフォーマンスで出迎える人々。キャラバン隊と呼ばれる宣伝カーが選手たちの前を走りお菓子やグッズを気前よくばら撒く。沿道に集う様々な国からの観客たちは選手たちが通るすぐ横で、大声で声援を送り旗を振り踊る。

 

コースは毎年変わるがゴールはパリのシャンゼリゼ通り。凱旋門を背景にレースを完走する選手たちの晴れやかな笑顔と、それを祝福する観客たちは、見てるだけでも幸せな気分に包まれる。

 

彼らは夏が来る度に新しいドラマを生み出し、僕たちはそれを楽しんで、また夏が来ることを願うのだ。

 

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レースの規模なども簡単に紹介しよう。

世界三大スポーツイベントのひとつとも称され、23日間(うち休養日が2日)で総走行距離は3500km、獲得標高は5万m、総走行時間は90時間に及ぶ。

ヨーロッパはもとより世界中で人気があり、国外からの観光客も含めた沿道の観客は1500万人を超える。テレビ中継は世界中の190を超える地域で放送され、その視聴者数は35億人とも。

 

総合優勝者には栄誉の称号のマイヨ・ジョーヌ(黄色いジャージ)が与えられる。自転車選手の全てが夢見るロードレース界の頂点。出場するだけでも価値があり、一度でもステージ優勝したものは生涯称えられると言われ、優勝後に涙を流す選手も多い。

なお、2021年総合優勝したポガチャルは同年のヴェロ・ドール(世界最優秀自転車選手)を受賞し、スロベニアのスポーツマン・オブ・ジ・イヤーにも選ばれた。彼は23歳にしてツール連覇を果たし契約金は7億円とも言われている。

 

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200人ほどのジャージ姿で走る者たちの裏側では、何千人もの名もなき人々の情熱が支えていることも記しておこう。

主催者側のスタッフは、常勤100人と臨時300人ほど。選手のスタッフ(監督、メカ、マッサー、コックほか)が300人ほど。メディア関係者(テレビチーム、カメラマン、記者ら)が2000人以上。広告キャラバン隊が600人。50人の憲兵隊と10人の医療団。これだけの人数がスタートからゴールまで、町から町へと3500kmも旅をする。スタート地のヴィラージュ(関係者の区画)は前夜に数十人で組み立てる。100キロ以上離れたゴール地も同様に別働隊が作業し、コース上では標識を立て金属フェンスを作り観客との安全を守り、選手たちを迎える。スタートしたらすぐに解体し次の町へ向かう。それを毎日繰り返してパリへ向かう。パリのシャンゼリゼは、選手たちだけでなく、彼らスタッフたちのゴールでもある。

 

 

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