ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

ブルターニュ・クラシック 2022|出場選手まとめ

 

8月28日にフランスで開催される第86回目のブルターニュ・クラシック】。自転車熱の高いブルターニュ地方でのツールに次ぐほどの歴史あるレースは、周回コースで沿道は観客で埋まる。走行距離も254.kmと長めで、大きい山はないものの平坦な道がほとんどなく、起伏が続くコースは獲得標高が3000mを超える。パンチャー系の選手を中心にクラシックに強い選手がレースを制することが多いが、残り3kmあたりまで続く丘をこなせればスプリンターにもチャンスがありそうだ。プロフィールを見るだけならば、今年のコースは例年よりも起伏はやや大人しめだからだ。そのためスプリンターを連れてきているチームもちらほら(一週間前のサイクラシックスと比べるとピュアスプリンターは1/3程度、ということは集団スプリントにならない可能性の方が高いとは感じてるが)。いろんなタイプの選手にチャンスがありそうで、展開が読みにくい面白いレースが期待できるだろう。

*情報は8月26日現在、出場選手は変更されることがあります。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

◎優勝候補

今回はゴール前の展開別《小集団スプリントもしくはロングアタック or 大集団スプリント》に優勝候補を上げてみる。

◆小集団スプリントの場合:本命はファンアールト。先週のサイクラシックスでも2位とツール後にコンディションが落ちていることはなさそうだ。ゴールの集団スプリントになっても勝てそうだし、ゴール手前の無数にある坂のどこで仕掛けられても着いていけそうだし、なんなら自分で仕掛ける可能性もある。だが、サイクラシックスのように坂からのアタック一発で集団を破壊するようなことは難しいだろう。それは登坂力に優れている選手が多く出場するからだ。ファンアールトが坂でアタックしても着いていけそうな選手の筆頭はマシューズ。他にもギルマイマデュアスも問題ないだろう。クラーウアナスンコスヌフロワアランブルストゥイヴェンコルトテュルジスあたりは展開によっては自ら先に仕掛けそうだしスプリント力もかなりのもの。キュングDトゥーンスホノレあたりはスプリント勝負にしたくないから、かなり前でアタックが必要かもしれないが、アタックが決まればそのまま独走する力もある。そのあたりのタイミングでキーになるのはポガチャルかもしれない。前走のサンセバスティアンでは途中でずるずると遅れてリタイアしたが、調子さえ戻ればストラーデビアンケの時のように残り距離をかなり残した状態でアタックするのは想像にたやすく、ポガチャルがアタックしたらスプリンターたちは早々に諦めるだろう。個人的には、キュングはこういうレースに勝てるようになれると期待してる。春のクラシックでシングルリザルト連発してた時はいつ勝利してもおかしくないと思っていたのだが。なおDトゥーンスイスラエル移籍後の初レース。UCIポイントを少しでも多く稼ぐためリスク承知で仕掛けてきそうだが、新しいチームでの準備がどのくらいできているだろうか。

◆大集団スプリントの場合:本命はデマール。ジロ以降は好調を持続し、集団スプリントならファンアールトにも勝てるだろう。ただし不安としてはグルパマの誇るリードアウトたちを連れてきていないこと。グルパマは有力選手が多く出場しているが、中途半端な印象。よく言えば展開に柔軟に対応、悪く言えば信念がないかんじ。もう一人の優勝候補は、今年デビューながらすでに9勝している新世代の20歳のスプリンター、デリー。彼は直近のレースでもデマールに勝っているが、長距離と無数のアップダウンについていけるかというと少し厳しいのではないかと見ている。他のスプリンターでは、ヴィヴィアーニオフステテールバッレリーニは上位には絡みそうだが優勝には届かなそう。また小集団スプリントで名前を挙げたマシューズギルマイトレンティンも大集団になっても上位に絡む。もちろん、ファンアールトも。ニッツォーロだけ星をつけなかったが、今年の彼は不調が続いていて勝てそうな雰囲気が感じられない。

他の候補は下記表を参照。

 

 

◎その他の注目選手

こちらの表の選手は基本的にはアシスト要員になると思うが、展開によっては(エースが離脱したり、いいメンバーでの逃げが決まったり)勝負できる実力者たち。ただし250kmもある距離では、まず逃げで勝つのは難しい。残り50kmくらいから5人前後で有力選手が集まったアタックが決まれば、可能性はまだあるだろうか。スプリンターのチームがどの程度逃げを容認するか。逃げたら面白いメンバーは、トラトニックトマビッセガカンペナールツクラーク。優勝候補であげたクラーウアナスンコルトキュングホノレも絡むとなお良い逃げになりそうだ。

ビッグネームでは、ゴデュマルタンジルベールトレンティンカルーゾサガンサガンは本調子にはまだ遠く、トレンティンはおそらくポガチャルのサポートで、他の選手も勝利を狙うポジションではないだろう。

個人的な注目株はアクセル・ザングルマテフ・ゴベカールザングルノルウェーのステージレースで活躍したが、本来クラシック向きなはず。エーススプリンター勢揃いだったサイクラシックスでの15位は立派。まだ成長途上だがレース勘がいいタイプで面白い。ゴベカールは今年6月にデビューしたばかりの有望株で、ブルゴスでステージ優勝した22歳は今年スロベニア選手権で2位になった伸び盛りのスプリンター。新城幸也のチームメイトだ。ユキヤは今回で8回目の出場と、縁がある大会。バーレーンは勝利を狙えるようなエースは出場してなくて(カルーゾもトラトニックもワンデーで勝利をするタイプではない)、エースナンバーはユキヤがつけるが、ゴベカールにエース的な経験をさせるためのレースになるだろうか。

 

 

◎過去の結果(2021年、2020年、2019年)

参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も。2021年は小集団のスプリント(アラフィリップとコスヌフロワのほぼ一騎打ち)、2020年・2019年も小集団のスプリントで決着している。が、それ以前は3年に一回くらいの割合で集団スプリントで決着している。コスヌフロワセネシャルが2回トップ10に入っている。チームとしては、クイックステップが延べ4人、他は3人以上入っているチームはなく、様々なチームが活躍しているといえそうだ。

出場選手中、過去の優勝経験者は、コスヌフロワ(2021年)、マシューズ(2020年)、ファンマルク(2019年)、ナーセン(2018・2016年)、ヴィヴィアーニ(2017年)。なかなか勢ぞろい感がある。少し意外に感じたのは、ジルベールは優勝していなかったこと。彼なら勝てそうなイメージがあるレースだ。