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ロードレース観戦ガイドのブログ

サイクラシックス・ハンブルク 2022|リザルト

 

8月21日にドイツで開催された【サイクラシックス・ハンブルク。各チームのエーススプリンターが集結したレースは終盤の集団が巻き込まれた落車と、あの選手のアタックで大荒れの展開に。たしかにこの展開は予想はできたが、実際の破壊力は想像以上だった。恐るべしファンアールト…。

 

 

 

◎レース結果:トップ10

序盤に逃げた選手を終盤に捕まえた時は、レースは大方の予想通りのエースたちによる集団スプリントになるかと思われたが、残り30kmあたりで発生した大きな落車に多くのチームのエースたちが巻き込まれ遅れてしまう。そしてその混乱が収まらない中、ゴールまで残り16kmあたりの小さな坂で、ファンアールトがアタックを開始する。それが全てのスプリンターのチームを破壊してしまった。ついていけたのはわずかに5人のライダー。トップ10の上位5人による小集団のスプリントはハラーが早めに仕掛けてそのまま先着。ヘルマンスを意識していたファンアールトは一瞬反応が遅れた。これは逃げに二人送り込んだボーラの連携による見事な勝利。チームの母国ドイツのレースで彼らの気合を感じた。

結果的に2位ではあったが、ファンアールトの存在感をさらにはっきりさせるレースだった。ユンボラポルトはじめアシストたちが先頭集団から遅れてしまい、ファンアールトが勝つ確率を上げるには、このアタックが最善の策だっただろう。しかし仮に集団落車がなかったとしても、ファンアールトは飛び出していたのではないだろうか。他チームからすると非常に厄介なやり方だ。スプリンター以外にファンアールトが仕掛ける登坂でついていけるパンチャー系の選手を連れてこないといけなくなってしまう。クイックステップで例えると、ヤコブセンを勝たせるためのリードアウト役の他に、バッレリーニやバジョーリでファンアールトに対抗しなくてはいけないというイメージだ。それでも勝てるとは限らない。思えばパリ〜ニースラポルトとファンアールトがフィニッシュ手前で飛び出したのも(ログリッチも引き連れていたが)このパターンだったし、ツールのstage4での勝利は、ユンボ(ファンアールト)が勝つためのプランだったことがわかる。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 本命はヤコブセンを。ヨーロッパチャンピオンジャージのお披露目レースになるのだろうか。スプリント勝負のうまさとスピードは他の選手を圧倒していた。実際今年はここまで集団スプリントになったレースでは7割以上も優勝しているというとんでもない勝率で、現在最強のスプリンターなのは間違いない。トラブルがなければ表彰台には確実に絡むだろう。ランパールトやセネシャルといつも組むチームメイトが揃っているのも好材料

対抗はフィリプセンヨーロッパ選手権はメルリールがベルギー代表として出場していたので出なかったが、デンマークツアーでも2日前に勝利をあげ、こちらも調子はよい。

他のベルギー勢からはファンアールトも出場し、こちらも優勝候補。大暴れしたツール以来のレースでコンディションはどうだろうか。仮にいまいちだった場合はラポルトがエースになりそう。ラポルトデンマークツアーでリードアウトしたコーイがステージ2勝し、自らもステージ優勝&総合優勝を飾るという絶好調ぶり。どちらで勝負しても強いのは間違いなさそう。

他も非常に豪華なマンバー。正直な所、誰が勝っても不思議ではない。優勝候補にあげた選手以外では、ここひと月ほど調子を上げているのはコルトデマールヴィヴィアーニクリストフフルーネウェーヘンあたりか。ダイネーゼバウハウスも悪くはない。ちょっと気になるのはコフィディス。エースはコンソンニと想像したが、他にレハールヴァルシャイドノルウェーで活躍したザングルもいて面白い勝負ができそうに思える。とはいえ他のスプリンターが強力すぎるので不発に終わるかもしれない。

ニッツッォーロユアンは本調子ではない状態が続いている印象。サローポリッツガルシアオフステテールは集団スプリントだと他の選手にやや劣るだろうか。各チームのエースは下記表を参照。

【結果】→ 本命だったヤコブセンユアンフルーネウェーヘン等は残り30kmあたりで発生した落車に巻き込まれて遅れてしまい、勝負をあきらめざるをえなくなった。ファンアールトを追いかけるメイン集団のスプリントではフィリプセンが先着。スプリンターの意地を見せ、バウハウスオフステテールカンタークリストフが続いた。3連覇中だったヴィヴィアーニは勝負にも加われず、不調が続いているニッツォーロはかなりの重症だ。ファンアールトのアタックについていったナルバエスコンラッドが4位と5位に入り、今季移籍後復調気配だったカンターは9位。降格争い渦中のチームに大きなポイントをもたらした。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ 基本的にはここに載せている選手は全員リードアウトなどのアシスト要員になるだろう。ただし星をつけた選手はエースとしてスプリント勝負をするかもしれないし、それだけの力はあるだろう。新城幸也も出場する。彼は今年はステージレースよりもクラシック中心に出場していて少し新鮮に感じる。まだ来季の契約は決まっていないが、まだバーレーンで活躍してほしいと願う。

【結果】→ ハラーが金星。ファンアールトのアタックについていってゴールで先着。ヘルマンスはファンアールトをマークしてゴールスプリントにも絡み、惜しくも3位であったが、彼のこのスタイルは大きな武器になりえるし、ファンアールトはヘルマンスを実際かなり意識していた。それは同じような展開でリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでヘルマンスに負けていたためだ。アンテルマルシェはクリストフがいなくなる来季、ヘルマンスとギルマイがクラシックレースでエースになりそうだ。メスゲッツウェルテントレンティンは失速したエースの代わりにスプリント勝負に出て好成績。逃げの5人がいなければトップ10に入れるほど。ザングルコフィディス)は前走のノルウェーのレースの好調さをそのまま維持している印象。一皮むけそうな雰囲気が出てきた。降格争いのチームではモビスターが9位カンターと14位ガルシアで多くのポイントを稼ぎ、ロットイスラエルは差を広げられた。特にロットは、エーススプリンターのユアンの不発は痛い。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。