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ブルターニュ・クラシック 2022|リザルト

 

8月28日に開催されたブルターニュ・クラシック】。自転車熱の高いブルターニュ地方でのツールに次ぐほどの歴史あるワンデーレースは、ツール以来のレースになる選手や来月に行われる世界選手権をにらんだ選手たちが揃った。終盤は多くのアタックが繰り返され、名だたるクラシックハンターに若い選手たちがくらいつく集団スプリントになり、勝ったのはやはり最強のあの男だった

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

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貫禄の勝利。ワンデーレースでは常に主役。強過ぎるファンアールト。

 

◎レース結果:トップ10

序盤から逃げた6人に追走でアタックをかけた選手が追いつき、16名の大きな逃げグループを形成。ユンボを中心にしたメイン集団が3分ほどのタイム差をキープし、終盤に向かう。逃げグループからは残り30kmをきったあたりでトラトニクが飛び出しロングアタックをかけ、メイン集団からはファンアールトが飛び出し追走グループに合流。その後も残った20人ほどの選手でアタックを繰り返しながら、最終的に残り4kmで全て吸収され、集団スプリントに。このメンバーでは強かったのはやはり、ファンアールト。彼の異次元ぶりがまた感じられるレースになった。残り20kmほどを集団から単独で逃げグループに追いつき、リードアウトもいない状況でスプリントを勝つ、つまりチームメイトがいなくてもひとりで普通に勝ってしまう、恐ろしい選手だということだ。

デリーギルマイと期待の若手も最後まで勝負するも、経験値の差が出たかんじ。トップ10のうち4人が22歳以下と、かなりフレッシュな顔ぶれ(ローランス21歳/デリー20歳/ギルマイ22歳/ピッコロ21歳)で、これだけいると新しい時代を感じたりもする。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 今回はゴール前の展開別《小集団スプリントもしくはロングアタック or 大集団スプリント》に優勝候補を上げてみる。

◆小集団スプリントの場合:本命はファンアールト。先週のサイクラシックスでも2位とツール後にコンディションが落ちていることはなさそうだ。ゴールの集団スプリントになっても勝てそうだし、ゴール手前の無数にある坂のどこで仕掛けられても着いていけそうだし、なんなら自分で仕掛ける可能性もある。だが、サイクラシックスのように坂からのアタック一発で集団を破壊するようなことは難しいだろう。それは登坂力に優れている選手が多く出場するからだ。ファンアールトが坂でアタックしても着いていけそうな選手の筆頭はマシューズ。他にもギルマイマデュアスも問題ないだろう。クラーウアナスンコスヌフロワアランブルストゥイヴェンコルトテュルジスあたりは展開によっては自ら先に仕掛けそうだしスプリント力もかなりのもの。キュングDトゥーンスホノレあたりはスプリント勝負にしたくないから、かなり前でアタックが必要かもしれないが、アタックが決まればそのまま独走する力もある。そのあたりのタイミングでキーになるのはポガチャルかもしれない。前走のサンセバスティアンでは途中でずるずると遅れてリタイアしたが、調子さえ戻ればストラーデビアンケの時のように残り距離をかなり残した状態でアタックするのは想像にたやすく、ポガチャルがアタックしたらスプリンターたちは早々に諦めるだろう。個人的には、キュングはこういうレースに勝てるようになれると期待してる。春のクラシックでシングルリザルト連発してた時はいつ勝利してもおかしくないと思っていたのだが。なおDトゥーンスイスラエル移籍後の初レース。UCIポイントを少しでも多く稼ぐためリスク承知で仕掛けてきそうだが、新しいチームでの準備がどのくらいできているだろうか。

◆大集団スプリントの場合:本命はデマール。ジロ以降は好調を持続し、集団スプリントならファンアールトにも勝てるだろう。ただし不安としてはグルパマの誇るリードアウトたちを連れてきていないこと。グルパマは有力選手が多く出場しているが、中途半端な印象。よく言えば展開に柔軟に対応、悪く言えば信念がないかんじ。もう一人の優勝候補は、今年デビューながらすでに9勝している新世代の20歳のスプリンター、デリー。彼は直近のレースでもデマールに勝っているが、長距離と無数のアップダウンについていけるかというと少し厳しいのではないかと見ている。他のスプリンターでは、ヴィヴィアーニオフステテールバッレリーニは上位には絡みそうだが優勝には届かなそう。また小集団スプリントで名前を挙げたマシューズギルマイトレンティンも大集団になっても上位に絡む。もちろん、ファンアールトも。ニッツォーロだけ星をつけなかったが、今年の彼は不調が続いていて勝てそうな雰囲気が感じられない。

他の候補は下記表を参照。

【結果】→ 今回の予想は我ながらかなりひどい。苦笑 スプリント力のあるパンチャー・ルーラー系の選手が勝ちそうな展開は想像に近かったが、最後の集団に残る選手が意外な選手が多かった。優勝したファンアールト、4位デリー、6位ギルマイはさすが。アランブルホノレマドゥアスコスヌフロワあたりは善戦したといえるが、スプリント勝負になる前に仕掛けられなかった(潰された)のが残念なところ。それにしてもマドゥアスは今年一皮剥けたのと、アランブルは来年もクラシックレースには期待感が増した。彼らはこの後の世界選手権メンバーに入ると面白い存在になりそう。ポガチャルは全く存在感なく最終的には89位と、ツールの疲労がまだ残っているのだろう。そういう面でもファンアールトの異次元ぶりがさらに際立つ。スプリンターが最後まで残るには厳しい展開で、デリー以外は全滅。ファンアールトがいなかったらまた少し展開も違ったのかもしれない。

 

 

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レースではいいところがなかったが、ポガチャルも元気そうな姿を見せた。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ こちらの表の選手は基本的にはアシスト要員になると思うが、展開によっては(エースが離脱したり、いいメンバーでの逃げが決まったり)勝負できる実力者たち。ただし250kmもある距離では、まず逃げで勝つのは難しい。残り50kmくらいから5人前後で有力選手が集まったアタックが決まれば、可能性はまだあるだろうか。スプリンターのチームがどの程度逃げを容認するか。逃げたら面白いメンバーは、トラトニックトマビッセガカンペナールツクラーク。優勝候補であげたクラーウアナスンコルトキュングホノレも絡むとなお良い逃げになりそうだ。

ビッグネームでは、ゴデュマルタンジルベールトレンティンカルーゾサガンサガンは本調子にはまだ遠く、トレンティンはおそらくポガチャルのサポートで、他の選手も勝利を狙うポジションではないだろう。

個人的な注目株はアクセル・ザングルマテフ・ゴベカールザングルノルウェーのステージレースで活躍したが、本来クラシック向きなはず。エーススプリンター勢揃いだったサイクラシックスでの15位は立派。まだ成長途上だがレース勘がいいタイプで面白い。ゴベカールは今年6月にデビューしたばかりの有望株で、ブルゴスでステージ優勝した22歳は今年スロベニア選手権で2位になった伸び盛りのスプリンター。新城幸也のチームメイトだ。ユキヤは今回で8回目の出場と、縁がある大会。バーレーンは勝利を狙えるようなエースは出場してなくて(カルーゾもトラトニックもワンデーで勝利をするタイプではない)、エースナンバーはユキヤがつけるが、ゴベカールにエース的な経験をさせるためのレースになるだろうか。

【結果】→ こちらは最終的にトップ10に入ったトマナーセンスクインシュバルギルトラトニクは持ち味を発揮し、上位に入り健闘。ジルベールも最後まで先頭グループに残りデリーのリードアウトまで行ったのは胸熱。個人的に期待していたザングルゴベカールに特別な展開はなかったが、また次のレースも応援する。

 

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ジルベールのレースを見れるのも残り少なくなってきた。降格争いをするロットのために最後まで奮闘した。