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【2022年】若き実力者たち

 

近年のロードレースの傾向として、若い選手たちの活躍が凄まじい。

そもそも、ジュニア(19歳未満)、U23(23歳未満)、エリート(23歳以上)というカテゴリーに分かれているのだが、U23のカテゴリーをスキップして活躍する選手が増えている。ワールドチームも若い有望な選手を早くから獲得し、育成をすっとばしてレースにつぎ込む。この傾向は競技自体の科学的な研究が進み、パワーメーターを使うレースやトレーニングを効果的に行うことで、経験値が少なくても高速化するレースに対応できることがひとつの理由とも言われている。ベルナル、ポガチャル、エヴェネプールといった選手が先駆者として規格外の活躍をしてから、この流れは顕著になり、まだ続くと思われる。

 

以下、2022年のブレイク候補たちをU23のカテゴリーでワールドチームに所属している注目株たちを紹介する。すでに活躍している選手もいて、なかなか侮れない。彼らに注目して損はない。

※年齢・所属チームは2022年1月時点。

 

 

 

フアン・アユソ

(19歳/スペイン/UAEチーム エミレーツ

UCIランク196位/通算6勝 ◆脚質:クライマー

やはりとんでもない男だった。2021年、U23版ジロで18歳にして総合優勝してしまった。しかも勝ち方が、10ステージ中3勝し、2位に3分近い差をつけるという圧倒的な強さで。特筆すべきことは、パッセリーノ峠(4,1 km @ 9,9 %)を13分04秒で登った。これは同年ジロで同じ峠を最速で登って総合優勝したベルナルより25秒速いタイム。末恐ろしい…。アユソは2020年、17歳の時にUAEと5年契約を結ぶ。当時最年少のワールドチームとの契約だった。スペインのジュニア王者以外にめぼしい活躍もなかった時に、この異例の長期契約はこの選手のポテンシャルを大いに感じさせた。2020年はジュニアクラスのレースで21戦18勝と驚異の成績を上げる。2021年はU23版ジロの後、エリートカテゴリーに昇格し、実戦を積んだ。秋の初クラシックレースになったクラシカ・サンセバスティアンUAEチームのエースナンバーを背負って走り18位。U23欧州選手権はRRで3位、TTで12位。まだ19歳。本人はクライマーになりたいと語る。近い将来、同じチームの先輩ポガチャルにだって追いつくと言っても大げさに感じない。

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U23欧州選手権で3位に入ったアユソ。19歳である。

 

 

ビニアム・ギルマイ

(21歳/エリトリア/アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)

UCIランク75位/通算5勝 ◆脚質:オールラウンダー

2020年はNIPPOデルコで別府史之らとチームメイトだった。2021年は春からのワンデーレース、トロフェオ・ライグエリア等でトップ10フィニッシュするなど飛躍の気配を漂わせていたが、所属していたデルコが解散することになる。しかし若い才能はしっかりと目をつけられていた。8月にアンテルマルシェに移籍した直後、早速ツール・ド・ポローニュから走り始める。クラシック・グラン・ブザンソン・ドゥではキンタナやピノらビッグネームを抑えて優勝。9月〜10月にかけて、若手中心のレースとはいえ5つのレースで一桁フィニッシュ。それらのレースではアラフィリップやヒルシよりも先着している。さらにU23世界選手権RRでは銀メダル。実力は疑いの余地がないだろう。そして2022年は開幕戦のトロデオ・アルクディアではやくも優勝。しかもスプリント勝負で。21歳にして、アンテルマルシェではエース級の活躍が期待される。

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加入した初戦のツール・ド・ポローニュ第2ステージでアタックをかけるギルマイ。

 

ベン・トゥレット

(20歳/イギリス/イネオス・グレナディアーズ

UCIランク271位/通算0勝 ◆脚質:ルーラー

2021年はアルペシン・フェニックスで走っていた。優勝こそなかったものの、エリート年代のレースをプロチームながら、実に堂々と走った。アムステルゴールドでは17位、フレッシュ・ワロンヌでは12位、ビッグネームが勢ぞろいしたイル・ロンバエルディアでは21位と、コンスタントに好成績を挙げた。ツール・ド・ポローニュでは総合9位とGCでの適性の可能性も見せていて、伸び代は広い。昨年まではシクロクロスも走り、かなりの成績をあげていたが、今季は走っていない。今後はロードに専念するのだろうか。アルペシンでのびのびと走るのも見てみたかったが、イネオスでエリートコースに乗る方が成長は早いかもしれない。ピドコックと共通点も多くキャラもかぶる。どんな役割で課せられるのか。個人的にも注目していた存在なので、これからの活躍はとても楽しみだ。

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ツアー・オブ・ジ・アルプスではヤングライダーで有力選手と渡り合い6位につけた。

 

 

オラフ・コーイ

(20歳/オランダ/チーム ユンボ・ヴィスマ)

UCIランク171位/通算8勝 ◆脚質:スプリンター

2021年はユンボの育成チームで力を蓄えた。オランダ国内選手権で7位、U23世界選手権3位。ポローニュやベルギーツアーで、集団スプリントに積極的に絡んで上位に入る。10月のクロ・レースではエリート昇格後の初勝利。そのままステージ2勝し、この世代ではナンバー1スプリンターと言ってもいい存在にまで上り詰めた。特に印象的だったレースは、同じく10月に行われたグラン・ピエモンテ。ゴールに向かうスプリント準備で集団が活性化しスピードを上げる中、残り20kmで落車をしてしまう。コルブレッリやニッツォーロら強力なスプリンターを要するチームが主導権を握り、速度を上げて集団が分断される中で落車で遅れたコーイは集団復帰し、それどころかゴールスプリントで3位入賞。その根性にアッパレ。こういう選手は伸びる。

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2020年コッピ・エ・バルタリ第1ステージではバウハウスやウリッシらにスプリントで先着、優勝する。

 

 

 

◎その他の要注目の若手

 

フィン・フィッシャーブラック

(20歳/ニュージーランドUAEチーム エミレーツ

UCIランク316位/通算3勝 ◆脚質:クライマー

2021年はユンボ・ヴィスマのデベロップメントチームにいた。ニュージーランドU23国内選手権TTで優勝、ベルギーツアーで総合4位に食い込み、GCライダーとしての才能を見せる。そしてシーズン途中の7月、ライバルチームのUAEへの移籍が発表される。しかも5年という異例の長期契約が期待の高さをうかがわせる。

 

 

ルーク・プラップ

(21歳/オーストラリア/イネオス・グレナディアーズ

UCIランク348位/通算3勝 ◆脚質:ルーラー

2021年は20歳でオーストラリア国内選手権RRを優勝。東京オリンピックではトラックのチームパシュートのオーストラリア代表として銅メダルに貢献。トラック競技で培ったハイスピードでの走力はジュニア時代の2018年世界選手権でレムコに次ぐ2位だった頃から力があることを感じさせた。そしてイネオスと2024年までの長期契約。2022年、シーズン開幕戦となったオーストラリア国内選手権ではやくも優勝してみせた。ロードの経験値こそ少ないが、伸び盛りの勢いを感じさせる選手だ。

 

 

イラン・ファンウィルデル

(21歳/ベルギー/クイックステップ・アルファヴィニル)

UCIランク574位/通算1勝 ◆脚質:オールラウンダー

DSMから引き抜かれた期待の若手。2021年はツール・ド・ロマンディ、イツリア・バスク・カントリーでヤングライダーではトップ10以内で走り、GCライダーとしても才能の片鱗を見せる。2019年は若手の登竜門ツール・ド・ラヴニールで総合3位、U23ベルギー国内選手権で3位、U23欧州選手権TTで9位と安定して上位に絡んでいた。ジュニア時代にベルギー代表で一緒に走った同い年のレムコと同僚になる。相乗効果に期待だ。

 

 

 

以下、すでに活躍してチームの主力クラスになっている23歳以下の選手も列記しておく。これらの年代の選手は急激な成長を見せることも多いので、今シーズンが終わる頃には、さらに多くのまだ無名の選手が出てきているかもしれない。

 

◎2001年生まれ(20歳)

カルロス・ロドリゲス(20歳/スペイン/イネオス・グレナディアーズUCIランク:156位)

クイン・シモンズ(20歳/アメリカ/トレック・セガフレードUCIランク:219位)

 

◎2000年生まれ(21歳)

レムコ・エヴェネプール(21歳/ベルギー/クイックステップ・アルファヴィニル/UCIランク:14位)

マティアス・スケルモースイェンセン(21歳/デンマーク/トレック・セガフレードUCIランク:173位)

ミック・ファンダイク(21歳/オランダ/チーム ユンボ・ヴィスマ/UCIランク:194位)

 

◎1999年生まれ(22歳)

トーマス・ピドコック(22歳/イギリス/イネオス・グレナディアーズUCIランク:33位)

ロリアン・ヴェルメールシュ(22歳/ベルギー/ロット・スーダル/UCIランク:110位)

マウリ・ファンセヴェナント(22歳/ベルギー/クイックステップ・アルファヴィニル/UCIランク:119位)

ジョバンニ・アレオッティ(22歳/イタリア/ボーラ・ハンスグローエ/UCIランク:140位)

ジェイク・スチュワート(22歳/イギリス/グルマパFDJ/UCIランク:143位)

サムエーレ・バッティステッラ(22歳/イタリア/アスタナ・カザフスタンUCIランク:156位)

アンドレーア・バジオーリ(22歳/イタリア/クイックステップ・アルファヴィニル/UCIランク:175位)

アレクシー・ルナール(22歳/フランス/イスラエル・プレミアテック/UCIランク:197位)

 

 

◎1998年生まれ(23歳)*昨季U23の年齢でワールドツアーで結果を残してきた選手

タデイ・ポガチャル(23歳/スロベニアUAEチーム エミレーツUCIランク:1位)

ジョアン・アルメイダ(23歳/ポルトガルUAEチーム エミレーツUCIランク:9位)

ヤスパー・フィリプセン(23歳/ベルギー/アルペシン・フェニックス/UCIランク:15位)

イーサン・ヘイター(23歳/イギリス/イネオス・グレナディアーズUCIランク:28位)

マルク・ヒル(23歳/スイス/UAEチーム エミレーツUCIランク:67位)

アレッサンドロ・コーヴィ(23歳/イタリア/UAEチーム エミレーツUCIランク:85位)

ヨルディ・メーウス(23歳/ベルギー/ボーラ・ハンスグローエ/UCIランク:87位)

イーデ・スヘリンフ(23歳/オランダ/ボーラ・ハンスグローエ/UCIランク:96位)

ルーカ・モッツァ-ト(23歳/イタリア/B&Bホテルズ/UCIランク:120位)

クレモン・シャンプッサン(23歳/フランス/AG2Rシトロエン チーム/UCIランク:122位)

ステファン・ビッセガ(23歳/スイス/EFエデュケーション・イージーポスト/UCIランク:128位)

ブランドン・マクナルティ(23歳/アメリカ/UAEチーム エミレーツUCIランク:128位)

アルベルト・ダイネーゼ(23歳/154/チーム DSMUCIランク:154位)

アティラ・ヴァルタ(23歳/ハンガリー/グルパマFDJ/UCIランク:240位)

アンドレアス・クローン(23歳/デンマーク/ロット・スーダル/UCIランク:244位)

サイモン・カー(23歳/イギリス/EFエデュケーション・イージーポスト/UCIランク:375位)

 

 

 

若手の登竜門として近年注目度が増しているレースが「ツール・ド・ラヴニール」だ。ベルナル(2017年優勝→2019年ツール優勝)、ポガチャル(2018年優勝→2020年ツール優勝)の二人がその価値を高めた。その後の優勝者は2019年はトビアス・フォス(ユンボ・ヴィスマ)、2020年は中止、2021年はトビアス・ヨハンネンセン(ウノエックス・プロサイクリング)。彼らは総合系の有力な若手として要注目である。

ここで名前を挙げた選手を多く抱えるチームは、それだけで未来が明るいとさえ言いたくなる。特に充実しているのは、UAEチーム エミレーツ(7人)、イネオス・グレナディアーズ(5人)、クイックステップ・アルファヴィニル(4人)、ボーラ・ハンスグローエ(3人)。どれもワールドチームの先頭を狙っているチームばかりである。