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【2022年のレース】移籍による戦力変化

 

2022年のレース展望、その1。今年も多くの移籍があった。1割強の選手たちがチームを変わっている。その中にはエース級の選手たちも。これから1-2ヶ月ほどは、どの選手がどこのチームか混乱することがある。今回はUCIポイントを参考にしながら、戦力が大きく変化したチームとそれほど変わらないチームに分けて記述する。なお全員記載するととんでもない量になるので、半分くらいに端折っているが、有力選手と期待の若手は網羅している。表はスマホでは見難いと思うがご容赦ください。

 

 

 

◎大きく戦力変化したチーム

表は左側が戦力アップ、右側が戦力ダウンしたチーム。それぞれのチーム内の左側は加入した選手、右側は脱退した選手。背景が濃いグレーの選手は引退。チームの下の数字はUCIポイントの合計で、左側がプラス分、中央はマイナス分、右端は差引き。

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◆チーム ユンボ・ヴィスマ(△戦力アップ)

すでに強豪チームだが、より一層強化した。ジョージ・ベネットの代わりにベノート(総合系)、フルーネウェーフェンの代わりにラポルト(スプリンター)、トニー・マルティンの代わりにデニス(TTスペシャリスト)。更に実力者ファンデルサンデ。全て抜けた穴以上の補強をした。クラシックレースに向けた戦力強化が狙いか。ファンアールトのアシスト要員が強力になり、上位に絡む実力者も補強した印象。2022年のユンボはクラシックレースに要注目だ。ファンアールトがツールでポイント賞を狙うと公言しているが、そのアシストとしても心強い。

 

UAEチーム エミレーツ(△戦力アップ)

強化に余念がなく大物が加入した。アルメイダ、ジョージ・ベネット、マルク・ソレルが加入。ツールとブエルタを狙うポガチャルのアシストとして、或いはジロの総合エースとしての活躍が期待される。スプリンターはアッカーマン、ホッジが加入。大幅に強化され、チームの総合力は間違いなく上がった。2021年は4位のチーム力であったが、ポガチャル頼みの部分は大きかった。それなりの実力者が揃っていたチームに”勝てる“選手が加わった印象。

 

◆ボーラ・ハンスグローエ(△戦力アップ)

総合系の戦力を大幅に強化。ウラソフはエース格、イギータとヒンドレーは準エース級の力を期待しているだろう。ただ、その誰もがムラがあるのが悩みどころ。シャッハマン、ケンデルマン、コンラッド等とうまく噛み合えばグランツールの表彰台は十分狙える。また、サガン、アッカーマンの抜けたスプリンターの穴を埋めるのは、出戻りのサム・ベネットとファンポッペル。一皮剥けそうなメーウスもエースになる可能がある。

 

◆グルパマFDJ(△戦力アップ)

2021年の戦力がほとんど残り、中堅クラスのパシェ、勢いのある若手ストーラーとウェルテンが加入。チーム力は確実に底上げされた。昨年はエースが孤立している場面が多く見られたが、そんな状況は改善されるだろう。ゴデュやキュングがいまひとつ勝ちきれなかった感があったのもそのあたりも原因のひとつに思われたので、チームとしても一段階上昇することに期待。

 

イスラエル・プレミアテック(△戦力アップ)

主力だったダニエル・マーティングライペルの引退は痛手に思われたが、フルサンとニッツォーロの獲得でチーム力は下がらず、サイモン・クラークやウルの獲得により底上げされたと言っても良い。ただし、このチームの弱点はメンバーの”高齢化“。主力の大半が30代半ば。将来的な発展のためには若手が育つか加入しないと苦しい。昨年成長した22歳のルナールが他チームへ移籍するなど、チーム力の”改善“とは言いがたい。

 

◆EFエデュケーション・イージーポスト(△戦力アップ)

地味ながら、非常によい補強をした印象。イギータの脱退はチャベスが埋めて余りある。昨年一気に開花しはじめた印象のエイキング、パドゥンも好成績が期待できる。チームとしてクラシック寄りにシフトした印象も。中堅チームとしての存在感は増しそう。2年目の中根選手も今年は活躍の場が広がると思われる。

 

 

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クイックステップ・アルファヴィニル(▼戦力ダウン)

アルメイダとサム・ベネットが抜けた分、大きくポイントは減る。それを補完する実績のある選手は加入しなかった。とはいえ、それほど戦力ダウンにはならないのではないかと想像している。過去にもエース級の選手が何人も離れていったが、チーム力は低下しなかった。アラフィリップ、エヴェネプール、アスグリーン、ヤコブセンと、勝ちまくった中心選手は更に力を増しそうであり、加入した新戦力は若手中心だが伸びしろたっぷり。2022年もクラシックレース中心は変わらないと思うが、エヴェネプールがグランツールを狙い始めるかもしれない。

 

◆アスタナ・カザフスタン(▼戦力ダウン)

チームのごたごたは落ち着いたかもしれないが、そのおかげで選手は大きく変わった。なにしろ所属選手の半分が変わった。ロペス、モスコンとエース級の選手が入ったが、抜けた穴の方がはるかに大きく、成績低下は防げないだろう。2022年はどれだけ土台を気付けるかが争点かもしれない。カザフスタンは国自体の政情が揺れている印象でチームへの影響も予断を許さないのではないだろうか。戦力というより人気の面では、ニバリが加入したのは良かった。

 

◆ロット・スーダル(▼戦力ダウン)

ファンデルサンデ、デゲンコルプが抜けた穴は大きい。弱体化しているのは否めなず、オルダニ、テイセンと期待の若手が脱退したのも苦しい。有望な若手がまだいるのが救いとはいえ、ユアン以外に勝てそうな選手は見つからない。移籍市場では落ちたチームのひとつ。ステージレースでは”逃げ“に特化する選手の台頭を期待。デヘントがいるうちにフェルメールスやファンムールが勝てるように。

 

◆チームDSM(▼戦力ダウン)

ここ数年の戦力の流出が止まらない。ベノート、ヒンドレー、ストーラー、更に期待の高い若手のファンワイデルにカンターまでも流出。戦力になりそうな新加入選手はデゲンコルプくらいでは穴は塞ぎようがないだろう。2022年は残念ながらかなり厳しいといわざるをえない。しかしながら毎年新しい戦力が台頭してくる不思議なチーム。目利きのスタッフがいるのか育成力がすごいのか、そこは期待もしている。

 

◆チーム バイクエクスチェンジ・ジェイコ(▼戦力ダウン)

チャベス、スタナード、ニエベと中堅クラスの選手がごっそり抜けた。サイモン・イエーツとマシューズ以外に勝てるイメージが湧かない。と思っていたらフルーネウェーフェンが加入。彼のモチベーションが高ければ、スプリントで勝負できるはず。ただしサポートするトレインは決して強いとは言えない。人気のあるチームだけに、どこかいいスポンサーがついてくれることを祈る。

 

 

◎大きな戦力変化はないチーム

それぞれのチーム内の左側は加入した選手、右側は脱退した選手。背景が濃いグレーの選手は引退。

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◆イネオス・グレナディアーズ

戦力的にはプラスマイナスゼロという印象。若手有望株を加入させた分少し若返った感もある。2022年の開幕戦となったオーストラリアのレースで抜けたデニスがTTで優勝。加入したルーク・プラップがRRで優勝というのが、まさにプラマイゼロで面白い。

幾分気になるのは近年は総合系に戦力を集中し、グランツールはじめスプリンターはいなかったところにヴィヴィアーニが加入したこと。総合エースへのサポートがやや弱くなるのか、あまり効果的と思えなかったダブル(トリプル)エース体制が変わるのであれば良いが、総合系エースはいまだに乱立気味。

 

バーレーン・ヴィクトリアス

移籍している選手がほとんどいないので、トラブルがなければ昨年同様の活躍ができるかも。昨年が出来すぎだったとも思えるので、同等の成績があげられれば成功といえるだろう。全体的に選手の高齢化は気になる。

 

AG2Rシトロエン

移籍している選手がほとんどいない。中心の選手は20代半ばの選手が多く、順調に成長すれば昨季以上の好成績も十分望めるだろう。力のあるベテラン勢も期待。

 

◆モビスター チーム

ロペス、ソレルが抜けた穴はアランブルとイザギレで埋められそう。ロドリゲスも含めて地元スペイン人が多く加入したのも好印象の補強。2022年はラストシーズンになるバルベルデの後継者を見つけられるか。マスは成長中だが、強豪チームになるにはもう一人か二人、中心になる選手が必要。クラシックではアランブルに期待だが、総合はやや人材難か。

 

◆トレック・セガフレード

ヘルゴーは十分な戦力になるだろう。クラシックレースではチームとして昨季以上の成績を上げるかもしれない。ニバリの穴はモレマとチッコーネの成長で埋められるだろうか。まずますのチーム力と思えるが、ステージレースで総合上位を狙うには戦力不足。

 

コフィデス

ラポルトとヴィヴィアーニというエース級が抜けたが、ヨン・イザギレとコカールは穴を埋める活躍が期待できる。またヴァルシャイド、トマ等も地味ながら好補強。中堅チームとしての存在感は昨季以上に出るだろう。

 

◆アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベール

エース級の活躍をしていたファンポッペルとエイキングが抜けるのは大きいが、クリストフとギルマイが加入して穴を埋めて余る補強ができた(ギルマイは昨季途中の加入)。ロータ、タコ、メインティスと相乗効果も期待できそう。渋いながら好印象チーム。

 

 

 

◎上位のプロチームにも触れておく。

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◆アルペシン・フェニックス

中心選手の移籍はなし。サポートするライダーはやや強化した印象で、ワールドチームを凌ぐ強さは今季も継続されるだろう。ただし期待の若手ベン・トゥレットの移籍は残念。イネオスなら彼のためにはいいとは思える。

 

◆チーム トタルエナジー

サガンファミリーの加入。すでにチームの顔である。テュルジス、ボニファッジオにもいい効果が望め、クラシックレースでは昨季以上の活躍が期待できるだろう。サガンは新型コロナ感染が報道されたが、トレーニングに遅れが出ないことを願う。

 

◆アルケア・サムシック ◆ウーノエクス ◆B&Bホテルズは、中心選手の数人が移籍で戦力低下か。それぞれワールドチームへの移籍なのでしょうがない。若手で育成できるといいが。

 

 

★各チームのエースについてはこちら参照