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ツール・ド・フランス 2022|成績まとめ(stage15終了時)

 

ツール・ド・フランスの2週目、レースは大きく動いた。盤石と思われた大本命ポガチャルの失速と怪我を負ったログリッチを含むユンボの波状攻撃。危険を感じるほどの猛暑の中、総合大逆転、大怪我から復活したヒーローなど様々なドラマを見せてくれた選手たち。2回目の休息日に、ここまでの成績を簡単に振り返ってみる。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

◎総合成績上位

2週目、マイヨジョーヌ争いはアルプス三連戦で実質3人に絞られたといえるだろうか。大本命だったポガチャルからマイヨジョーヌを奪い取ったのはヴィンゲゴーだったが、ここまで大きく貢献したログリッチとクライスヴァイクを失い、自らも落車するなど3周目に向けて不安要素を残す。プレッシャーに弱い性格と3週目に強い肉体を持つヴィンゲゴーを最終的に救うことができるのはマイヨヴェールかもしれない。

一方ポガチャルは順位を2位に下げたとはいえ、体調面での不安は感じられず、挑戦者としてのメンタル面では逆に有利に働くかもしれない。そう、2年前にログリッチを逆転し初めてマイヨジョーヌを手にした時のポガチャルの強さを思い出すことは容易だ。

3位につけるGトーマスマイヨジョーヌを諦める理由はひとつもない。過去何度も走ったツール終盤の厳しさの経験値と勝負勘、トップ10に3人も要するアシストたちの頼もしさは、イネオスが一枚も二枚も上手だ。2週目にユンボが見せたような数による攻撃を加えられる優位性は明らかにイネオスにある。

この3人の総合争いはstage20の個人TTまでもつれるかもしれない。そして3人ともそこでステージ優勝を狙える実力がある。

バルデゴデュ、ともにフランス勢の活躍は健闘していると思う。特にバルデは事前に総合は狙わない、ステージ優勝できれば、と語っていたが蓋を開ければ過去最上位に迫るほどの活躍。キンタナメインティスピドコックは想像以上の出来。今年はチームとしてアンテルマルシェを箱推ししてるので嬉しい。10位以下では、積極的な走りを見せる実力開花のポーレス、本格的に復活気配のユンゲルス、ゴデュを支える二人のフランス人チームメイトのマドゥアスピノも注目。ピノーは3週目ピレネーでステージ優勝もあるのでは、なんて夢想してる。

 

 

◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞ファンアールトがさらにポイントを上積みし、もはや確定といえる。ピュアスプリンターには厳しいステージが多かったので最有力候補だとレース前から思っていたが、はるかに想像以上だった。ステージ優勝2つ、2位が4つ、積極的に逃げて中間スプリントも取り捲り、そのうえデクレルクばりの集団牽引、マイヨジョーヌの山岳アシストまでこなすという、こんな選手が今までいただろうか。前週まで2位につけていたヤコブセンはやはり苦戦している。厳しい山岳で脚を削られてポイントを稼げなかったばかりか、stage15でリードアウト役のモルコフも失ってしまったこともあり、3週目も厳しいレース展開になるだろう。フィリプセンピーダスンらは意地を見せている。残された平坦ステージはstage19と21のみ。それでもシャンゼリゼのために多くのスプリンターたちがリタイアせず、タイムアウトを逃れるべく苦手な山岳を苦しみながら登る姿は胸熱でもある。

 

山岳賞争いはまだ勝者は決定していない。ゲシュケが健闘している。連日逃げに乗る積極的にポイントを加算し、僅差ではあるが1位をキープ。6位のラトゥールまで含めてチャンスはありそう。stage18まで続くピレネー三連戦でどれだけ点数を重ねられるかで順位は大きく変わる。総合争いをしているメインティスヴィンゲゴーはそれなりの上積みは予想されるので、他の選手は序盤から逃げに乗って途中の山岳ポイントを多く稼ぎたい。去年までの理不尽に感じた超級山頂ゴール2倍ルールがなくなったことで最後まで面白い山岳賞争いが見れるのは、苦労した選手が報われる健全なシステムになったと思える。

 

ヤングライダーは、前週と顔ぶれ・順位とも変わらず。トラブルがなければこのままいくだろう。ポガチャルの1位は当然でもありさすがの強さだが、ピドコックのこれほどの好成績は今大会のサプライズのひとつ。同じくシクロクロス出身の先輩たちファンアールトやマチューのようにクラシックレースの選手になると思っていたが、このまま総合系の選手を目指す可能性もある。マクナルティヨルゲンソンは順位が入れ替わるかもしれない。

 

チーム総合イネオスとが抜け出した。トップ10に三人も抱えているので当然ともいえる強さ。上位5チームは前週と顔ぶれは変わっていないが、グルパマが二つ順位を上げてユンボに迫る。エースのゴデュ以外にマデュアスピノが上位に食い込んでいるのが大きいうえに、ユンボグリッチクライスヴァイクがリタイアし、3週目は厳しいからだ。

 

 

◎各ステージ優勝選手

2週目は6つのステージのうち4つが逃げ切り勝利になった。それだけ気温やコースの過酷なステージが多かったことが原因だろう。逃げ切りで勝利した選手がコルトピーダスンマシューズとスプリンターに分類される選手たちが多いのは興味深い現象。大集団スプリントでは勝てないから逃げで勝利を狙ったとも思えるし、登坂能力も備えたスプリンターが積極的に逃げに乗るというのは昨年のコルブレッリから続くひとつのトレンドとも感じる。1週目で印象的な2位だった選手が勝利したのも印象的。マシューズフィリプセンは見事にリベンジを果たした。またデンマーク人選手が3名もステージ優勝を果たし、4人がツール初ステージ優勝を成し遂げたのもお見事。

stage10は、レース中盤にできた大きな逃げ集団をメイン集団は容認する展開に。途中迷惑なデモ集団による中断もあり。逃げグループからは少しづつ選手が脱落していく。最後の登りフィニッシュは小集団によるスプリント勝負になり、僅差で勝ったのはマグナス・コルト。ハンドルを投げ合ったニック・シュルツは惜しい2位。

stage11は今大会で最も印象的なステージになった。説教的なアタックで形成された2名ほどの逃げグループが着々と山岳を登っていく中、メイン集団では超級山岳ガリビエ峠で猛攻撃を繰り出したユンボと迎え撃つポガチャルの対決が勃発。一時はGトーマス以外はちぎられるほど激しい展開は最終盤の相応争いの様相を見せる。その後ペースを落としたところにファンアールトが牽引する追走グループも合流したマイヨジョーヌグループは、グラノン峠でアタックしたヴィンゲゴーに誰もついていけない。ヴィンゲゴーは先行していた逃げグループも全て抜き去り、ポガチャルに3分近い差をつけて初のツールステージ優勝。総合でも逆転しマイヨジョーヌを手にした。同様に終盤のアタックで抜け出した2位キンタナと3位バルデも大きく総合成績を上げることに成功。なお序盤にアタックしたマチューはこの日棄権しツールを去った。

stage12は、フランス革命記念日で超級山岳ラルプデュエズでフィニッシュするクイーンステージ。前日の激しいレースをしたマイヨジョーヌグループは9名の逃げ集団を容認。熱狂的な大観衆が詰めかけたラルプデュエズで単独でアタックしたピドコックグランツール初ステージ優勝。2位に入ったインチェも総合成績のジャンプアップに成功。しかし何よりも胸熱だったのは大怪我から復帰しながらも低迷していたフルームが3位に入ったこと。これはもう、復活と言っていい。

stage13は、ガンナキュングを含む精鋭集団ともいえるような7名の逃げグループをスプリンターのいるチームが追いかける展開に。最終的にはユアンの落車やサガンらが脱落したため、追走集団のスピードが落ちてしまったため、逃げグループでの勝負に。残り12kmでアタックした3名によるゴール前スプリントでピーダスンが嬉しいグランツール初ステージ優勝。

stage14は、序盤にポガチャルがアタックし慌ただしい展開になるも、しばらくしてから疲労回復に当てたいメイン集団は20名以上の逃げグループを容認。残り50kmでアタックしたマシューズが一時追い抜いたベッティオールを差し返して5年ぶりのステージ優勝。2位が続いていた悔しさを晴らす。総合争いは2位のポガチャルが何度も仕掛けるもヴィンゲゴーはぴったりマークし順位とタイム差は変わらず。

stage15は、40度近い猛暑による厳しいレースになり、途中の2級山岳でヤコブセンユアンらが遅れ、残ったスプリンターたちによる久しぶりの集団スプリントに。ハンドル投げで勝利したのはフィリプセン。昨年から8度も表彰台に上る走りを見せていたがようやく一番高いところに立つことができた。なお本人はstage4で2位だったにもかかわらずガッツポースしてしまったことに触れて「あれはこの優勝の予行練習だったんだ」とツイートしていた。

 

休息日明けは、stage16から勝負のピレネー山脈に突入する。総合優勝争いはstage18まで動く可能性は十分ある。自転車レース最大の祭典はいよいよ最終週。

 

 

↓stage9までの成績まとめはこちらから。

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↓レース前の出場選手まとめはこちらから。

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