ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

【2023年のチーム】移籍まとめ

 

2023年のレース展望、その2。選手の移籍状況まとめ【2022年12月27日現在】

アスタナ(カヴとボル)バーレーン(Dトゥーンスの漏れ)の情報を追記しました(2023.1.22

今年のオフシーズンも多くの移籍があった。多くのビッグネームたちの引退があればそれと同じ人数の新人加入もあるわけで…。これから1〜2ヶ月ほどは、どの選手がどこのチームか混乱することがある(ロードレースあるある)ので、今回は移籍した選手の確認・整理とともに、UCIポイントを参考にしながら、チーム毎の戦力の変化について考察してみる。なお加入・脱退した選手は現時点(12月27日)の情報として全員記載しているが、まだ去就が決まっていない選手もあり、そちらはシーズンが始まる1月半ば頃に追記したいと思う(例えばカヴェンディッシュはアスタナ入りの噂はあるが正式発表はされていない)。テキストについては、全員コメントしていくと膨大な量になってしまうので、有力選手と期待の若手等に絞って記載していく。*戦力アップorダウンの評価は2022年に獲得したUCIポイント上でのものなので、あくまで参考程度です。*2023年1月4日、一部の数字が間違えていたので修正。

 

 

 

 

チーム紹介は移籍人数が少ない順で。後半に向けて移籍人数の多いチームになるので、文章量も多くなっていきます。

◆表について:各チームの左側は加入選手、右側は脱退選手で、右側の数字は2022年のUCIポイント。背景が薄いブルーの選手はネオプロ(プロ1年目)。チーム名の右の数字はUCIポイントの加入分(+)と脱退分(-)の合計

 

◆モビスター チーム(▼戦力ダウン)

出入りの人数は一番少ないチームだが、長年エースを務めたバルベルデの穴は巨大だルーベン・ゲレイロガビリアと実力者二人が加入したが、ポイント面では全く足りないだろう。チームとしては昨年からステージ総合だけでなく、スプリントや北クラシックにも力を入れていく姿勢が強まっている印象。総合成績におけるバルベルデの穴はマスをはじめとした既存戦力からの上乗せで賄うしかなさそうだが簡単ではない。

 

AG2R シトロエン チーム(▼戦力ダウン)

主要選手はほとんど変わっていないが、昨年復活し多くのポイントを稼いだユンゲルスと次のエースとして期待していた若手のシャンプッサンが抜けたのは少し痛手。加入したのは下部組織含む20歳前後の若手ばかりで育成・成長に期待のシーズンになる。

 

◆ボーラ・ハンスグローエ(▼戦力微減)

総合系のサブエース格のケルデルマンの代わりにはユンゲルスが十分はまりそう。ベテラン、若手と地に足のついた補強の印象で、ウラソフ、ヒンドレー、イギータと結果を残した若いエースを中心に今期構築した戦力で同様に戦っていく明確な意志を感じる。

 

コフィデス(△戦力微増)

中心選手の移籍はなく、このオフは一番変化の少ないチーム。退団したのはベテラン多めで(うち二人は引退)、加入したのは若手中心のため、チームの若返りを進めている印象の補強。

 

◆スーダル・クイックステップ(△戦力アップ)

カヴホノレスティバルの穴をメルリールで埋める。獲得したポイントだけでいえばお釣りがくるくらい。埋めきれない分は2022年に成績を落としたクラシック班のメンバーを復活させることがチームの使命だろう。ヒルはレムコの総合用アシストにするならば、UAEでのマイカくらいの戦力になると感じられる。カスパ・ピーダスンはリードアウトトレインとしての戦力か。やや懸念があるとすれば、ケイセティールスという二人の重要なリーダー役の存在をカバーできる選手が育つかどうか。

 

◆EFエデュケーション・イージーポスト(△戦力大幅アップ)

オフシーズンの勝ち組のひとつ。総合エースのカラパス、ワンデーでのエース格の働きを期待できるホノレの加入はゲレイロヴァルグレンの脱退に大きくお釣りがくる。中南米色がより強くなった印象もあり、チャベスやウランにも好影響があるかもしれないし、うまくかみ合えば2023シーズンは要注目のチームになるかもしれない。

 

ユンボ・ヴィスマ(△戦力大幅アップ)

オフシーズンの勝ち組のひとつ。すでに2022年一番成功したチームだが、更に隙のないチームになりそうだ。ファンバーレはクラシック班のリーダー的存在としてファンアールトをさらに手厚くサポートするだろうし、トラトニクスロベニア代表同様にログリッチをフルアシストするだろうし、ケルデルマンヴァルタも頼りになるサブエース的なアシストになれそう。選手の活かし方がお手本のように明確な補強で、チームのマネジメント力の素晴らしさを感じる。

 

◆アスタナ・カザクスタン(▼戦力ややダウン)

かつてトップチームのひとつだった面影はほとんどなく別のチームになってしまった感がある。既定路線だったニバリの引退はともかくMAロペスの解雇は戦力的には非常に痛手で、2022年のチームのツートップを失った。しかしMAロペスについては実力はありつつもトラブルメーカーだったのは今にはじまったことではないので、ここまで来るとワールドチームでの活動は厳しいだろう。新戦力としては、出戻りのルイスレオン・サンチェスと昨年トレイニーで加入していたチュジャンシリツァなどであまり多くは望めないと思っていたが、年明け1月中旬にB&Bホテルズの解散により去就を心配されていたマーク・カヴェンディッシュケース・ボルが噂通り加入することが発表された。ツールの通算最多勝の更新に向けてモチベーションは高い。昨年はRRでイギリス王者にもなり、トップクラスの実力派健在。肝心のトレインは強力とまではいえないが、ボルを入れたことは、チームとしての期待度は強く感じる。カヴでスプリント班は強化されたが、GC含む他のレースの弱体化は否めず、よりチーム強化は望まれる。

 

◆トレック・セガフレード(△戦力微増)

主要選手の移動はなく、昨年並みの成績は期待できそう。デンマーク王者になったカンプ、レースによってはスプリントのエースを賄っていたモスケッティの抜けた穴はテトファツィオンヴァチェクで十分補えると予想。テトファツィオンはギルマイと同じくエリトリア出身の期待の若手クライマーで、2023年はセンセーションを起こす可能性もある。ヴァチェクも2022年に4年契約をしたスケールの大きな20歳の若者。チバウ・ニスも昨年のU23欧州王者と、既存戦力で台頭してきたスケルモースやシモンズも含めて、若手の成長が非常に楽しみなチームになってきた。

 

◆イネオス・グレナディアーズ(▼戦力大幅ダウン)

個人的な見解としては、どこよりも優れたブレーンがいるチームとしては残念な移籍の動きだったと感じる。チームの稼ぎ頭の7人中3人も(カラパスAイエーツファンバーレ)失い、その穴を埋める存在になりえるのは一人だけ(アレンスマン)。2022年の特に後半は相当な進化を見せたが、実績というよりは将来性だろう。コナー・スウィフトはヴィヴィアーニのリードアウト役だろうか。リッチー・ポートエドワード・ダンバーの抜けるアシストの穴も決して小さくない。レオ・ヘイタージョシュア・ターリングと非常に才能豊かな将来のエース候補を補強したのは投資として理解できるが、チーム全体が経験値の少ない若手ばかりに感じられて、心許ない。現在はチーム内の成績上位10名のうち7人がヤングライダーである。数年後には巨大戦力になる可能性を感じるが、ここ2-3年にプロトンの中心になるには、怪我明けのベルナルの復活が強く望まれる。

 

◆アルペシン・ドゥクーニンク(=戦力ほぼ変わらず)

エースのひとりメルリールの分をグローブスクラーウアナスン、頭角を現したクライマーのジェイ・ヴァインシュールト・バックスが抜けた分を、ヘルマンスニコラ・コンチで補う。エース格が抜けた分は的確に埋めた印象。新戦力たちはマチューやフィリプセンのアシストとしても心強いメンバーにもなり、ワールドチーム一年目も2022年同様の好成績を期待して良さそうだ。少々気になるのは、加入した選手で若手はグローブスとネオプロで22歳のプラウライトしかいないところだが、それなりに実績のある選手を中心に実利のある補強を狙っているのは理解できる。

 

バーレーン・ヴィクトリアス(▼戦力ダウン)

戦力としては、昨季途中でイスラエルに移籍したDトゥーンスと、コルブレッリ(ポイント上では移籍による変化は少ないが)の引退による穴は大きい。昨年はシーズンの大半を欠場したためポイントは小さいが、彼の代わりが務まるエースは見当たらない。またトラトニクについてもポイント以上に、チームを支えた牽引力は代わりが務まる選手も不在である。補強したのはパスクアロンニキアス・アルント以外は経験の浅い若手中心のため、育成を見据えたメンバーといえる。その中ではミホリェビッチは化けそうな雰囲気を感じ、2022年にブレイクした若手たちとともに成長を期待。実績のある総合系の選手は揃っているが、やや年齢層高めでもあり、ここ数年で世代交代をすすめていく時期にきているかもしれない。

 

UAE チーム エミレーツ(△戦力大幅アップ)

オフシーズンの勝ち組のひとつで、このオフもえげつないほどの(言い方はよくないが)積極的な補強を敢行した。総合エースを張れるAイエーツは、仮にポガチャルやアユソのアシストになるならば、とんでもない破壊力を秘めている。ウェレンスヴァインアルデンヌクラシックでも勝利を狙える力があり、他のメンバーも中堅どころのアシストとしては申し分ないといえる。ちなみに加入した選手の2022年勝利数の合計は10勝に及ぶ。彼らがうまくはまればユンボを超えるナンバーワンチームになれるポテンシャルは十分。なお強化を進めつつあったスプリント班はガビリアの退団もあり一休みか。このオフはクライマー中心に総合成績をあげることに専念してきた印象。

 

◆グルパマ FDJ(▼戦力微減)

中心選手は残っているので大きな戦力変化はないだろう。成長が感じられた若手のヴァルタや頼りになるベテランのライシェンバックの退団は少し痛く思えるが、それでも来シーズンが非常に楽しみな移籍を行った。加入する7人全員が20歳前後の若手で下部組織の育成チーム上がりと味のある補強。そのうえ6人はネオプロだが、ジュニアやU23のレースで好成績を残してきた強者揃いで非常に将来性を感じる面々。チームの平均年齢も一気に若返り、組織的なチーム編成が上手に運営していると感じられ好印象。彼らの半分でも戦力化できれば、今後数年を見越したチームを構築できる可能性を秘めている。

 

◆チーム DSM(▼戦力ダウン)

このオフも戦力の流出が止まらない。総合エースとして頭角を現したアレンスマン、ワンデー中心にエースとして好成績を残したクラーウアナスン、地味ながらチーム内で6番目にポイントを稼いでいたニキアス・アルントと主要メンバー3人が抜けたのは痛い。新戦力ではペヴィンヴァンハウケは貴重な戦力となるだろうが、彼らの穴を埋めることは無理だろう。また新戦力では6人が20歳前後のネオプロとして加入で、ワールドチームで一番若いチームはさらに若返る。毎年新しい戦力が台頭してくる不思議なチームとして、そこは期待もしている(悪く言うとそれしか期待できない)。資金面でかなり苦しそうなニュースが聞こえてくるのは心配なところ。

 

◆チーム アルケア・サムシック(▼戦力微減)

主要メンバーの移籍としてはコナー・スウィフトの抜けた分はモッツァートの加入によりスプリント班は強化できた。ただしキンタナの抜けた総合勢の穴は塞ぐのは難しいだろう。シャンプッサンビールマンクリスチャン・ロドリゲスは成長を感じさせる中堅選手だが、キンタナに変われる選手にはなりえない。ある程度はワンデー中心に勝利を狙う戦い方が増えていきそうだ。キンタナの去就は未定だがコロンビアのCTチームで走るとの噂は流れている(昨年の禁止薬物使用によるツール失格の影響だろうか、キンタナを所属させたチームにツールの出場資格を剥奪するという警告をされてる模様)2022年はかつての力を感じさせるような成績を残していただけに残念である。またキンタナの弟を含む3人のコロンビア人が退団するのもキンタナ余波とみられる。

 

◆チーム ジェイコ・アルウラ(△戦力アップ)

今オフは10人と、2番目に多くの選手を入れ替えたチーム。脱退した主要メンバーとしては第2エーススプリンターに成長したグローブス、山岳での重要なアシスト役をこなしたディオン・スミスニック・シュルツ。新戦力の期待株は23歳のイタリア王フィリッポ・ザーナエディ・ダンバーは勝利を狙えるクライマーで、デマルキポストルベルガーもステージレースの経験豊富なベテランとしてアシストの充実を図れるだろう。スティバルはシクロクロッサーでもあり、北クラシックに強く勝利を狙える。スプリント班は弱くなったがステージ総合に向けては効果的な補強をした。5人の30代半ば以上のベテランが抜けて、5人の20代前半の若手が入ったのは若返りの一環か。派手ではないが、手堅くチーム力を向上させるような好印象。欲を言えばSイエーツクラスの総合エースがもうひとりいるとチーム力は格段にあがるのだが。

 

◆アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ(▼戦力大幅ダウン)

2022年はセンセーショナルといえる活躍をしたが、一気に戦力が抜けてしまうのは、かなり不安でもある。クリストフヘルマンスヒルポッツォヴィーヴォの4人分の穴は半分も埋まらないかもしれない。新戦力のテウニッセンルイ・コスタディオン・スミスカルメジャーヌボニファッジオは中堅どころで、頼りにはなるが勝利を狙えるエースではないだろう。脱退したうちの6人は30代半ば超えで、加入する5人は20代前半と、若返りを図るのは好材料数年先を見据えたチームの基盤作りとしてのシーズンになるのかもしれない。

 

 

*上位のプロチームは後日追記予定。

 

★2022年のトーム成績はこちら(ページ内に個別チームまとめのリンクあり)

 

★2023年のチームプレビューはこちら(個別チームのリンクあり)

jamride.hateblo.jp