【基礎編】用語解説みたいな。その2(た行〜は行)
ロードレース観戦しているとよく聞く言葉。あるいは知ってるとちょっと楽しいもの。アバウトな解説に独自拡大解釈を交えてます。ワードは50音順。
※思いついたらちょこちょこ更新するかも。
◎た行
【タイムオーバー】先頭でゴールした選手から一定の時間が過ぎるとタイムオーバーとして失格となる。ステージレースでは山岳が苦手なスプリンターが特に注意が必要。《OTL=Over The Limit》と表記される。箱根駅伝で例えるとタスキが繋がらなかった時の悲しさに似ている。
↓2021年のツールでは、こんなドラマも。ステージ優勝だけが戦いではない。
ツール・ド・フランス、最後尾選手の制限時間、レース後方での“もう1つ”の戦い | BiCYCLE CLUB
★最下位のゴールでもチームメイトと喜び合う…タイムオーバーぎりぎりでゴールし失格を逃れたマイヨヴェールのカヴェンディッシュには、山岳を支えたアシストがいた。
★タイムオーバーになりながら意地でゴールしたドラミニ…南アフリカ出身の黒人選手として初めてツールに出場。途中落車し遅れたがリタイアせず「最後まで走りたかった」意志を尊重し、ゴールするまでコースを封鎖しなかったレース運営者。
【タイムトライアル(TT)】ひとりづつスタートし、ゴールまで時間を計測して順位を競うレース。平坦を走るときの空気抵抗を減らすため、バイクもウエアもヘルメットもTT専用のものを使用する。バイクはフレームもエアロ形状のものを使い、ハンドルと後輪が特徴的。ウエアは体にフィットするワンピースタイプでネルメットは流線型をしている。短いコースであれば補給用のドリンクボトルすらつけずに挑み、1秒を削るために休むことなく走り抜ける。TTが得意な選手はTTスペシャリストと飛ばれる。TTには個人TT(ITT)とチームTT(TTT)がある。
東京オリンピックTTで金メダルを獲得したログリッチ。スロベニアのジャージで日本を走った。
【タイム差】レースでゴールした選手からついた時間差。ステージレースではタイム差の積み重ねで総合成績を競うため、総合優勝を狙う選手はライバルとタイム差がつかないよう気を抜けない。また「3kmルール」というゴール直前のトラブルによるタイム差の救済措置もある。→「3kmルール」を参照。
【ダブルエース】チーム内にエースが二人いること。リスク管理や選手の調子次第で狙える選手が複数いることは選択肢も増え、ライバルチームもマークする選手が増えるため戦略上のメリットは大きい。しかし、ライバル心をあおることになりチーム内での派閥争いも起きることもある。2021年のケースでは、ジロのクイックステップの総合エースを巡りエヴェネプールとアルメイダが少々揉めた。過去にトリプルエースのチームもあったが、あまりうまくいったケースはない。
【ダンシング】登りなどで速度を上げるためにサドルからお尻を浮かせて漕ぐこと。「立ち漕ぎ」とも言う。自身の体重を乗せて走れるので力強く漕げるが、体力を大きく消耗するスタイルでもある。選手のほとんどが局面においてこの乗り方をするが、個人的にはリッチー・ポートのダンシングが好き。勝負をかけるときの彼はダンシングしっ放しなのだ。
ツアー・ダウンアンダーのリッチー・ポート。オーストラリアで開催されるこのレースの名物峠ウィランガヒルでは6連覇した。
【ディスクブレーキ】ロードバイクには円盤で回転軸を止めるディスクブレーキとホイールを挟むリムブレーキがある。近年はメーカー側がディスクにシフトしてる影響が強くディスクブレーキ化に拍車がかかっている。ディスクの長所は雨などの悪天候でも効くことと少ない握力で扱えること。短所はホイール交換に時間がかかるためパンクなどのトラブル時には厄介なこと。2021年現在、ツール・ド・フランスで総合優勝した選手にディスクブレーキを使用した選手はいない。だが、2022年はそもそもリムブレーキを使うチームがなくなるかもしれない。
【トレイン】チームが縦長に直線で隊列を組むこと。空気抵抗を抑えてエースを消耗から守るため。平坦ステージではゴールが近づくと、有利な位置でスプリント勝負に持ち込もうと各チームのトレインの動きが激しくなる。
【ドーピング】残念ながら少し前までは極めて組織的なドーピングが行われていた。もしかしたらドーピングをしていなかった選手はいなかったんじゃないかと思うほどに。現在は検査技術も発達し、アンチ・ドーピングが進みクリーンな世界になっていると信じたい。ドーピングについてはいつかページを割いて紹介したいと思う。
★かつてのドーピングについて興味のある方におすすめしたい書籍は『ただマイヨジョーヌのために(ランス・アームストロング著)』と『シークレット・レース(タイラー・ハミルトン/ダニエル・コイル著』
◎な行
【逃げ】レース中にアタックして集団から離れて先を走ること。逃げが得意な選手は「逃げ屋」或いは「エスケーパー」と呼ばれ、パンチャー系かTTスペシャリストが多い。ひとりから数人で先頭を走り、レースの主導権を握ったり、本気で勝ちに行くケースもある。ワンデーレースでは逃げ切ることは非常に難しいが、ステージレースでは総合成績が大きく遅れた選手を集団が容認し勝つこともある。2021年のグランツールは多くの選手が逃げてステージ優勝を果たした。中でも個人的に特に印象深かったのはジロの第3ステージを逃げて優勝したタコ・ファンデルホールン。喜びようが最高だった。
【ニュートラルカー】チームカー以外でトラブルに対応する自動車やオートバイ。ホールメーカーなどがサポートしている。スペアバイク、タイヤ、ドリンクなどを積んでいる。シマノはブルー、マヴィックはイエロー。
【ネオプロ】プロ1年目の選手。プロとは、ワールドチームかプロチームに所属する選手。近年は若年化が進み本来育成チームに入るような年齢(23歳以下)でもトップチームでレースに出て活躍する選手が目立ってきた。
★2022年期待の若手はこちら。>coming soon
◎は行
【ハスる】バイクの前輪を前のバイクの後輪に引っ掛けること。コントロールがきかなくなり転倒・落車の原因になりやすい。後輪をぶつけられたライダーはそれほど被害は受けない。
【発射台】エースが飛び出すときに前で牽引するアシストのこと。多くはゴール前スプリントの局面だが、登りの途中でアシストから飛び出す場合にも使う。
【パピーパウ】平坦時での高速巡航を目的として、ハンドルにひじを乗せて前かがみの姿勢になり空気抵抗を減らすフォームのこと。子犬が前足を出しているポーズに似ていることからパピーパウとも呼ばれる。危険だとして2021年4月から禁止された。
【パワーメーター】選手は走り方を常に科学的に管理されている。心拍数や出力(ワット数=ペダルを踏む力)を計測する機械。上り坂で安定したペースを保つため、あるいはTT時に理想のペースで走りきるために用いられる。レース後にデータを公開される選手もいるが、スプリンターは1500Wを超える時がある。一般的にジムにあるバイクマシーンを足をめっちゃぐるぐる回してるときが300Wぐらい。1馬力が750W。つまり馬2頭分のパワー。すげえ。笑
【ハンガーノック】走行中にエネルギーが切れること。脚に力が入らなくなり、酷いときには意識が朦朧とする。200kmほど走るレースで消費するカロリーは8000kcal以上とも言われる。エネルギー補給は成績に直結する。
【バーチャル・マイヨジョーヌ】レース途中、走行中のタイム差が逆転して得られるリーダーのこと。レース中は常にタイム差が増減するため、ゴールするまで確定はしない。
【パヴェ】石畳のこと。一番有名なのはパリ〜ルーベだが、ツール・ド・フランスでも他のクラシックレースでも石畳区間は結構多い。悪路のためガタガタゆれ高速で走りにくいうえに、パンクや落車も非常に多く発生する。中には地元の人々も普段使用せずレースのためだけにある道もあり、ボランティアがレース前に雑草を抜いたり石畳を掘り起こして敢えてでこぼこにしたりもする。もはや罰ゲームである。選手の中には「パリ〜ルーベが一番好きだ」という選手もいる。もはやマゾである。
【プロトン】レース中のメイン集団のこと。エース選手はほとんどこの集団にいる。200人近い選手がひとかたまりで走る光景はなかなか壮観。
【ファミリーアタック】選手が地元を通るときに家族や親戚などに挨拶するため単独で逃げること。他の選手も容認し、家族と記念写真を撮ったりワインを飲んだりすることもあった。グランツールはそれだけ栄誉なことで長閑さを感じるシーンだったが、近年のレースはシビアさを増しあまり見られなくなった。
【フラム・ルージュ】ゴール前1kmの箇所に設置される赤いフラッグ。アーケード。つまり、ここから目が離せない勝負になるよ、という合図の場所。
【フランダース・クラシック】ベルギー西部からフランス国境付近のフランドル地方で行われるワンデーレースのこと。石畳を走るのが特徴で4月に開催される。北のクラシックと総称され、ロンド・ファン・フランデーレンは最も格式が高く『クラシックの王様』、パリ~ルーベは『クラシックの女王』と呼ばれる。また過酷さから『北の地獄』とも。スプリンターやルーラー系の重量級の選手が得意。
『北の地獄』は、肉体も精神力も過酷なレースは、何よりもタフさが必要だ。
【分配】チームによっては、レースで獲得した賞金はアシストも含めて全員で均等に分配されるという。やはりチームスポーツなのだ。
【ボーナスタイム】集団ゴールはタイム差がつかないが集団の先頭でゴールした選手に与えられるご褒美のタイム差。例)1位は8秒、2位5秒、3位3秒といった具合。集団ゴール時でもライバルにタイム差をつけられる貴重な機会なので、気合をいれる選手も多い。