2022年シーズン振り返り【個人成績まとめ・全体】
今年のロードレースシーズンは終わりました。主役たちの激しいレース、期待の新星の出現、レジェンドたちの熱い走りと、例年以上に盛り沢山の印象的なシーズンで、最後まで楽しく過ごしました。そんな2022年シーズンを、何回かに分けていろんな側面から(個人成績・全体/チーム成績/個人成績・タイプ別/ベストレース/新戦力たち/印象に残った出来事、などを予定)振り返ってみたいと思います。
第1回目は、選手の個人成績・全体から。
◆チームの成績まとめはこちらから
◎個人成績・全体(UCIポイント)
◆年間1位〜30位まで
10月末時点の今年獲得したUCIポイントによる順位を表にした。国籍/所属チーム/獲得したポイント/今シーズンの勝利数/年齢(2022年12月時点・水色はヤングライダー対象)を一覧表にしている。また順位は昨年のものも記載したので、成長度合いの目安になるかと思う。また選手名の背景色は昨年から大きく成績を上げた選手は薄いオレンジ色に、成績を大きく落とした選手は薄いブルーにしている。
各チームの活躍したエースを中心に、上位は錚々たる顔ぶれ。個別にコメントするとキリがないので、印象的な活躍をした選手のみ軽く触れておく。
まず上位4名は別格。タディ・ポガチャル、ワウト・ファンアールト、レムコ・エヴェネプール、ヨナス・ヴィンゲゴー。ポガチャルは2年連続での年間1位。ファンアールトに終盤追いつかれそうな雰囲気もあったが、イル・ロンバルディアの勝利で突き放した。ファンアールトはクラシックを中心に上位の成績を続け、2年連続の2位(2年前は3位)。レムコは個人的MVP。特に終盤の強さは尋常ではなかった。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、ブエルタ総合優勝、世界選手権優勝と、モニュメント〜グランツールとタイプの異なるレースで結果を残した。ヴィンゲゴーのタフさとユンボ全員で掴んだマイヨジョーヌは今年最大のインパクトでデンマークでの街宣パレードは圧巻だった。*それぞれの活躍は別途記事を書く予定。
今期ブレイクした選手の筆頭は、6位のアルノー・デリー。ロット・スーダルの下部組織から今年デビューした20歳のスプリンターはワンデーレースを中心に9勝をあげ、最強スプリンター争いに名乗りを上げた。同年代のスプリンターで51位に入ったオラフ・コーイとともにスプリント勝負を大いに盛り上げるだろう。ロットは来季プロチームに降格することはほぼ確実だが、グランツールには全て出場できる。ユアンとのWエース体制でどのレースに出場するか不明だが、大きなレースで見てみたい一人。
若手ではビニアム・ギルマイも怪物級のポテンシャルを披露してくれた。勝利数は4勝にとどまったものの全てが印象的。アップダウンや荒れた路面も苦にしないタイプのスプリンターでインテルジェンスを感じるキャラクターも魅力的。特にマチューにマッチスプリントで勝利したジロstage10は個人的ベストレースのひとつ。マチューとファンアールトのライバルのひとりとして名勝負を繰り広げてくれるだろう。
ボーラの新戦力になった3人の飛躍は今年のプロトンの特記事項ひとつ。アレクサンドル・ウラソフは登りもTT能力も磨きをかけて好成績を連発。母国ロシアの状況もあり苦しい思いもしてきたはずだが、精神的な成長も見えたと思う。セルヒオ・イギータは完全に一皮むけた。調子にムラがあったものの、好調時の登りはベルナル級の強さを見せた。これでTT能力を身につけられたら一気にグランツールの主役にさえなれそうなほど。ジャイ・ヒンドレーの完全復活も驚き。ジロでは念願のグランツール初タイトルをボーラにもたらし、ブエルタでも好走を見せたことで実力であることを証明した。この若い3人を中心に来季のグランツールではライバルたちを脅かすだろう。
25位フアン・アユソ、29位カルロス・ロドリゲスのスペインの若手ふたりも輝きを放った。総合を争うチームであるUAEとイネオスのエース格として、更に成績をあげていくことは確実に思える。
◆年間31位〜60位まで
中堅クラスのエース〜サブエースクラスが多く入った順位の層。
若手で頭角を現したのは、ティメン・アレンスマン、オラフ・コーイ、マイケル・スケルモース。アレンスマンは、来季はイネオスに移籍する。個人的ブレイク株筆頭はスケルモース。一躍トレックの総合エースに名乗りを上げた。TTを得意とするのも頼もしく、来季はグランツールでも好成績を収めても不思議ではないほどの成長を感じた。
他では、フルーネウェーヘンが復活気配。ヤコブセンとの関係性も改善の兆しもあったのも嬉しいところ。マドゥアス、ファンヘステル、ヘルマンス、メインティス、ガルシアは一つ上のレベルにあがった印象。マドゥアスは来年モニュメントも狙えるんじゃないかと期待している。シクロクロッサーでもあるヘルマンスも、ファンアールトとゴール前で競る姿を多く見せるなど勝負強さを感じさせ、アルペシンへ移籍する来季はクラシックレースでさらなる活躍を期待したい。
成績を落とした選手では、アルメイダは少し気になるところ。クイックステップから移籍した選手は軒並み成績を落とす傾向にあり、奮起を期待。
◆年間61位〜100位まで
印象的な活躍を見せた若手。アクセル・ザングル、マウロ・シュミット、マティス・ルヴェル、アンドレアス・ピッコロ、マグナス・シェフィールドは、来季はエースとして臨むレースも増えるだろう。この四人に共通しているのはルーラー系の選手たちだが、スプリント力もクライミング能力も相当なレベルで持ち合わせているところ。逃げで独走することもできるし、どんな選手に成長していくのか楽しみな存在。また彼らはチーム内でも存在感を強くしている。ザングルはコフィディス内で2番目、シュミットはクイックステップで3番目、ピッコロはEFで2番目にランクしているすでに実力者。
◆その他雑感
ワールドチーム及びプロチーム合わせておよそ1000名なので、ここに表記した選手は上位1割と思っていい選手たち。チーム別にみると多く選手がいるのはイネオスが10人(うち3名カラパス/アダム・イエーツ/ファンバーレは移籍するが)、UAE、アンテルマルシェ、コフィディスが7人、ユンボ、アルケアが6人とチーム力の高さを見せた。少ないのはDSM、アスタナは2人。両チームともそのうちの一人はいなくなるのでさらに不安は募る。
またトップ100に入っていない主な選手は、アラフィリップ(昨年4位)、シャッフマン(昨年22位)、アスグリーン(昨年23位)、ホノレ(昨年27位)、リッチー・ポート(昨年30位)など。コルブレッリ(昨年5位)とベルナル(昨年6位)も怪我や病気の影響で今期は走れていないなど、怪我や感染症などのトラブルがあった選手もいるが、来季の復活を期待する。*コルブレッリとリッチー・ポートは今季限りで引退する。
勝利数では、ポガチャル16勝、レムコ14勝、ヤコブセンとコーイが12勝、ファンアールト、デリー、ピーダスン、フィリプセンが9勝、サイモン・イエーツが8勝と続く。
なお最後に記しておきたいのは、42歳で年間11位という好成績を残したアレハンドロ・バルベルデには驚くしかない。ちなみに昨年も年間で11位である。最後までトップライダーとして見事な走りを見せてくれたスペインの至宝に、最大限の敬意と感謝を贈りたい。