ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

世界選手権 2022(ロードレース・エリート男子)|リザルト

 

(なかなか終わらない、こっそりアップ)

9月25日に開催された【世界選手権(ロードレース・エリート男子)】。ビッグネームたちが勢ぞろいしたアルカンシェルをめぐる戦いは、今年一番輝きを放った男がその強さを見せつける独走劇になった。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

レースは序盤から海沿いの道を12名が逃げ、強豪国がメイン集団のペースを作る落ち着いた展開になるかと思いきや、中盤に早くも仕掛けたのは前回優勝国のフランスシヴァコフがハイペースで牽き始めると、ファンアールトポガチャルらの優勝候補の本命たちが加わった危険な追走グループが形成され、アラフィリップレムコがいるメイン集団は分断されてしまう。ウロンゴンの周回コースに入ると追走グループからさらにシヴァコフバッティステッラ5人がアタックをかけ、先頭グループに合流し16人で逃げる展開になると、分断された集団もひと塊りに。

12周するコースの8週目、フランスがまた仕掛ける。バルデを含む3人のフランス人のアタックに何人かの他国のエース級がついていき、最終的に22名の強力な追走グループができあがり、そのまま先頭グループを飲み込む。すると残り2周、そこからレムコがペースをあげると、ついていったのはルツェンコのみ。この危険なアタックは他の選手たちは牽制したのか、二人は後続とどんどん差を広げていく。残り25km、登りでレムコがペースをさらに上げると、もうルツェンコにも追う力はない。優勝の行方はこの時点で決まってしまった。ここまで数々のレースで見せてきたレムコの独走劇は、世界一を決める舞台でも強さを存分に見せつけ、自転車大国ベルギーからの10年ぶりのアルカンシェルが誕生した。

レースは単独で逃げるレムコを追走していた5人が表彰台を目指して懸命に粘るも、ゴール手前でスプリントをはじめたメイン集団に飲み込まれる。なだれこんだ集団のスプリントは、ラポルトマシューズファンアールトと続き、終わってみればパンチャー・スプリンター勢が強さを見せる結果になった。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 優勝候補は、僕がブックメーカーだとしたら、ポガチャルファンアールトエヴェネプールが3強で、続くのがファンデルプールマシューズアラフィリップになるだろう。他にもオッズが低くなりそうなのは、ギルマイコスヌフロワ、彼らは今回のコース適性でみても、過去の実績でみても、直近の状態の良さをみても優勝候補にあげられるだろう。小集団スプリントになった場合強そうなのは、ファンアールトファンデルプールマシューズギルマイ。登れる選手たちの彼らでも振り落とされるかもしれない。ポガチャルを中心に繰り出されるアタックにどれふぁけ耐えられるか。またポガチャルレムコの二人は残り40kmくらいでも独走もありえる危険な存在なのは、ストラーデビアンケやサンセバスティアンで実証済み。直近のカナダのレース(ケベックモンレアル)はコース設定も近く参考になると思うが、ポガチャルは、ファンアールト、マシューズ、ギルマイは好調ぶりを見せた。中でもコスヌフロワは優勝し、状態はよい。やや不安材料としては、レムコブエルタでの疲労アラフィリップブエルタの落車の影響(痛みはなくても調整不足)、ファンデルプールはツールから続いた体調不良といったところ。ただし、ファンデルプールは調子が悪くてもワロニーで優勝しているが。

他に上位に絡みそうな有力選手は、個人TTでも好調さを見せていたヘイター、登りさえしのげればスプリントで勝負できるトレンティンクリストフ。コースに向いていて隙あらば優勝もありえそうなモレマホノレマドゥアス。今年はクラシックでも上位常連で侮れない存在のロータキュングイギータ。この3人はスプリントでは劣る点では優勝候補にはあげづらい。

なお、個人的な妄想込みの優勝予想は、ファンデルプールマドゥアス、調子がよければレムコ。夢枠はロータカンプである。デンマーク選手権でピーダスンを下して王者になったカンプはアムステル5位、ブルターニュでファンアールトに迫る3位と、万馬券になりうるだろう。

他の候補は下記表を参照。名前の背景色が薄いブルーなのはブエルタを完走した選手たち。疲労からの回復具合が気になるところ。

【結果】→ やや荒れ気味の展開になり、トップ10のうち予想したのは6人のみで、あまりいい予想とはいえなかった。レムコが強かったのは間違いないが、やはりファンアールトを全員が強く警戒していたことで、パンチャーやスプリンターが生き残れたという気もするし、ポガチャルマデュアス等が勝つにはいまひとつ山が優し過ぎたコースだったのかもしれない(4位で残念と思ってしまうファンアールトも大概だが)。結果だけを見るとオーストラリアにはユアンがいたら、デンマークにはピーダスンがいたらとも思ったがレムコには敵わなかっただろう。そして同じような展開だった昨年の欧州選手権、独走をはじめたレムコにただ一人ついていってゴールスプリントで差し切ったコルブレッリの凄さを改めて感じた。

それにしても、マチューは残念としかいいようがない。レース前夜、宿泊先で隣の客(女の子)とのトラブルにより朝方まで警察に拘束されるなど散々な状態ではレースどころではなかった。わずか30kmほど走ったところでリタイア。彼は今年はうまくいかないレースが多かった。

 

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ 上記優勝候補以外にも多くの実力のある選手が揃ったが個別でコメントしだすとキリがないので少しだけ記載する。名前の背景色が薄いブルーなのはブエルタを完走した選手たち。

国別でいうとベルギーが頭一つ抜けて強い印象。オーストラリアオランダもいい選手が揃っているが、一番面白いのはフランス。2連覇中のアラフィリップはおそらくコンディションは万全ではなく厳しい。しかし直近のケベックでファンアールトたちを蹴散らして痛快な勝ち方をしたコスヌフロワ、キャリア最高の状態のマドゥアス、フランス王者のセネシャル、スプリント勝負もいけるラポルト、登りで差をつけられるバルデ、彼ら全員がタフなアップダウンのコースに強くスプリント力もあり、どんな展開になっても勝負できる選手が揃っている。パシェシヴァコフアルミライルとアシストも実力派。昨年も終始攻め続けたフランスチームは積極的なレースをするはずで、注目だ。

他に個人的な注目選手は、スケルモースデンマーク)とヘルマンス(ベルギー)。今季大きくブレイクしたこの二人は上位に入っても少しも不思議ではない。

日本からは新城幸也が14回目の世界選手権。オーストラリアは彼が日本人最高の9位に入った縁起のいい場所でもあり、好成績を期待したい。

【結果】→ 予想していたベルギーフランスオーストラリアで表彰台。最終的にラポルトで勝負したが、フランスが終始仕掛けたのも予想通りだった。フランスにとって誤算だったのは中盤で仕掛けた追走グループにレムコを乗せてしまったこと。逆に言えばレムコ(ベルギー)はしたたかだった。そしてなんだかんだと7位に入ったサガン、追走グループで根性で粘って10位に入ったスケルモースは見事。

なお単独で参加していたユキヤも2位グループと40秒差の集団でゴール。出場選手中最多の出場回数は誇っていい。