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ロードレース観戦ガイドのブログ

ブエルタ・ア・エスパーニャ 2022|ステージプロフィール

 

8月19日から開催されるブエルタ・ア・エスパーニャ。今年はオランダで幕を開ける。オランダも自転車大国であり、張り切る有力選手も多くいるだろう。ツールでデンマーク旋風が吹き荒れたようにオランダ人にも注目しておきたい。ちなみにオランダはスペインに支配されていた時代があり、80年戦争で独立を勝ち取った歴史背景を思うとブエルタが開催されることへの意義も感じる。平坦で風の強いオランダで3日間過ごした後スペインに移動し、1週目はフランス国境に近くロードレース熱が高いバスク地方で起伏をこなし、北の海沿いの街とカンタブリア山脈を抜ける。休養日に飛行機で南下した後の2週目、地中海沿岸を走る選手たちに襲いかかるのは灼熱の太陽。ヨーロッパでアフリカに最も近い地域は例年気温は40度を超えることもあるまさに「太陽の国」らしさを感じられる。地中海沿岸を東から西へアンダルシア地方全ての県を通過するのも特徴の一つ。フラメンコの本場でありイスラム文化圏の影響が残る地域はエキゾチックな景色も広がり、プロトンの中継映像からもそんなスペインらしさも味わえるはず。超級のシエラネバダ山脈を登った後2度目の休息日。3週目は西側ポルトガルに近い地域を北上し中央に向かい雨の少ない赤土の地域を走り、グアダラマ山脈から最終日マドリードの集団スプリントで締めくくられる。

 

 

 

 

◎ステージ構成

各ステージの特徴を簡単に表にした。日にち、ステージ名(地域名)、カテゴリー《平坦/平坦&山頂F/丘陵/山岳/チームTT個人TT》の区分、走行距離、獲得標高、山岳の種類と数、ゴール状況(山頂フィニッシュ/集団スプリント等)を大まかにまとめている。今回のステージは平坦ステージ=6/中級山岳=4/平坦&山頂フィニッシュ=2/山岳=7/チームTT=1/個人TT=1で構成されている。また、山頂フィニッシュは9つもあり、総合狙いの選手たちは休む間もない過酷な構成。またスタート地もフィニッシュ地点もほぼ半分が大会初登場の地域で、フレッシュであるとともに各チームの情報収集や戦略は肝になるだろう。見る側にとっても先が見えにくい意外な展開が期待できそうだ。

またステージに向いてるタイプの選手も優勝候補として一部記載。実際には調子の良し悪しやチーム状況によって(アシスト専念か自由があるか、総合エースがいるか脱落したか等)勝つ選手は変わると思うので、どんな選手が活躍するステージになるかの目安程度にご覧下さい。

 

 

◎ステージの特徴

stage1チームTTから幕を開ける。グランツールチームTTがあるのは3年ぶりだろうか。ほぼ平坦ながら23kmとそこそこ長くコーナーが多いテクニカルなコース。チームとして強いのはユンボ、イネオス、クイックステップ。他にバイクエクスチェンジ、トレックあたりも強そうな選手が揃っている。ユンボは地元としても譲れない。総合争いをする選手のいるチームはここでやや優劣が出てきそうだ。

オランダでのstage23はど平坦で、集団スプリントになる確率はかなり高い。気になるのは風くらいか。何しろ「風車の国」である。また、ややコーナーの多いコースは位置争いも激しめになりそうで、スプリンターを連れてくるチームはこの二つは重要なステージ。出遅れるわけにはいかない。

stage4(中級山岳)、スペインへ移動後すぐに山が始まる。アップダウンが激しくゴールもかなりの急勾配。ステージ優勝を狙うパンチャー系の選手は残り30kmからの3級山岳で勝負をかけてくるだろう。このステージで勝つことはマイヨロホの着用につながる可能性が高いからだ。またフィニッシュの登りは大きなタイム差にはなりにくいが総合勢の登坂力の調子を占うことにもなりそう。

stage5(中級山岳)は5つの山岳ポイントがあり、最初の山岳賞狙いが勃発。このステージで多くのポイントを稼いだ選手は一歩リードしそうな予感。短い急勾配の山が多く、最後は二度登る2級山岳からのダウンヒルが続くため、アタッカーたちの小集団によるスプリントで決着か。

stage6(山岳)は4000mを超える今大会で獲得標高が一番多いステージ。特に一気に900mも登る山岳フィニッシュは、最初の総合争いが繰り広げられるはず。まだ趨勢が決まるとは言えないが、脱落する選手は確実に出てくる。

stage7(中級山岳)は特徴のあるコース。序盤にアップダウンをこなしたあと中盤は延々と続く長い登り。その後はゆるやかな下り基調がゴールまで続くため、1級山岳を乗り越えればスプリンターにもチャンスはある。また、逃げにもチャンスあり。レムコの大暴れが観れるかも。

stage8(山岳)は、カンタブリア山脈を使う凶暴なステージ。スタートから始まる登坂ではいきなりグルペットもできるかもしれない。その後も3級・2級の登坂を繰り返すコースは相当な消耗戦になりそう。最大勾配が20%近いセクターもあり、総合争いは一気に激しさを増す。

stage9(山岳)は、前日に消耗した選手たちをさらに地獄へ落とすかのような凶悪なステージ。5つの急勾配の山は選手たちをふるいにかけ、最後は激坂山頂フィニッシュ。平均勾配が10%を軽く超える登りが続き、総合争いは思わぬタイム差が開く可能性もある。

 

stage10個人TT。休息日明け、30kmのほぼ平坦なコースはTTスペシャリスト向き。海沿いの地域は強風の可能性もあり、総合勢でも大きな差がつきやすく、影響は必至。場合によっては脱落する選手も出てくるかもしれない。*TTが得意な選手はページ下部のリンク先を参照。

stage11(平坦)バルベルデの故郷の地域で、観客も盛り上がりそうだ。ほぼ平坦で後半は地中海沿いを走り岬にフィニッシュする。集団スプリントで決着すると思われるが、逃げたい選手たちにもチャンスはありそう。

stage12(平坦&山頂フィニッシュ)は意味不明のカテゴリーだが、要は総合争いに直結するステージ。170kmはゆるめの丘ひとつ超えるだけで、最後の20kmで1200mも登る苦しそうなコース。道もせまく勾配もきつい。クライマーたちの大逃げか総合勢のガチバトルになるだろう。

stage13(平坦)は開始早々の山を越えると、長い下りの後にゆるやかなアップダウンが続く。集団スプリントが予想されるが、ゴールはゆるやかな登り。登れるスプリンターやパンチャーが強いかもしれない。逃げ屋たちにも大きなチャンスがあるステージ。

stage14(山岳)の敵は灼熱の気温とラ・パンデラの山頂フィニッシュ。前半はゆるやかに進み、後半は一気に激しい起伏が待ち構える。15%を超える勾配のセクターもあり、総合争いの重要なステージのひとつ。2週目の終盤で選手の疲労をいかにリフレッシュできるかも大きな差につながる。

stage15(山岳)はクイーンステージ。残り60kmを切ってからはほぼ登りで、総合争いに決着をつけかねないほどの難関ステージ。終盤の1級山岳で集団はふるいにかけられ、最後は今大会唯一の超級山岳シエラネバダ山脈での山頂フィニッシュ。標高は2500mを超える今大会最高地点で、最大で20%を超える勾配も。南米勢がいきいきとするかもしれない。

 

stage16(平坦)は休息日開けでほぼ平坦なコース。ただしゴール前はゆるやかな登り。残り3kmで軽く遅れる選手が出てくるだろう。おそらく集団スプリントになるが、ピュアスプリンターは苦しむ可能性が高い。

stage17(平坦&山頂フィニッシュ)はステージカテゴリーは意味をなさない。獲得標高が2700m以上もある細かくもジェットコースターのようなアップダウンは「平坦」という言葉に違和感しかない。しかも中盤からはほとんど登りっぱなし。二度の下りをはさんでゆるやかな登り続けて、山頂フィニッシュはなかなかの勾配。下りから始まるレイアウトは逃げにぴったり。

stage18(山岳)からの山岳三連戦が総合争いの最後の舞台。ここまで残っていた優勝候補も少しづつ脱落していきそう。ステージプロフィールで見ると2週目のようなわかりやすい厳しい山岳ではないが、スペインクオリティは実際に走ってみないとわからない(前回15%の傾斜と言われていたのが測り直したら20%を超えていたとかざらにある)。終盤のふたつの1級山岳はなかなかの激坂。

stage19(中級山岳)は標高1200mの2級山岳を大きく2周する周回コース。下りの距離も長くなっているステージは、逃げの得意なクライマーが張り切りそうだし、ダウンヒルで差をつけそうでもあり、いろんなタイプの選手にチャンスがありそう。総合争いは消耗戦が仕掛けられるだろう。ここまでアシストたちがどのくらい残れているかも重要か。

stage20(山岳)は、いきなり1級登坂から始まり、総合争いの最後の決戦でもあり、スプリンターたちにもタイムアウトを逃れるための試練のステージになる。1級3つを含む5つの山は徐々に集団を少なくしていくだろう。stage15ほどの難関コースではないが、3週目最後、ここまでに蓄積した疲労と、どれだけ力を残しているかが問われる。最後の登坂後、ゴール前はほぼ平坦は道が6kmほどある一風変わったレイアウトは、タイム差の状況によってはドラマもありそうだ。

stage21(平坦)は、パリ・シャンゼリゼのような集団スプリントになるだろう。市街地の周回コースは、華やかなパレードランで始まり、ここまで走り抜いてきた全ての選手を称え合いながらゴールに向かう。

 

 

 

◎ステージ優勝候補たち

有力選手たちを《総合優勝候補/スプリンター/その他》に分けて以下のページで紹介しています。基本的には平坦ステージ=スプリンター、中級山岳ステージ=パンチャーやクライマー(逃げもあり)、山岳ステージ=総合優勝候補、個人TT=TTスペシャリストor総合優勝候補からそれぞれのステージ優勝をするケースが多くなるので、選手の脚質タイプもご参考にどうぞ。

jamride.hateblo.jp

 

参考までに過去3年間の総合成績20位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞)をリンク先のページに記載した。情報量が多くなってしまったので別ページに。

jamride.hateblo.jp