ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

ジロ・デ・イタリア 2022|成績まとめ(stage15終了時)

 

5月6日から始まったジロ・デ・イタリアは、ここまで15のステージを終え、本日は2回目の休息日。総合優勝を狙える選手も絞られてきた。前回の続きとして第10〜15ステージの成績を簡単にまとめました。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

◆前回の第9ステージまでの成績まとめはこちら。

jamride.hateblo.jp

 

 

 

◎総合成績上位

優勝候補本命と目されているカラパスマリアローザを獲得した。2位につけるヒンドレーは、7位ブッフマン、13位のケルデルマン、山岳ステージ優勝も果たしたケムナと、強力なメンバーを引き連れる。ボーラはチーム力では今大会最強かもしれない。3位につけるアルメイダは最後の個人TTステージでの逆転も考慮すれば30秒差は十分射程範囲。4位ランダ、5位ポッツォヴィーヴォ、6位ビルバオ、7位ブッフマンまではタイム差が2分開いていないので、ここまでは優勝争いができそうだ。8位以下は総合優勝は厳しいながらも終盤の何が起こるかわからない難関山岳ステージが続くので、一発逆転の可能性は残っている。そのためには、まずは遅れないこと。とはいえ現実的にはトップ10に入ることが目標になるだろう。

3週目は、ボーラvsイネオスの戦いが中心になりつつ、トップ20以内に3人入っているバーレーントレックもいろいろ仕掛けそう。ここまででも積極的に逃げに乗るブイトラゴモレマ、ステージ優勝もしたサイモンチッコーネも、まだまだ狙ってくるだろう。

意外と言っては失礼だが、6位ポッツォヴィーヴォ、8位ニバリ、9位フアン・ロペスのこれほどの活躍は予想していなかった。ポッツォヴィーヴォは昨年まで所属していたチーム・クベカが消滅し引退危機の中で2月半ばにアンテルマルシェに拾ってもらえた39歳。ニバリは地元を走ったstage5のレース後に引退を発表した37歳で、チームのエースだったミゲルアンヘル・ロペスのリタイアによる代理エース。フアン・ロペスは未だにプロ未勝利で、stage2で2位に入るまでグランツールのステージでトップ10にすら一度も入ったことがなかった24歳。この3人は3週目にどこまでトップ10以内をキープできるかも楽しみのひとつ。

それにしてもフアン・ペドロ・ロペスが人気がうなぎのぼり。stage14で失うまで10日間もマリアローザを着用したのは実に見事。持ち前の明るさ(少々天然系か?)で、イタリアのファンの心を掴み、自国の大先輩バルベルデを筆頭に他チームの選手たちとも絡んでいじられまくり、全身から喜びを放出するような(山岳ではめっちゃ厳しい表情もするが)パフォーマンスにはほんとに楽しませてもらってる。今季契約最終年なので、この活躍と注目度で大きな契約も獲得できるかもしれない。バルベルデが引退するスペイン籍のモビスターは狙っててもおかしくない。

ここまでで脱落した有力候補は、サイモン・イエーツ(21位)、バルデ(DNF)、デュムラン(DNF)、ミゲルアンヘル・ロペス(DNF)。

 

 

◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞デマールが首位。ステージ優勝3回、2位1回と圧倒的な成績を残し、グルパマは今大会の最強チームでエースをリードする。この後の難関山岳でのタイムアウトさえしのげればチクラミーノは当確か。残念なのは対抗馬だったギルマイのリタイア。表彰式でのシャンパンボトルのコルクが目に直撃する不運。それでも初勝利を手にし、ピュアスプリントでも勝負できることをはっきりと証明し、今後のレースの期待は高まるばかりだ。カヴェンディッシュは最強の発射台モルコフのリタイアが響いた。ガビリアはメカトラなどの不運もあったが、感情のコントロールができなかったレースが多かった印象。自身は調子がよさそうだっただけに残念なところ。なおユアンニッツォーロボルは3週目の難関山岳を控えリタイアした。

 

山岳賞争いはこの後も多くの山岳が登場しポイント獲得が可能なのでまだ行方はわからない。現状リードしているボウマンディエゴ・ローザは逃げに乗って狙ってくるのは確実。その二人に割って入りそうなのは、終盤の山頂ゴールで勝ちを狙うカラパスヒンドレーも上位に絡みそうだし、チッコーネケムナモレマテスファツィオンらの逃げによるポイント稼ぎも考えられる。

 

ヤングライダーは、順調にいけばアルメイダフアン・ロペスの粘りがどこまで続くか、ここまで来たらアルメイダを脅かすほど頑張ってほしい。エースのバルデがリタイアしたDSMアレンスマンはこのあとはエースとしてどんな走りを見せるか楽しみにしている。バルデの無念んも背負って頑張ってほしい。なおアレンスマンは、来期イネオスへの移籍が噂されている。

 

チーム総合ボーラバーレーンの一騎打ちの気配。3週目でイネオスが巻き返す予想はできるが、上位2チームには届かないだろう。それにしても、ここまでのアンテルマルシェトレックの2チームの大健闘は称えたい。このジロで、彼らは間違いなく勝者だ。

 

 

◎各ステージ優勝選手



2週目も興奮と喜びに溢れるレースが続いている。

stage10はとうとうギルマイが見事に勝利を飾った。アップダウンが続くコースをアルペシンアンテルマルシェが集団を牽引し、ピュアスプリンターたちはたまらず遅れる。stage1の再現とばかりにマチューと一騎打ちになったゴール前スプリントは、ゴール手前50メートルほどでマチューが踏むのをやめて、ギルマイに向けて親指を立てる。振り返ってそれを見て喜びを爆発させるギルマイ。アフリカ黒人選手初のグランツールのステージ優勝。彼はまた歴史を作り、マチューは最高の脇役を演じた。

stage11はど平坦ステージ。真っ平らなレイアウトをハイペースで進むプロトン。ゴール前は大集団スプリントになった。スプリンターチーム同士の意地のぶつかり合いは、カヴを置き去りにしたデマールガビリアコンソンニが迫り、すぐ横をダイネーゼが追い抜いて先着した。ダイネーゼは自国開催のグランツールで嬉しいワールドツアー初勝利。チームのもうひとりのスプリンターであるボルが遅れたため、リードアウトしたのはなんと総合エースのバルデDSMのチーム一丸で掴んだ勝利だった。

stage12のゴール前は激熱スプリント。序盤から激しいアタック合戦が繰り広げられ、登り基調ながら平均55km/hを上回るスピードで動いたプロトンからマチューを含む30人近い人数が逃げる。そこから残り60kmの3級山岳で3人が抜け出す。普段から一緒に練習をする中だという二人のイタリア人が、お互いにプロ初勝利をかけてガチ勝負。わずかに先着し優勝したオルダーニは号泣。惜しくも敗れたロータはオルダーニを祝福した。余談だが、アルペシンアンテルマルシェの一騎打ちはこれで3回目。他2回はマチューとギルマイ。

stage13はスリリングな追走劇に。序盤から逃げた5人が粘って逃げ続け、追い風も手伝い逃げグループが捕まえられるかわからない緊張感のある展開。しかし、ゴール直前に逃げグループは吸収、アシストを使い果たした集団の中で唯一リードアウトを残していたグルパマデマールを発射。ガビリアを退け、猛追するバウハウスも振り切り、デマールがハットトリック達成。チクラミーノもほぼ確実にした。

stage14の丘陵ステージながら、総合優勝争いが勃発。序盤からマチューが激しくアタックし、次々に追随するアタック合戦に。ようやく逃げが決まったと思ったらメイン集団でボーラが動く。アップダウンが続くコースでのハイペースに集団は分断され、総合エースもふるい落とされていく。逃げグループを吸収した先頭集団から12名の総合エースばかりの精鋭トップ集団が形成され、さらにスペルガ峠でアタックしたカラパスについていけたのは、ヒンドレーニバリフアン・ロペスだけ。その後の激坂区間マリアローザのロペスが遅れ、代わりに合流したのはサイモン・イエーツ。その勢いのまま抜け出したサイモン・イエーツが意地のステージ優勝。ジロ通算6勝目をあげた。

stage15は1級山岳二つと2級山岳の山頂ゴール、総合勢は前日のステージの疲労からか早々に逃げを容認した。多くの実力あるクライマーたちが入った逃げ集団からは一人また一人を遅れ、最後はチッコーネが独走し、ゴール前でサングラスを観客に投げて歓喜のゴール。インタビューでは泣き崩れた。

 

 

休息日明けのstage16は獲得標高5200m超えのいきなりの超難関ステージ。その後は、山岳(stage17)、平坦(stage18)、丘陵(stage19)、山岳クイーンステージ(stage20)、個人TT(stage21)と続く。トップ5までは1分しか差がない接戦、激しい3週目になるだろう。ジロはまだ何も終わっていない。最後にマリアローザを着ているのは誰になるのか。

 

 

↓レース前の出場選手まとめはこちらに。

jamride.hateblo.jp

 

↓過去3年間の総合成績20位までと各賞はこちら。

jamride.hateblo.jp