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ジロ・デ・イタリア 2022|成績まとめ(最終成績)

 

ジロ・デ・イタリアは、5月29日、ヴェローナの闘技場で閉幕した。前回の続きとして3週目、第16〜21ステージの成績を簡単にまとめました。3週間にわたり、楽しませてくれた全ての選手たちに敬意を。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

◆第1〜9ステージまでの成績まとめはこちら。

jamride.hateblo.jp

 

◆第10〜15ステージまでの成績まとめはこちら。

jamride.hateblo.jp

 

 

 

 

◎総合成績上位

マリアローザは、ずっと2位につけていたヒンドレーがstage20の残り4kmでカラパスを逆転。3500km以上走って3秒しかつかなかったタイム差がたった4kmで1分25秒差に開いた。3年前に最終日に逆転されてマリアローザを失ったヒンドレーは、最終日も無事にこなし、見事に総合優勝。ボーラにチーム初のグランツールタイトルをもたらした。なおオーストラリア人としても初のマリアローザである。さらに7位ブッフマン、17位ケルデルマン、19位ケムナと厳しい山岳で常にヒンドレーをサポートした強力なチーム体制は、イネオスとの違いだったとも感じた。

優勝候補本命と目されていたカラパスは悔しい2位、ランダも粘り続けて念願の表彰台に。4位のニバリは多いに称えるべきだろう。最後のジロでその勇姿を存分に披露してくれた。やっぱりスーパースターは違う。11位ベルベルも称賛に値する好成績。

アンテルマルシェの二人の走りも印象深い。6位ヒルと、8位ポッツォヴィーヴォはベテランながらキャリアハイの成績。始まる前はギルマイをエースにステージ優勝を目指し、総合はタラマロータが調子がよければ20位以内に入るくらい、なんて思っててごめんなさい。チーム全員が存在感を示して、多くのステージの前線にアンテルマルシェのジャージの選手がいた。思えば去年のジロで一番印象深いのは、タコ選手の逃げ切りだったなあ。中堅チームとしてはひとつも文句のつけようがない素晴らしい成績で大成功だったと思う。

前回でも触れていたが、フアン・ペドロ・ロペスは最後まで力を尽くして好成績。昨年ブエルタで総合13位に入ったのは決して一発屋ではない。10日間もマリアローザを着た実力と愛嬌のあるキャラクターも含めて、今大会観客を沸かせた選手の一人だったのは間違いない。

13位ハミルトン、18位アレンスマンもエース離脱後のチームで意地をもせる走りだった。個人的には少々地味ながらも15位に入ったフォルトゥナートはもっと評価されてもいいと思ってる選手の一人。エオロのエースとして2年連続で上位にいるのは、クライマーとしての能力はかなりのものだと思う。もう一つ上のクラスになる日を期待してます。

 

 

◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞デマールが獲得。ステージ優勝3回、それ以外にも一桁フィニッシュが3回と2位以下に大きく差をつけた。デマールの好調はもちろんだったが、それを支えたグルパマのアシストたちの連携・献身は見事で、チームの仲の良さもとても印象的。デマールはジロ通算でも8勝を挙げた。ガビリアはメカトラなどの不運もありながらも、惜しいところまでいきながら勝利は掴めなかった。自身は調子がよさそうで、ジロが最後のレースだったリードアウト役のリケーゼのためにもせめてひとつは勝ちたかった。カヴェンディッシュは最強の発射台モルコフのリタイアが響いた。クイックステップとしてはもうひとつくらいは勝ちたかったところだが、苦手の山岳もこなして完走したカヴの調子は決して悪くはない。ダブルエース体制だったDSMもボルはリタイアしたが、1勝したダイネーゼは今後も期待したい選手の一人。

 

山岳賞は3周目に多くのポイントを稼いだボウマンが結果的に2位以下に大差をつけて獲得。オランダ人でジロで初めて山岳賞をとった選手になった。2位以下のチッコーネコーヴィディエゴ・ローザフォルモロはとイタリア人が続く。イタリア人もそれなりにクライマーはいるのだが、総合系の選手でニバリの後継者になる選手は出てくるだろうか。

 

ヤングライダーは、フアン・ペドロ・ロペスが獲得。なんと持ってる男なのだろう。アルメイダがリタイアしたことによる棚ぼた感はあるが、総合でも10位に入った実力もあってこそ。ブイトラゴもステージ優勝も果たし総合でも12位と大きく躍進した大会になった。高齢化が進んでいるバーレーンにおいても重要なエース候補になりそうだ。DSMアレンスマンは総合系の選手としての才能の片鱗を見せた。逃げに乗った難関山岳16ステージでの2位、グランツール最終日という過酷な条件での個人TTでも2位。

 

チーム総合バーレーンが1位、僅差でボーラが2位。この2チームが2強だったのは納得。3位イネオスはやはり、チーム力でも少し足りなかったかもしれないし、リッチーポートの離脱は大きかったとも考えたりする。けして総合系ではないアンテルマルシェが4位になる大健闘と、MAロペスを欠きながら5位に入ったアスタナもニバリのために善戦したことがよくわかる。

 

 

◎各ステージ優勝選手(stage16〜21)

3週目も最終日まで感動のレースが続いた。3週目のステージは、ほとんどが「逃げ」による勝利であった。ここまでで総合タイムから遅れたエースや山岳賞狙いのクライマーたちを中心に有力選手が組む逃げは強力で、そこにはほとんどマチューが絡んでいた。

stage16はクイーンステージと呼びたいほどの難関山岳ステージ。総合成績から遅れたクライマーたちを中心に大勢の逃げグループができ、バルベルデを含む数人がさらに加速。単独で飛び出したケムナアレンスマンヒルが追い抜き、雨中の危険な山岳を攻めたヒルが夢だったジロのステージ優勝を叶えた。アンテルマルシェも2勝目、総合成績もジャンプアップ。

stage17も序盤から20人以上が逃げる。そんな雨の山岳ステージもマチューがアタックを繰り返す。抜け出したマチューに追走したリームライゼが追いつき並走した後、さらにその後ろから登ってきたブイトラゴが二人を追い抜き、終盤は独走しグランツール初優勝。総合勢では3位にいたアルメイダがタイムを落とし、翌日リタイアする。

stage18は最後の平坦ステージ。厳しい山岳もこの日のために乗り越えてきたスプリンターたちが輝ける最後の場面、それでも勝利したのは逃げ集団だった。序盤から逃げたデボント(アルペシン)、コルト(EF)、アッフィニユンボ)、ガッブロ(バルディアーニ)の4人の協調体制は完璧で、危険を感じたメイン集団が本気でおったにもかかわらず、最後まで吸収することはできなかった。その4人の気合のスプリントで優勝したのはデボント。自身初のグランツール優勝でアルペシンは今大会3勝目。

stage19はまたしても逃げ。山岳ポイントとスプリントポイントを狙う選手たちが中心の12名の逃げグループは、総合勢を脅かす選手がいないため容認された。翌日のクイーンステージに備えてなるべく力を温存したいチームが多かったはずだ。途中スロベニアを通過し、少しづつ脱落して5人に絞られた逃げグループで最後の登りスプリント。ゴール前のカーブによりやや混乱を招いたスプリントはボウマンが勝利し、今大会2勝目。マリアアッズーラも確定させた。

stage20のは総合争いに決着をつける可能性の高いチーマコッピ(大会最高標高地点)を超えるクイーンステージ。マスドスタート最後のステージもマチューが逃げ、ケムナチッコーネら有力選手を含む強力な15人のグループができた。チーマコッピの登坂中、残り50km以上のある中で単独で逃げたのはコーヴィ。そのまま登りもダウンヒルも飛ばし続けたステージ優勝は嬉しいグランツール初勝利。その後方では、総合勢が勝負をかけていた。急勾配区間ヒンドレーがアタックしカラパス以外が遅れる。そこに前待ち作戦で逃げていたケムナが絶妙のタイミングで合流すると、ここまでずっとリードを守ってきたカラパスがはじめて失速、ヒンドレーが突き放すべく全力で残り3kmのペダルを踏んだ。最終的にカラパスから1分28秒早くゴール、最終日に念願のマリアローザを着用することになった。

stage21個人TT多くの選手たちが疲労の様子が見える中、イタリアTT王者のソブレロがぶっちぎりのタイムで優勝。stage2のサイモン・イエーツと二人でバイクエクスチェンジがTTステージを制した。総合勢には大きな波乱もなく、ほぼ前日の成績通りに順位が確定した。

 

なお、総合敢闘賞は最初から最後までアタックし続け、多くのロードーレースファンを魅了したマチュー。チーマコッピの登りも最終日ゴール後のセレモニー会場の円形闘技場でもウイリーで観客を楽しませた。大げさに言えば、マチューのいたジロとマチューのいないジロは別の大会になったとすら思える、それだけ唯一と言っていい存在感のある選手だった。

 

 

↓レース前の出場選手まとめはこちらに。

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↓過去3年間の総合成績20位までと各賞はこちら。

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