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ボルタ・ア・カタルーニャ 2022【リザルト】

 

3月21日から開催された【ボルタ・ア・カタルーニャ。山岳中心のコースで、雨や高い標高の山中で寒さが厳しくなる中、リタイアする選手も続出する展開に(ただしリタイアするのはエース級の選手が多かった)。活躍した選手たちの共通点は、移籍組、若手、初勝利、非ヨーロッパ圏。

*選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

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総合優勝を決めたイギータ。ワールドツアー、ステージレースの総合優勝は初。

 

◎レース結果:総合トップ10と各賞

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◆Stage1:登り基調のゴールは集団スプリントに。マシューズが1年半ぶりの勝利。

◆Stage2:ゴール前スプリントでリーダージャージのマシューズがリードアウトしグローブスが優勝。バイクエクスチェンジが2連勝。

◆Stage3:登坂途中残り8kmでアタックしたオコーナーが逃げを抜き去り、そのまま独走勝利。6秒差で総合首位に立つ。

◆Stage4:クイーンステージで総合エースたちが力のぶつけ合い。山頂ゴールに最後は3人横並びでなだれ込む。ステージ優勝はアルメイダ、総合首位はキンタナに。アルメイダは移籍後初勝利に。

◆Stage5:各チームが入り乱れる混沌とした集団スプリント、ネオプロのヴァーノンがプロ初勝利。中間スプリントで1秒稼いだアルメイダが総合首位に。

Stage6:強く雨が降る一級山岳でカラパスイギータが飛び出し、二人でおよそ130kmも大逃げ。ステージ優勝はカラパス、総合首位はイギータに。

◆Stage7:総合エースたちも乗った逃げグループが最後にスプリント勝負。バジョーリのワールドツアー初勝利がクイックステップに2つめのステージ優勝をもたらす。

 

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ステージ3で逃げ切ったオコーナー。昨年ツールでのステージ優勝以来。

 

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三つ巴の戦いになったステージ5は、アルメイダがステージ優勝で、キンタナが総合首位に。

 

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ステージ6で大逃げを決めた二人、カラパスとイギータ。南米勢の結束は固かった。

 

 

◎予想結果:総合優勝候補

【予想文面】→ 本命はバルベルデ。今シーズンが最後の最年長のレジェンドは地元スペインのレースへの意気込みは並ならぬものがあり、シーズン早々から好調を維持している。対抗がサイモンキンタナ。両者ともに今シーズンは絶好調といっていい最強レベルのクライマー。直近のパリ〜ニースでは優勝したログリッチをおびやかす登坂を見せたサイモンは2位、キンタナは5位に入った。もちろん、イネオスも強い。エースはカラパスだが、いつもながらムラがあり、調子のいいポートが途中からエースになることは十分あり得る。直近のティレーノ〜アドリアティコではカラパスがリタイア、ポートは4位に入った。他の選手では、ウッズマルタンチッコーネヘイグらも表彰台に絡む力は十分。キンタナ以外にも伝統的に強力なクライマーがいるコロンビアン・ライダーも多く出場する。ウランチャベスイギータの走りも注目だ。好調の若手ヒンドレーヴァルタも一皮剥けそうで楽しみな存在。アルメイダデュムランは実績はトップクラスだが、どちらかというとTTが得意な選手で、山岳祭りのカタルーニャは苦戦するかもしれない。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ 総合優勝はイギータ。ボーラに移籍後の今季は好調を維持し、初日から最後まで安定して上位で走った。ワールドツアーの総合優勝は初。一皮剥けそうな勢いでグランツールに臨めそう。カラパスアルメイダキンタナオコーナーマルタンが予想通りトップ10に入った。優勝候補のおよそ半分がリタイアし荒れた大会になったが、比較的若い選手が結果を出した(下記その他の注目選手で言及)。ヒンドレーも復活気配が濃厚。チッコーネは伸び悩んでる印象で、デュムランはこのままでは総合成績上位は厳しい。サイモンほかリタイアした選手はグランツールに向けてじっくり回復してほしい。

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今年はずっと好調をキープしているキンタナ。キンタナが元気だとロード民が盛り上がる。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ アシストあるいはサブエース的な選手に次世代のトップクライマー予備軍が多くいる。ソーサカルロス・ロドリゲスヴァンハウケなど。そんな中でも特に注目したいのは、先日サウジツアーで初勝利をあげたブイトラゴ22歳、そしてネクスト・ポガチャルとでもいう存在のアユソ19歳。あとはプロチーム、ウーノエクスのビアス・ヨハンネセンチャーマ。彼らの可能性を探るにはもってこいのレース。

逃げによるステージ優勝があるかもしれない。その目線での注目はストーラースヘリンフスケルスモースデヘントクイックステップファンウィルデルなど、新たな若手のエスケイパーが出てくると更に面白くなるだろう。

【結果】→ アユソは総合5位、ヨハンネセンは総合7位と、二人とも目覚ましい活躍だった。UAEはアルメイダがエースだったため単独でアタックしたアユソがチームの指示で引き戻されることがあったが、彼が自由に走っていたら総合首位も狙えたかもしれない。恐るべき若者である。カルロス・ロドリゲスも総合15位、スケルモースも総合16位(ステージ2では崖から転落しながらバイク交換を催促し、先頭集団に追いつきステージ10位に入った)、ウーノエクスはトラーンも9位に入り、ステージ優勝したヴァーノンも含めて多くの若者が印象的な活躍をした。

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◆アユソのついては過去記事も参考に。

 

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ステージ5でプロ初勝利を挙げたヴァーノン。トラック出身の期待の若手。東京五輪にも出ていた。

 

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カーブを曲がりきれず崖下に落ちたスケルモースが交換用バイクを待っているところ。彼はこの後レースに復帰し10位に入る。

 

 

◎予想結果:スプリンター

【予想文面】→ 何度も触れるが、カタルーニャはピュアスプリンターが勝つのは難しい。よってマシューズコルブレッリが2強だろう。バジョーリオフステテールエイキングはまだ勝負できそうだが、バウハウスグローブスは苦戦すると思われる。

【結果】→ マシューズグローブスのバイクエクスチェンジ、ヴァーノンバジョーリクイックステップがともにステージ2勝ずつ。バウハウスパシェの健闘とオフステテールの安定した強さが目立った。オフステテールは最終日にリタイアしたものの、スプリントになったレースでは現在10レース連続でトップ10に入っている。うち6回は表彰台。特筆したいほどの安定ぶりだが、逆に言うと勝ちきれないという残念な結果でもある。

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*コルブレッリについて、少し触れておこう。第1ステージのゴール後に意識を失い倒れ、心肺停止状態になったが、救急スタッフの応急処置で回復し救急搬送。その後容態は安定したが不整脈の症状が見られ、はっきりとした原因は不明。現在は病院で検査、今後の治療方針を模索中。昨年から調子を上げた現イタリア王者かつ欧州王者は、31歳で選手としては一番脂が乗った時期。早期回復を祈りつつ、無理はしないでほしい。

 

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ステージ1で優勝したマシューズはリーダージャージも獲得。ステージ2では見事なリードアウトも。

 

 

 

 

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