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ブエルタ・ア・エスパーニャ 2022|成績まとめ(stage15終了時)

 

今年最後のグランツールブエルタ・ア・エスパーニャは、2/3を終え、二度目の休息日。スペインを南下し、地中海沿いで連日激しい戦いを繰り広げる選手たち。彼らのここまでの成績を簡単に振り返ってみる。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

◎総合成績上位

 

2週目はレムコ・エヴェネプールが苦しみながらも最後までマイヨロホを着用し続けた。正直なところ彼が最終着用者になるとは思っていなかった。もちろん重要な3週目を終えるまでどうなるかはわからない。休息日明けは得意の個人TT、最終滑走で異次元のタイムを叩き出し2位以下との差を広げたものの、翌々日のステージでチームの重要なピース、アラフィリップを落車で失い(幸い長期離脱を強いられるほど重症ではなかった)、その翌日には自らが落車。走り続けることはできているがダメージは間違いなくある。その後の難関山岳2連戦ではログリッチやマスたちに先行されタイム差を失うも粘り強く走り続け、被害を最小限にとどめる冷静な走り。また想像以上に機能しているクイックステップのチームメイトたちの献身も大きい。3週目も苦しい戦いが続くと思われるが、このまま最後までリーダージャージの可能性も見えてきた。可能性は半々ぐらいはあると言っていいのではないだろうか。

ライバルの優勝候補一番手のグリッチはいまだ万全な状態ではないはずだが、個人TTも力の入った走りで2位につけ総合順位でマスを追い抜くと、百戦錬磨のレース運びでレムコにじわりと近づいている。徐々に体調もよくなっているかもしれない。クスがいない状況にもかかわらずユンボのチームとしての頼もしさも現在最強チームと呼ぶのにふさわしい。

相変わらずマスカルロス・ロドリゲスアユソのスペイン勢も好調。マスは1週目も唯一レムコについていけた唯一の選手であり、2週目もログリッチも振り切るほどの登坂力を見せ、逆転優勝を狙っているはず。最終ステージまで目が離せない状況を作り出す可能性は十分。ここにきて上位勢の中では最強ともいえるほどのアシストぶりを感じされるバルベルデの存在も大きいだろう。イネオスUAEは複数の選手が総合上位に並び、サブエース格の選手を使って表彰台を目指すようなチーム戦を仕掛けてほしいところだが、カルロド、アユソ以外はタイム差がかなり開いてしまったのは厳しい。

標高の高い山岳で上位とのタイム差を詰めたMAロペス、逃げで順位を上げたアレンスマンは3週目はさらに上を狙う動きがあるかも。ただし上位勢の中ではアレンスマン、オコーナーインチェは山岳でのアシストが足りないのは苦しい。いずれも2周目に調子をあげてきているが、順位のキープが目標かもしれない。

 

前週ではトップ20に3人の選手を入れていたEFにも注目していたがウランひとりになってしまった。降格争い中のチームのためにはひとつでも上の順位を目指しているはず。ひとつ下のチーム、モビスターにはマスが上位でいるため抜かれる可能性が高いからだ。

 

 

◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞は、念願のステージ優勝を遂げたピーダスンが2位以下にかなりの差をつけて1位にいる。ステージ2勝をあげて好調だったサム・ベネットが残念ながらリタイアし、このまま順調に行けばかなりの確率でピーダスンがとれるだろう。平坦ステージでは安定して上位に入り、山岳ステージでも中間スプリントポイントを積極的にとっていて、登りにも強いスプリンターの本領発揮である。3位以降はスプリンターではなく、山頂ゴールで上位の成績をあげている選手が続く。

 

山岳賞争いは、好調のヴァインのが2週目もポイントをかせぎ、独走に近い状態。カラパスがステージ2勝したときにポイントを稼いで2位につけるが、stage15のレースぶりを見ても山岳賞を積極的に狙っているわけでもなく、あとはグリッチレムコが残りの山岳ステージを圧勝でもしない限りヴァインの有利は動かなさそう。ソレルは積極的に逃げ山岳勝を狙うようにも思えたが、結果は伴わず。

 

ヤングライダーは、1週目とほぼ同様の展開。レムコを新鋭のスペイン人二人のカルロス・ロドリゲスフアン・アユソが追う総合争いの5位以内に3人もいるというハイレベルな争い。stage9終了時に5位につけていたシヴァコフがリタイアし、代わりに5位に入ってきたアレンスマンもstage15で優勝し全体の総合でも8位につける猛者。この若者たちは全員、来年のグランツールでも中心的な活躍が期待できる楽しみな選手たち。

 

チーム総合イネオスUAEが1位を争っているが、タイム差はかなり広がった。シヴァコフのリタイアは痛かったが、UAEが好成績を残していると考えるべきだろう。総合表彰台に近いアユソとアルメイダに加えて、ステージ優勝に絡むソレル、総合でも13位まで成績を上げたポランツが揃っているチームは強力だ。アスタナボーラは善戦し順位を上げて、少しの差でモビスターが追いかける。3位以降は順位変動がありそう。

 

 

◎各ステージ優勝選手

 

stage10(個人TTは平坦で長めの距離。大柄なTTスペシャリスト向きのコースは、序盤にカヴァニャがトップタイムを出し、長らくホットシートに座る。総合上位勢がカヴァニャに迫る好タイムを出すも及ばない中、グリッチが12秒上回るトップタイムを出しマスを抜いて総合2位に上昇するも、最終走者のレムコが圧巻の走り。ログリッチを48秒も上回りグランツール初ステージ優勝と全員からリードを広げる。

stage11(平坦)は、スプリンターたちにようやく訪れたオランダ以来のチャンス。序盤から逃げたプロチームの3人から、残り50kmでブルゴスのボルが粘って単独で逃げ続けるも、残り25kmで吸収。スプリンターチームが横風を受けながら主導権争いをする集団スプリントで、グローブスがステージ優勝。エースのサイモン・イエーツを新型コロナで失ったチームに嬉しい勝利をもたらした。レムコがリーダージャージを守るも、アラフィリップが落車し救急搬送。幸い大きな怪我には至らなかったが、総合優勝を狙うチームには大きな痛手。

stage12(平坦&山頂フィニッシュ)は新しい試みとも言える特徴を持つステージ。終盤までは平坦で、最後だけ本格的な山頂ゴールになる。アタック合戦後に形成された大きな逃げグループは、ソレルヴァインとすでに今大会のステージ優勝者も含み、10分以上もタイム差を広げながら最終山岳を登り始める。先頭集団ではボーラが牽き始めると人数を減らし、残り2kmでカラパスがアタック。追いすがるケルデルマンらを突き放してステージ優勝を決めた。マイヨロホは、途中落車しながらも山岳で遅れるどころかライバルたちに先着したレムコがキープ。

stage13(平坦)は、前日同様に序盤にできた3名の逃げをスプリント勝負に持ち込みたいチームが中心になり集団をコントロール。残り10kmで逃げを吸収し、集団のまま市街地での登り坂に突入。早駆けしたアッカーマンを唯一追いかけたピーダスンが抜き去り勝利。ツールに続き今年二つ目のグランツールステージ優勝を遂げた。総合上位勢は変化なし。

stage14(山岳)は、2週目の、というよりも今ブエルタの山場となる山岳2連戦。序盤から80km以上に渡り激しいアタック合戦が繰り返され、ようやく10名ほどの逃げグループが決まる。総合勢も容認しながらも4-5分差のタイム差をキープ。最後の登坂が始まると、ペースを上げる逃げグループからは少しづつ脱落し、総合勢からはグリッチがアタック。続いてマスMAロペスがログリッチを追うが、レムコがついに遅れはじめる。先頭で粘るカラパスが、すぐ後ろまで迫るログリッチたちからなんとか逃げ切り今大会2勝目。レムコは、2位以下とのタイム差は縮まるもマイヨジョーヌをキープ。

stage15(山岳)は、前日に続きシエラネバダ山脈で繰り広げられるクイーンステージ。最初の山岳で実力者が揃う30名近い逃げ集団が形成される。ステージ優勝狙いや山岳賞狙いに総合勢の前待ちと、思惑の絡んだ逃げグループからは1級山岳でクラドックが抜け出す。その後山頂付近でクラドックに追いついたヴァインも、半分ほどに人数を絞られた逃げグループが吸収し、最後の超級山岳でソレルがアタック。残り10kmほどで追走していたアレンスマンが抜き去り先頭でゴール。グランツール初ステージ優勝を遂げ総合成績も8位まで上げる。レムコマスグリッチに先行されながらも粘り強く走り、総合タイム差は縮まったがマイヨロホはキープ。3週目に勝負をかけることになる。

 

休息日明けはいよいよ今年のグランツールのフィナーレに向かう。stage16の平坦ステージでのスプリンターたちの勝負のあと、stage17(平坦&山頂フィニッシュ)、stage18(山岳)、stage19(中級山岳)、stage20(山岳)と、総合優勝をかけた戦いが続く。またどのステージもチームの降格争いや来季の去就をかけていたり、様々な思惑の絡んだ逃げ屋たちとの攻防が繰り返されるだろう。stage21のマドリードでマイヨロホを着ているのはベルギーの神童か、不屈の男の4連覇か、それとも別のドラマがあるのだろうか。

 

 

↓レース前の出場選手まとめはこちらから。

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