4月9日まで開催された【イツリア・バスクカントリー】。最終第6ステージは大人数がタイムアウトになるなど、大会を通じて生き残るだけでも大変過酷なサバイバルレースとなった。最終日のゴールまで順位が大きく変わりほど選手たちにとっては厳しくも、見ている側は盛り上がる面白いレースが繰り広げられた。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
総合優勝したダニエル・マルティネス。リーダージャージとバスク地方の民族衣装のベレー帽が妙に似合う。
◎レース結果:総合トップ10と各賞
◆Stage1:ログリッチとレムコが二人異次元のTT。優勝したのはログリッチ。
◆Stage2:レムコの圧巻のリードアウトから発射したアラフィリップがスプリントを制して今季初勝利。
◆Stage3:ゴール前の小集団スプリントで勝ったのは地元出身のビルバオ。アラフィリップが惜しい2位。
◆Stage4:ゴール前の小集団スプリントで勝ったのはダニエル・マルティネス。アラフィリップは連日の2位。
◆Stage5:厳しいアップダウンが続く難コースはカルロス・ロドリゲスが後半独走して優勝。スペインの新星がプロ初勝利。レムコが総合首位にジャンプアップ。
◆Stage6:過酷なサバイバルレースとなった最終日は地元出身のヨン・イザギレが移籍後初勝利。総合優勝は終始安定して上位を走り続けたダニエル・マルティネス。
多くのスペイン人が活躍した大会になった。総合トップ10には4人も入り、3つのステージ優勝もしている。完走できた54人のうち17人がスペイン人と大奮闘。そこもレースの盛り上がりポイントだった。
stage1の個人TTを制したログリッチ。これでスペインで開催されたTTは8戦8勝負け知らず。恐ろしい。
stage2で優勝したアラフィリップ。後ろでリードアウトしたレムコもガッツポーズ。ポイント賞も獲得した。
◎予想結果:総合優勝候補
【予想文面】→ 本命はログリッチ。過去2大会で総合優勝し、今年もヴィンゲゴーやクスなどアシスト陣も盤石、トラブルがなければ連覇は間違いないと感じる。対抗がアダム・イエーツあるいはダニエル・マルティネス。イネオスはメンバーに総合系の猛者たちを揃えてきた。メンバーでいうとUAEも誰もがエースを狙える実力者たち。だが、絶対的なエース格は不在でサブエース的な選手たちの集団というイメージ。ウリッシがエースになるのだろうか。ウラソフ、イギータのを揃えてきたボーラも強力。この二人は移籍が好結果に繋がり、ライバルたちも警戒が強いだろう。マスも調子を取り戻せれば表彰台圏内、モビスターとしてもスペインのレースはいい成績を残したいはず。その他では、ヨン・イザギレやビルバオはこのレースと相性もよく、モチベーションも高いだろう。ゴデュ、ウッズは今年はまだ本調子ではないが、調子が戻れば上位に絡む実力は十分。個人的にはパレパントルにはちょっと期待してる(エースはシャンプッサンかも)。レムコは得意ではない登坂を克服すべく、また秋のブエルタに向けてのチャレンジレースになるだろう。他の上位候補は下記表を参照。
【結果】→ 総合優勝はダニエル・マルティネス。2位ヨン・イザギレ、3位ウラソフ。トップ10のうち8人は予想通り(レムコ、ビルバオ、ヴィンゲゴー、ログリッチ、マス)で、エースたちが順当に実力を発揮したといえる。第5ステージで失速したログリッチは怪我をしていたらしい。それでも総合8位に入っているのは彼の意地だろうか。アダムの失速は少し気になるところ。ゴデュとウッズはグランツールに向けて調子をあげてほしい。
最終ステージを優勝したヨン・イザギレ。地元バスクのレースで総合でも2位に入る。
stage3でスプリントでアラフィリップを降したビルバオ。こちらも地元で大勝利。総合でも5位。
最終日にはリーダージャージで走ったレムコ・エヴェネプール。難関山岳でも臆せず走り、進化した姿を見せた。
◎その他の注目選手の結果と雑感
【予想文面】→ サブエース格の選手にも有望なクライマーたちが多い。チーム別ではイネオスとUAEはかなりのメンツで、全員が他のチームならエースを任されそうなレベル。ユンボ、モビスターを合わせた4チームがレースの中心になってきそう。若手で特に注目しているのは、シャンプッサン、カルロス・ロドリゲス、ファンヒルス、ファンセヴェナント。去年ブエルタで活躍したエイキング、今季好調なヤン・ヒルトも総合上位に絡む可能性はあるか。逃げが見られるステージで期待の高い選手は、マーダー、ケムナ、アラフィリップ、コーヴィたちの活躍に期待。新城幸也も好調をキープしてて頼もしい。もはやチームキャプテンくらいの存在感があると思ってる。
【結果】→ カルロス・ロドリゲスは開花の予感。獲得標高のstage5で見事に優勝。アシストにもエース格の選手がごろごろいるイネオスの中でも十分な存在感を見せつけた。アラフィリップも調子を上げてきた。ステージ優勝1回と2位2回、アルデンヌクラシックに向けてコンディションは上々。UAEはスペイン人のソレルがエースだったようだ。最終日の攻める走りは移籍後の充実度合いを感じさせた。総合10位のウランは順当な成績。予想に入れていなかったのはブログを書いた時点ではスタートリストにいなかったため(逆に予想に入れていたエイキング、ヒルト他変更になり出場しなかった選手は表から外した)。総合11位トレックのフアン・ペドロ・ロペス、12位AG2Rのガールは二人とも今年調子を上げている若手。覚えておいたほうがいい選手。
最終日クイーンステージでは多くの選手がタイムアウトになり(39人も!)、完走したのはたったの54人という過酷なステージレースとなった。ひとつ残念なのは新城幸也のタイムアウト。100レース以上連続で完走していた記録は途絶えた。アシストしている本人はそれほど気にしていないかもしれないが、誰でも作れる記録ではないので、あと3分早くゴールできればと、思わずにはいられない。
stage5で優勝したカルロス・ロドリゲス。大きな可能性を感じさせる20歳の初勝利。
最終日クイーンステージで先頭を牽引するGトーマスは熱い。
山続きのバスクカントリー。最後までタフなレース。