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ジロ・デ・イタリア 2022|成績まとめ(stage9終了時)

 

グランツールは、やはり楽しい。本日は1回目の休息日である。(5/9は移動日)

5月6日から始まったジロ・デ・イタリアは、ここまで21のステージのうち9つを終えた。ハンガリーでの3日間の後は、シチリア島にわたりイタリアを北上していく。第9ステージはクイーンステージに匹敵するほどの難関山岳コースで、総合優勝争いも動き、各賞を狙う選手たちの駆け引きも熱くなってきた。ここまでの成績を振り返ってみる。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

◎総合成績上位

ここまでの成績上位者は優勝候補が多く入っている中で、エースではないフアン・ペドロ・ロペスが総合1位にいるのはサプライズのひとつ。スペイン人としてマリア・ローザを着用するのはコンタドール以来らしく、stage4から着続けているのはトレックとしても本人も大きな勝利といえる。エースのチッコーネが遅れたのでどこまでキープできるか、頑張りに期待したい。ここまでで中心的な存在のチームはボーラ。エースのケルデルマンが遅れたが、ヒンドレーブッフマンケムナと3人も上位にいる。そのうちヒンドレーとケムナはステージ優勝も果たし、すでに大成功といえる。ヒンドレーの総合表彰台とケムナの更なるステージ優勝も狙いたいところ。そして二人づつ入っているイネオスバーレーンDSMモビスターがいい位置につけている。DSMバルデアレンスマンが前レースのツアー・オブ・ジ・アルプスで二人で表彰台に上がった好調をそのままキープ、目が離せない存在になっている。アンテルマルシェの善戦も光る。8位のポッツォヴィーヴォ、14位のヒル、stage8までは3位につけていたタラマ、レースの重要局面では常に彼らのジャージ姿が見えた。バルベルデ(42歳)、ニバリ(37歳)、リッチー・ポート(36歳)の「最後のジロ組」の三人が揃って活躍しているのも非常に嬉しい。stage9の山岳でポートが先頭引いてる姿なんて、それだけでもこのジロを見る価値があったと思っている。

トップ20に名前がない選手で有力候補だったのは、チッコーネ(22位)、サイモン・イエーツ(25位)、ケルデルマン(24位)、デュムラン(30位)、ミゲルアンヘル・ロペス(DNF)。タイム差を考えると総合上位はもう難しいだろう。ユンボはほぼ全滅、アスタナは厳しい展開ながらニバリが頑張っているのは応援したくなる。

 

 

◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞はこのメンバーの誰かで決まる可能性が高いと思う。本命はデマール。優勝2回、2位1回と抜群に調子がいいうえに、グルパマはリードアウトトレインもこの大会では最強の働き。チーム全員でデマールをうまくサポートしていて安心感すら感じる。対抗はギルマイか。ここまで5つのステージで5位以内に入る順応性と身体能力は驚異的。少しだけ優勝に及ばないのは、コースが塞がれたりといった展開を読む経験値の差だけと感じる。登りにもテクニカルなコーナーにも対応し、脚力を十分残していて力負けしていない。ギルマイは2週目でグランツール初勝利をあげそうな気配に満ちている。カヴェンディッシュは苦手な登りと最強の発射台モルコフのリタイアは痛い。ガビリアはメカトラ、ニッツォーロもメカトラや落車などの影響もあるが、チームの総合力でもやや見劣りするか。ユアンはstage1の落車がなければもっと点数をあげていただろう。あとは彼らが難関山岳ステージをタイムアウトしないで乗り切れるかが最大の敵かもしれない。

 

山岳賞争いは2週目以上に多くの山岳が登場するため、多くのポイント獲得が可能なのでまだ行方はわからない。個人的には逃げに乗る可能性が高いクライマーのケムナが本命と見る。まだ5位までに入っていないが、終盤の山頂ゴールで勝つ可能性がありそうなカラパスバルデランダあたりの選手も上位に絡んでくるだろう。

 

ヤングライダーは、順調にいけばアルメイダか。アレンスマンにもかなりチャンスはあるかもしれない。フアン・ロペスのここからの頑張りも応援したい。

 

チーム総合ボーラがこのまま勝ちそうな雰囲気だが、山岳ステージでバーレーンイネオスの巻き返しはありそう。その3チームの争いになるだろう。

 

 

◎各ステージ優勝選手

ここまではそれほど大きなサプライズはないものの、どのレースも最後まで勝者がわからない絶妙な難易度の設定のソースになっていて、楽しめるレースが続いている。stage1は上り坂ゴールの小集団スプリント。ユアン以外のスプリンターは登りについていけなかった。多くのファンの期待を集めたマチュー・ファンデルプールが追いすがるギルマイを制して見事に勝利を飾った。ゴール前スプリント時には心拍数が200を超えるというとんでもない数値を出して(ロンド・ファン・フラーンデレンほか今年のクラシックでも190を超えたことがないのに)、ゴール後に道の脇に倒れこんで動けなくなった姿は印象深い。それにしても表彰式で着たマリア・ローザの似合うこと!ちなみにチクラミーノもアッズーラも獲得した。3番手につけていたユアンはゴールの手前のカーブで落車。上り坂でそれほどスピードが出ていなかったので大きな怪我に至らなかったのは幸いか。

stage2個人TTが一番のサプライズだったかもしれない。サイモン・イエーツが優勝、マチューが2位でマリア・ローザをキープ。今年のパリ〜ニース個人TTでは5位になるなど、近年タイムトライアルの力をつけていたのでトップ10に入る力はあると思っていたが、まさかのグランツールでの個人TT初優勝。

stage3は集団スプリント。カヴェンディッシュモルコフのリードアウトからロングスプリント。追いかけるデマールたちからゴールまで力強く逃げ切った。こでれジロは9年ぶりの勝利で16勝目。もちろん現役最多。今シーズンも好調をキープしている。ハンガリーでも多くの声援が飛び、最も人気のある選手の一人だと感じられた。

stage4の山岳はシチリア名物のエトナ山で、逃げに乗ったクライマーたちの勝負になった。病気から復活した今シーズンはずっと調子がいいケムナが優勝し山岳賞も獲得、2位のフアン・ペドロ・ロペスがマリア・ローザを着用した。ステージ優勝できなくて悔しがっていたロペスがマリアローザになることを知って泣きじゃくり、一緒に喜ぶエースのチッコーネとハグする様子は微笑ましかった。

stage5も集団スプリント。途中の山岳で優勝候補のカヴェンディッシュユアンらが遅れたこともあり、デマールが貫禄の勝利。2位のガビリアはギアが変わらなくなったトラブルにより勝てなかったとレース後に怒り、バイクに当たり散らした。気持ちはわかるが、バイクやスタッフに怒りをぶつけるのはあまり感心できない。そんな精神状態が次のステージでの降格処分に繋がったと言ったら穿ち過ぎだろうか。

stage6も集団スプリント。終盤までレースというよりもサイクリングと言いたくなるようなのんびりムードで、選手たちも「移動日」と呼んだステージは談笑しながらのレース。近年あまり見なかったような微笑ましい展開もゴール前になると緊張感が高まった。各チームのエーススプリンターたちのガチ勝負は、カヴェンディッシュの少し早すぎたスプリントを後ろからユアンデマールが追い抜いて同時にゴール。写真判定でデマールが勝ち、2位だったユアンは「あと少し俺の腕が長かったら」と嘆いた。

stage7は序盤から有力メンバーが逃げて、最後はユンボボウマンが小集団スプリントでグランツール初勝利。総合争いから大きく遅れたエースのデュムランがアシストし、ゴール後に抱き合って喜ぶ様子は白飯2杯いける。今後もユンボはステージ優勝狙いで賑わせてくれると思えたステージになった。

stage8も序盤からマチューがアタック。ギルマイや有力メンバーが一緒に逃げに乗り、先頭集団からさらに抜け出したロット・スーダルデヘントが10年ぶりのジロ勝利。最後まで引き連れたチームメイトのファンハウケを勝たせたかったようだが、脚がないと言ったため自らスプリント。「俺がレースで勝つことはもうないだろうと人々は言った。だが、今日最も疑り深いやつを黙らせた。それは俺だ。」デヘント先生、かっこいいっす。

stage9は獲得標高が5000m超えで最後にブロックハウスの山頂ゴールになる難関ステージ。総合争いに大きく影響するステージはエースたちの削り合いの勝負に。数人のエースたちが脱落していく中、最後に抜け出した6人が登りながらのスプリント。勝利したのはヒンドレーバルデカラパスランダアルメイダまでは今のところ総合争いの中心か。

 

休息日をはさんで、stage10から丘陵と平坦ステージを交互にこなし、stage15からは総合争いに直結する山岳決戦が連続する。もちろん、過去の大会がそうであるように終盤に総合成績が逆転するドラマや波乱が起きる可能性は十分ある。最終日まで楽しめる大会になるだろう。

 

 

↓レース前の出場選手まとめはこちらに。

jamride.hateblo.jp

 

↓過去3年間の総合成績20位までと各賞はこちら。

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