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ロードレース観戦ガイドのブログ

アークティックレース・オブ・ノルウェー 2022|リザルト

 

8月14日までノルウェーで開催された【アークティックレース・オブ・ノルウェー。最北の地で行われる絶景ロードレースは、存分に楽しませてくれた。個人的に楽しみ方として事前に注目していた3つのポイント、「北欧の絶景の空撮」、「若手選手の台頭」、「激しい降格争い」、それぞれが印象的なレースであった。以下、各ステージと注目選手の結果を簡単にまとめる。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

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初日は雨だったが、他のレースでは見られないような景色が続き、眺めるだけでも楽しみがあった。

 

 

↓プレビューはこちら。

jamride.hateblo.jp

 

 

 

 

◎レース結果:総合トップ10とステージ優勝

 

◆Stage1優勝:アクセル・ザングル(コフィディス

登り集団スプリントからザングルが抜け出してアタックしそのままゴール。サプライズ勝利のように思われていたようだが、個人的には優勝予想の一人だった。

◎独断のステージ優勝候補:

カピオット(→4位)マンザンフルーネウェーヘンボアッソンハーゲンザングル(→1位)

 

◆Stage2優勝:ディラン・フルーネウェーヘン(バイクエクスチェンジ)

フルーネウェーヘンが格の違いを見せつけるように先頭でゴール。とはいえ、アルペインンのスバラーリと接触して落車を引き起こしたり、抜群に強いというよりもなんとか勝てたという印象。

◎独断のステージ優勝候補:

カピオット(→2位)ボアッソンハーゲン(→3位)ビストラムヘルマンスTヨハンネセン

 

◆Stage3優勝:ビクトール・ラフェ(コフィディス

最後の登りでアタックし抜け出したラフェが先頭でゴール。チームメイトのザングルから総合リーダーを受け継ぐが、2位以下とは僅差。

◎独断のステージ優勝候補:

Tヨハンネセンレックネスンシュルツ(→8位)コッレオーニ、ヘルマンス(→6位)

 

◆Stage4優勝アンドレア・レックネスン(チームDSM

序盤から逃げたレックネスンが残り30kmから単独アタックし、そのまま先頭でゴール。総合タイムも逆転し総合優勝。

◎独断のステージ優勝候補:

ヘルマンス(→6位)Tヨハンネセンズバラーリ(→8位)ボアッソンハーゲン

 

ステージ優勝予想は、いまいちでした。もう少し修行が必要です。笑

総合成績では事前にピックアップしていなかった選手は今回3名入っている。総合3位になったニコラ・コンチは昨年までトレックにいて今年ガスプロムに移籍するもチームが活動休止となったが、ジロ・デ・シチリアでイタリアチームとして出場し総合6位になり、6月から現アルペシンのディベロップメントチームに移籍成功。プロ未勝利ながら今回印象的な走りを見せたクライマー。総合7位のマックス・ポールは今年からでDSMのディベロップメントチームに所属している19歳のクライマー。全く未知数ながらいかにもDSMらしい若手選手。総合10位のシュールト・バックスは去年までコンチネンタルチームにいたなかなかの苦労人。プロクラスのレースは今回はじめて完走できた26歳のオランダ人。スプリンター寄りだが、まだどんな力があるのかよくわからない。

 

 

◎総合優勝候補

【予想文面】→ 本命は2強と言っていいだろう。ビアス・ヨハンネセン(ウーノエックス)アンドレアス・レックネスン(DSM。どちらも地元ノルウェーの若手総合系有望選手。Tヨハンネセンは昨年のツール・ド・ラブニールで総合優勝し、今年はカタルーニャで総合7位になるなど順調にキャリアを重ねている。MTBジュニア世界選手権で銅メダル、シクロクロスで2年連続ノルウェーチャンピオンにも輝き、最近の活躍する選手のトレンドにぴたりとはまる。なおTヨハンネセンは双子の兄アンデルス・ヨハンネセン(こちらも有望株)も出場するのでサイクル誰クル投票時などは間違えないようご注意を。レックネスンは今年のツール・ド・スイスのステージ優勝でワールドツアー初勝利を飾ると総合でも13位になり、パリ〜ニースでも総合11位と好成績を残している。登坂力とスプリント力ではTヨハンネセンが上で、タフさではレックネスンが上という印象。アシストたちの働き等が勝負を分けるかもしれない。

対抗は、個人的に注目しているのはニック・シュルツ(バイクエクスチェンジ)クインティン・ヘルマンス(アンテルマルシェ)シュルツはツールでもう少しでステージ優勝になり(コルトが優勝したステージでハンドル投げの差で敗れた)、終盤のピレネーでも総合トップ10の選手たちと間をおかずにゴールするなど、登坂力に強さを見せた。一皮剥ければサイモン・イエーツに次ぐ総合系のエースに名乗り出そうな存在。ヘルマンスは4月のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでレムコに次ぐ2位(3位ファンアールトにゴールで競り勝つ)で一気に名を挙げたシクロクロッサー。ベルギーツアーでも総合3位になるなど、ロードレースに本格的に参戦して2年目ながら大きく飛躍している。難関山岳ではまだ厳しそうだが、途中のアップダウンを乗り切ればどのステージも優勝を狙えるスプリント力もあるのが強み。

他の上位候補は、ツールで登坂力も披露してステージ優勝し好調なユーゴ・ウル、このレースと相性のいいクライマーのラフェも総合を狙ってくるだろう。パリ〜ニースで初ステージ優勝を飾ったちょっとアラフィリップ似のクライマー、ビュルゴドーも総合上位に絡む力はありそう。地元ノルウェー勢ではビストラムフレデリックハーゲンも中堅実力派。トップ10に絡む成績を上げておきたい。ビッグネームの出場が少ないため、新たな若手GCライダーたちが張り切る姿も見たい。そういう意味で気になる存在として、コッレオーニ(バイクエクスチェンジ)ヴォークラン(アルケア)を上げておく(どちらも名前はケヴィンだ)。二人ともまだメディアなどで注目されている記事を見たことがない選手だが、これから出てくる可能性を感じるブレイク候補。コッレオーニは2020年ベイビージロで3位になり翌年バイクエクスチェンジに加入、今年はツアー・オブ・オマーン総合7位、直近のサズカ・ツアーで総合3位と上り調子の22歳イタリア人クライマー。ヴォークランはツアー・オブ・オマーン総合6位のほかプロクラスのレースでコンスタントに一桁フィニッシュをしている昨年までトレーニーだった21歳のフランス人。フランス国内選手権ではジュニア時代にRR、個人TTともに優勝し、昨年はU23個人TTも優勝している有望株。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ トップ10のうち6人は予想。本命に推してたレックネスンが見事総合優勝。最終ステージでの単独アタックは無謀にしか思えなかったが、最後までタイム差をつけてゴールし、母国ノルウェーのレースで23人抜きで総合優勝までしてしまったのは痺れる勝ち方。強いだけじゃなくリスクを承知で勝負する勇気は大きな武器になる。まだ23歳、これを機に大きく飛躍してほしい。Tヨハンネセンはstage1から大きく失速してしまい残念だったが最後まで走りきって根性は見せた。実力ある若手選手なのは間違いなく今後に期待。

シュルツヘルマンスはやや期待外れか。というかこちらの期待が大き過ぎたかな。総合14位、8位という結果はそれほど悪いわけではない。シュルツはツールの疲労が抜け切れていなかったようにも思えるし、ヘルマンスはまだワンデーレース向きの印象。その点、ウルの総合2位とラフェの総合5位はどちらも見事だった。ビュルゴドーフレデリックハーゲンビストラムもそれなりの成績。期待のニューフェイスヴォークランはかなりいい。最終的には総合6位になったが、stage3終了時には2位にまで上がり、ステージレースでの適正ぶりをしっかり印象に残した。コッレオーニも積極的な走りは好印象。楽しみな若手としてこれからも追いかけようと思えた。

 

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見事な総合優勝を果たしたレックネスン。DSMは楽しみな若手がよく育つ。

 

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クイーンステージで優勝したラフェ。コフィディスは2勝し、ワールドチームらしさを見せた。

 

 

◎その他の注目選手

【予想文面】→ スプリンターは多くは出場していないが、途中のアップダウンをこなして終盤まで残れればステージ優勝は狙える。実績ではフルーネウェーヘンが頭ふたつくらい抜けている印象だが、アップダウンをどれほどこなせるかはやや疑問。登りをある程度こなせるという意味ではカピオットマンザンの方がゴールでのスプリントに残れそうと感じる。地元であるボアッソンハーゲンもベテランながら調子がよければスプリントに絡み勝機は十分。ボルはかなり厳しいと思うがどうだろうか。

ステージ優勝は上記の総合系かパンチャーやスプリンターに絞られると思うが、逃げが勝つ可能性も考えておきたい。スペシャリストともいえるタコさんに加えてザングルサイモン・クラークズバラーリあたりが一緒に逃げるとかなり強力になる。普段ならプロチーム所属の選手たちが逃げる展開が多いはずだが、イスラエルバイクエクスチェンジは降格争いの渦中でUCIポイントを稼ぐために逃げる可能性もあると見る。

【結果】→ フルーネウェーヘンはステージ優勝、カピオットは2位と4位になり、ボアッソンハーゲンも3位と総合16位は悪くなく、らしさは十分発揮したといえる。ザングルは想像以上に活躍。stage1の優勝とstage3でも3位に入りポイント賞まで獲得し総合でも4位。パンチャー系の選手として成長を期待したい。タコさんはstage3で終盤まで逃げて見せ場はきっちり作ってらしさは見せてくれた。イスラエルは220ポイント、バイクエクスチェンジも40ポイント獲得した。総合でも上位を狙ったはずのバイクエクスチェンジはもうひと踏ん張りしたいところだった。

 

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リーダージャージを着るザングルとポイント賞ジャージを着る(アラフィリップ似の)ビュルドゴー。彼らの防寒着を見ると北欧の厳しい寒さがよくわかる。

 

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逃げたステージで敢闘賞をてにしたタコさん。嬉しそうな笑顔。

 

なお余談だが、ロードレースの予想をするファンサイト『Velon Fantasy』で今回のレースで3525点を獲得して世界2位になれた(3000点以上は24人しかいなかった)。マニアを含む10000人以上が参加する中での2位は自分でも想像以上の結果で、こんなに上位には今後はなれないと思うほど。100以内になれたら上級者といえるだろうか。正直な所、怪我の功名的な部分もある。笑 今年の途中から始めたのだが、じゅうぶん励みになる結果で嬉しく思う。