ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

【基礎編】選手の役割とレース展開。

 

チームには勝つための戦略がある。20以上のチームが出場するレースは闇雲に走っても勝てるわけではない。最終的に勝利するのは個人だが、それをサポートするアシストやスタッフを含めたチームの総合力の勝利なのだ。

 

 

◎エースとアシスト

エース」は、レースに勝てるチーム内で一番強い選手。総合エースは、弱点が少なく登りとTTどちらも強い選手。スプリントエースはスプリントの一番速い選手。エースは勝利のために無駄な力をなるべく使わず、勝負どころを見極める戦術眼やアシストをうまく使うリーダーシップも求められる。チームによっては複数のエースで臨む場合もある。

 

アシスト」は、チームの勝利のために献身的に働く選手。平地は風除けとなり先頭を引き、山岳ではペースメイク、他チームのアタックをつぶしながら、自らもアタックしてライバルを疲れさせる。補給物資を受け取りチームメイトに渡し、エースの精神的な支えにもなり、トラブル時には自分のバイクをエースに差し出す。また戦略的に相手チームにポイントを取らせないために、自ら中間スプリントポイントで先行する駆け引きもある。

 

 

◎チーム戦略

それぞれのチームに思惑がある。もちろん勝利が第一優先だが実力差もあり、ライバルチームを牽制しながら、自分たちに有利になるような勝負どころで動く。アシストの中でも平地で隊列の先頭で牽引をする役、他チームのアタックに対応する役、山岳で引く役、ゴール前のスプリントでトレインを組む順番などが決められ、落車や疲労で遅れる選手がいたら代わりを務める役など順応性も求められる。

レースに出場できる人数も決まっているので、すべてのレースに勝つことは難しい。そのため長期間のステージレースの場合は、「総合優勝」を狙うチームはクライマー中心、「スプリントによるステージ優勝」を狙うチームはルーラーとスプリンター中心、「丘陵ステージ優勝」を狙う(逃げなど)チームはパンチャーやTTスペシャリスト中心で選手を組み合わせる。

 

 

◎レース展開例

レース展開はコースによって変わり、チーム戦術と天候やトラブルによって大きく変わるが、わりと典型的なレースパターンを参考として紹介する。

 

★コースの特徴はこちらの記事参照

 

《序盤》

スタート後、逃げるためのアタック合戦が行われる。逃げの目的は、ステージ優勝狙い、中間ポイント狙い、ライバルへの牽制、アシストの前待ち作戦と、一番は目立つこと(スポンサーが喜ぶのと自分の価値を示せる)。エースは温存され、優勝争いをするチームは逃げに乗ることはほとんどない。またステージレースの場合、総合優勝に絡まない選手の逃げはそのまま容認し優勝させることもある。

 

《中盤》

プロトン(メイン集団)は逃げた選手に危険な選手がいなければ容認し、グループに追いつける計算をしながらペースメイク。それはエースを温存しつつ、ライバルから主導権を握るため。途中、横風や登り区間でライバルに差をつける動きや危険回避(道幅が狭い、荒れた路面、雨で滑りやすい下りなど)に注意しながら終盤に向かう。ステージレースでは、リーダージャージを着る選手のチームがプロトンの先頭を担うことが多いのはレースの不文律とされる。

 

《中間スプリントポイント/山岳ポイント》

コース途中に設置される。平坦な場所の中間スプリントポイントはスプリンターが、山頂の山岳ポイントはクライマーが狙う。ステージレースの場合は複数ステージでの合計獲得ポイントがそれぞれの賞に繋がるため、熱い争いが発生する。レースに中だるみが無いような工夫のひとつ。

 

《終盤》

終盤を迎える頃には逃げの選手はほぼ集団に吸収される。ゴールが近づくと集団は活性化。平坦ステージの場合はエーススプリンターを引っ張るためトレインを組み、集団の先頭付近に寄っていく激しい位置取り合戦が行われる。丘陵ステージや山岳ステージの場合は、ライバルチームの様子を見ながら、パンチャーやクライマーがアタックを仕掛けて飛び出し、ゴールまで逃げる展開に持ち込む。

 

 

◎レースで差がつく局面

《コース要因:事前にわかること》

・長い登り坂や下り坂

・激坂(急な登り坂、斜度20%以上)

・道幅の狭い箇所

・悪路(未舗装路や石畳など)

レースの見所なので、沿道の観客も多い。選手やチームは対策を立てられるのでどれだけ戦略や準備ができるかも鍵。戦略に対応できる個人の力も必要であり、エースを守るチーム力も差が如実に現れる。

 

《トラブル要因:事前にわからないこと》

・風(横風分断)

・落車

・パンクやメカトラブル

・アタックや逃げ

トラブルへのスタッフの対応、ときにエースの変更や戦略修正、どれだけ臨機応変に対応できるか。終盤までなるべく多くのアシストをつけることや監督による状況判断などチーム力の差を問われるとともに、運の要素も絡んでくる。落車に巻き込まれるリスクを避けるために集団の前方に位置取りすることも。強い選手が必ず勝つとはいえない。