4月3日に開催された【ロンド・ファン・フラーンデレン】。久しぶりに多くの観客が戻ってきた「クラシックの王様」は、モニュメントらしい華やかさに溢れ、ロードレースの過酷さと興奮を携えて、270km以上を走る6時間超えのドラマを見せてくれた。最後の最後まで手に汗握る展開を呼び込んだ主役は、初参戦のツール覇者ポガチャル。難関の坂を登る度にアタックを繰り出し先頭集団を絞り込むと、残り16kmにある激坂パテルベルグで勝負をかける。ついていけたのは、1週間前にレースに復帰したばかりのマチューただひとり。ロードレースはゴールするまで何が起きるかわからない。諦めず、したたかに全力を尽くす、マチュー・ファンデルプールが二度目の王様に君臨した。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◆2022年のレースの模様はこちら(シクロワイヤードの記事)。
ゴール前のスプリントを制したマチュー。駆け引きは貫禄すら漂った。
◎トップ10
ポガチャルが石畳の坂の度にアタックし集団を破壊。終盤5人に絞られたグループから更に抜け出したポガチャルに、唯一ついていったマチュー。二人の一騎打ちになると思われたゴール前の展開で、牽制していた二人に諦めずに追走していたファンバーレとマデュアスがなだれ込む。最後はしっかり踏み込んだマチューが先行してゴール。二度目のクラシックの王様を戴冠。過去3年、すべてのゴール前でのマッチスプリントをこなすマチュー、恐るべし。また、最後の最後でミスをしたが、ポガチャルはクラシックでも最強の一人であることを示した。惜しむらくはここにファンアールトがいたら。どんなレースになっていたのか、夢想してしまうのだ。
オウデ・クワレモントでアタックしたポガチャル。マチュー以外は置き去りにした。
◎優勝候補
【予想文面】→ 正直なところ、誰が優勝するのかわからない。だからより楽しみだとも言える。大本命だったファンアールトが直前で新型コロナに感染し欠場が決まったので、現時点の直感でいうと、本命はマチュー・ファンデルプール。前走ドワース・ドールでの走りを見ると完全復活といいたくなるし、100%戻っているなら本命は1択。対抗はキュングを推したい。ここ数レースを見ていると、そろそろ大きなことをしでかしそうな雰囲気が感じられる。あるいはラポルト、ファンバーレ、ストゥイヴェン、カンペナールツも優勝を狙えそうな気配を感じる。昨年覇者のアスグリーン、テュルジスあたりも表彰台に絡む力は十分。そして決して本命には推せないけれど怖い存在がポガチャル。好成績を挙げているモホリッチ、ピーダスン、マシューズ、ファンアーヴェルマートも先頭グループを走る力はあるだろう。気になる所では、現地は寒波に襲われ雪が積もっている。当日は曇りから晴れの予想なのだが、寒さと路面状況は厳しくなる可能性が高い。その辺を加味すると、シクロクロッサーであるマチューの優位は変わらないが、意外な選手が出てくるかもしれない。ちなみにキュングやモホリッチ、ポガチャルは寒さに強い。他の上位候補は下記表を参照。
【結果】→ 優勝はマチュー。2位ファンバーレ、4位ポガチャル、5位キュング。ピーダスン、ラポルトとトップ10のうち6人までは予想。ラポルトは落車などのトラブルがなければもっといけていたかもしれない。マシューズ、ファンアーヴェルマートもさすがの好成績だった。アスグリーンはメカトラがなくても上位は難しかった様子で、クイックステップはかなり厳しい状況が続く。天候はそれほど影響もなく、無事開催されたのは何より。
マチューは3大会連続の表彰台。ファンバーレとマデュアスの二人も素晴らしい走りだった。
◎その他の注目選手
【予想文面】→ 上位に絡む成績を残す可能性のある選手をざっとピックアップしたが多すぎて、これでも40人近く削って厳選したもの。ロンドで一発大勝負を仕掛けてきそうなアタッカー候補として、マデュアス、クラーウアナスンは個人的に楽しみにしている。他に実績のある選手でいうと、ハウスラー、ポリッツ、ヴァルグレン、クリストフあたりは上位に絡む力がある。ドワーズ・ドールで上位に入った選手では、ベノート、ピドコック、ターナー、オブライエンは好調を維持しているので注目。中でもベノートは、ファンアールトが欠場するのはある意味千載一遇でもある。
【結果】→ 3位に入ったマデュアスは活躍を予想しておいてなんだが、驚いた。フランス人で表彰台に上がるのは11年ぶりだとか。5位に入ったキュングとともに春のクラシックでのグルパマの躍動が続いている。クリストフ、ピドコック、ベノートは好走。実力にふさわしい結果を残した。そしてバーレーンはチームとして大成功といっていいだろう。ミラノ〜サンレモを優勝したモホリッチは21位といまひとつだったが、6位にトゥーンス、7位にフレッド・ライト、12位にトラトニックと、驚異的ともいえる好走。昨年からチームの状態がずっといいいことがうかがえる。クラーウアナスン、オブライエンは期待していたが残念ながらDNF。まだ経験が必要な若手、今後の成長を期待する。
最終盤の精鋭トップグループに潜り込んだライト(バーレーン)。最後は力尽きたが、将来が楽しみな22歳。