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グランプリ・シクリスト・ド・ケベック 2022|リザルト

 

9月9日に開催された【グランプリ・シクリスト・ド・ケベック。2週間後に迫る今年最後の大一番である世界選手権を控えたカナダのワールドツアー2連戦、優勝候補に挙げられた登れるスプリンターたちに勝ったのは、常にアタックを仕掛ける陽気なフランス人だった。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

レースは序盤からカルーゾと若手選手が逃げ出し、集団はスプリンターを抱えたチームが中心にタイム差を広げずに追いかける展開で坦々と進む。終盤が近づくにつれ、集団からはクイン・シモンズストーラーたちがアタックし追走グループを作るもメイン集団は逃さず、逃げグループは全て吸収される。ゴールスプリントに備えてスプリンターチームがポシション争いをする中、残り2kmの坂でコスヌフロワが鋭いアタック。そのまま単独で逃げ切る見事な勝利。追いかけてきたメイン集団ではスプリントで、マシューズギルマイファンアールトの順でゴール。優勝候補たちがしっかり結果を残し順調さをアピールするも、コスヌフロワのアタックしたタイミングと力強さは、アラフィリップを彷彿させる迫力があった。

 

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表彰台での楽しそうな3人。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 本命はマシューズをあげる。過去2連覇中であり、ゴール前の登り坂はいかにもマシューズ向き。母国オーストラリアで開催される世界選手権に向けてと、バイクエクスチェンジの降格争いを救うポイント獲得のために、モチベーションは非常に高いはずだ。相性が良くコースも熟知していることも優勝候補筆頭にあげる理由になる。

もうひとりの優勝候補はやっぱりファンアールト。マシューズとゴールでのスプリントにはひけをとらないだろう。ツール後のレースでも2位、1位と好調をキープ。今年の世界選手権は個人TTは出ずRR一本に絞っての出場は相当なモチベーションであることが感じられる。ゴールスプリントを嫌うパンチャーたちのアタックにもついていけるだろうし、自ら仕掛けることだって可能だ。だけどそれほどインパクトのある坂ではないので、最後の登り坂にかける可能性が高い。

他にゴールスプリントでいい勝負をしそうなのはギルマイストゥイヴェンアランブル。展開によってはウリッシラポルトあたりもスプリント勝負にかけられそう。コルトコスヌフロワファンアーヴェルマートクラーウアナスンあたりは早めに仕掛けてスプリンターたちからリードを奪えれば勝機あり。前哨戦に当たるメリーランドで逃げ切って優勝したファンマルクは好調そうで、距離を残してアタックをかける展開に持ち込みたいだろう。そうなれば、独走力のあるモホリッチコンラッドが絡むと面白い。どちらかというとスプリント勝負に持ち込みたくないAG2REFはいろんな仕掛けができる選手を揃えていて、面白いレース展開にしてくれるかもしれない。特にEFは降格圏に近いこと、チームの地元アメリカに近いことから意欲的なはずだ。他の候補は下記表を参照。

【結果】→ 予想以上に選手に好不調があったと感じる。そんな中、ゴールスプリントで勝負し、2-4位に入った優勝候補に選んでいた3人は見事だった。特にギルマイは、実績のある二人に真っ向勝負してファンアールトに先着し、間違いなく現在トップクラスのクラシックハンターになれると確信。本人もあの展開でファンアールトに先着するのは更に自信になったはず。引き続きGPモンレアルでの活躍を期待する。

 

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ゴール後のコスヌフロワとファンアーヴェルマートの歓喜。チームとしての戦い方も見事。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ ビッグネームでは、ポガチャルビルバオマルタンゴデュAイエーツGトーマスDマルティネスフルサンバルデバルギルが出場する。ポガチャルはじめ、強烈な坂で実力を発揮する選手たちなので、今回は優勝候補ではないだろう。世界選手権に向けた調子を占う意味では注目である。サガンは本調子にはまだ遠い(というよりも以前のような強さには戻れなく、現状の成績がサガンの今の実力という気もしてきた)。調子が良ければ、バジョーリパスクアロンテュルジスあたりは上位に絡むかもしれない。地元カナダ人では今季好調のユーゴ・ウルにも注目したい。ツールでの涙の初優勝から来季以降の複数年契約も手にし、数少ない母国レースでの活躍は期するものがあるだろう。なお同チーム・イスラエルギョーム・ボワヴァンもカナダ人である。

個人的な注目株はクイン・シモンズ(トレック)アレクサンダー・カンプ(トレック)。どちらもアメリカのチームであるトレックというのも注目ポイント。シモンズは母国アメリカに近いこともあり、張り切りそう。何度もアタックを試みるアグレッシブな走りを期待。カンプは今年のデンマーク選手権でピーダスンやコルトを抑えて優勝した遅咲きの28歳のスプリンター。トレックのエースはストゥイヴェンだと思うが、直近のブルターニュクラシックでは優勝したファンアールトに迫る3位となるスプリント力を見せた逸材。今年、何か殻を破った雰囲気がある。

ルヴェル(アルケア)も若手注目株。今年はワンデーレースで6回もシングルリザルトを連発し、直近のレースではデマールやフィリプセンに先着して優勝するなどプチ・ブレイク中の23歳。またアンドレア・ピッコロ(EF)も期待のニューフェイス。8月1日にEFに加入したばかりの21歳のイタリア人は、2019年のイタリア選手権、欧州選手権のTTジュニア王者。昨年アスタナと契約後、チームのごたごたもありシーズン途中でガスプロムへ移籍。しかしガスプロムが今年活動中止に追い込まれると6月にドローンホッパーに移った、若いのになかなかの苦労人である。EF加入後は積極的にレースに出場し、直近のメリーランドでは逃げグループに入り5位入賞など結果を出している。名前を覚えておいて損はない。

【結果】→ 12位ビルバオと7位Aイエーツが予想以上にもがいてゴールスプリントにも参加し、モチベーションの高さと好調さを見せた。20位バルデや10位バルギルも元気。特にバルギルは2日後のモンレアルの方がより相性は良さそうなので要注目。モビスターアランブルではなくガルシア勝負だった様子。5位に入りしっかりポイントを稼ぎ、ブエルタのマスと合わせたら降格争いから一歩抜け出しそう。EFは仕掛け続けてベッティオールが8位に入り、いろんな局面に対応するチーム力を見せた。クイックステップホノレがコスヌフロワを追走し6位に入るなど持てる力は十分使い好印象。

個人的に注目していたルヴェルカンプは上位に入り、特にルヴェルは想像以上のスプリント力を見せて、来年のクラシック戦線でも活躍しそうな雰囲気は好印象。シモンズもらしさを見せ、スクインシュも上位に入るなど、ブエルタで活躍しているピーダスンも含めてトレックの元気の良さも目立つ。GPモンレアルも期待できそうだ。

 

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3年ぶりに開催されたレースには大勢の観客が集まった。きれいな街並みも印象的。

 

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少し前に話題になったギルマイのヘルメット。今回がお披露目レースだったかも。