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チームと選手の成績チェック【1月終了時】

 

今シーズンも毎月末にチームと選手の成績まとめを記していこうと思ってます。野球で言えばまだまだオープン戦といったところではあるが、すでに好調なチームや選手は現れている。現時点での成績をチェックしてみた。

*表のUCIポイントおよび勝利数は2023年第4週(1月29日)までの集計。サウジツアー以降は入っていません。

 

 

 

 

◎チーム成績UCIランク・勝利数)

今季はレースも1月から始まり、昨季よりも早い仕上がりをしている選手が多くいる印象である。そして昨年下位に沈んでいたチームの元気の良さが目立ち、チームの勢力図にも少し変化が見られる。*表はUCIランク順で、ワールドチーム18チームと昨季上位の4つのプロチームで構成。UCIランクと勝利数は2022年分もグレーで表記した。

 

まず取り上げたいのはアンテルマルシェの躍進。いや、快進撃。昨年5位になるなど年間を通して好成績を残しつつも多くの主力が退団したため戦力の低下を懸念していたが、現在は絶好調。なんと世界ランク1位に輝いている。もちろんチーム史上初の快挙であり、移籍加入した選手たちが早々に結果を出しているのも好印象。春のクラシックシーズンも侮れないチームとして存在を強くしていきそうだ。

他に躍進が目立つのは、ジェイコ・アルウラー(16位→3位)、EF(18位→7位)、DSM(19位→11位)。ただしジェイコは母国オーストラリアのレースで多くの点数を稼いだこともあり、このまま好調が続くかどうかは様子を見てみないといけない。EFとDSMはとてもチーム状態がいい。どちらも昨季10勝前後だったのに、すでに3勝をあげた。どちらも若手や新戦力が結果を出しているのも好印象。このまま好調を続けていきたい。そして今季プロチームに降格したイスラエル(16位→3位)とロット(16位→3位)も元気がいい。昨年好調の選手が引き続き活躍している。降格になってしまったことが結果的に両チームの積極的な姿勢を生み出しているように見えるのは少し皮肉でもあるが、ワールドチームへの再昇格を期していることは窺える。ワールドツアーのステージレースで総合優勝すると500pt入るので順位はこれから変わり続けるのは前提だが、上位にいるチームはシーズンへ良い入り方をしたのは間違いない。*ちなみに2月の第1週はモビスターとトレックが好調で、上位に上がりそう。

この表では未勝利になっているが、アスタナウーノエックスは今週勝利をあげているので、残る未勝利ワールドチームはAG2Rアルケアグルパマアルペシン(プロチームではイスラエルも)。主力が走り始めれば状況も変わると思うが、はやめに勝利はしておきたいところ。グルパマユンボアルペシンは昨年もスロースターターだったので、ここまでの成績は想定の範囲でもあるが、アルケアアスタナはかなり厳しいシーズンになるかもしれない。

 

 

◎個人成績UCIランク)

ランキング上位30名を表にした。まだレースを走っていないビッグネームたちが多いのでこれから順位は大きく変わってくると思うのと、ワールドツアー(ツアー・ダウンアンダー/カデルレース)のポイント(以下ptと表記)が大きいので上位はそのレースでの上位者に偏り気味なのは留意が必要(上位11位中10人=ホーセンス以外はワールドツアーのpt)。

そんな中で印象的な活躍をした選手は、まずはジェイ・ヴァイン。点数ではぶっちぎりだが、内訳はオーストラリア選手権ITTの優勝とダウンアンダー総合優勝および3つのステージの表彰台のptである。UCIランクでも39位まで上昇した。昨年ブエルタで登坂能力は証明しているところにTTとGCでも類稀な力があることを証明し、参加を予定しているジロでもエースを張る可能性も出てきた。アンテルマルシェからは5人も入っているのは見事と言うほかない。勝負できる選手が多いことと、そのうちのギルマイ以外の4人はこのひと月弱で昨年一年分のptを稼いでしまった(ルイ・コスタは表では130ptだが、今週末には70ptほど加算される見込み)。特に衝撃だったのはコーブ・ホーセンス。チャレンジ・マヨルカで逃げグループから抜け出しておよそ20kmをひとりで逃げ切りプロ4年目で初勝利を挙げると、翌日に同じようなレース運びで2勝目をあげた。これで3レースを走り、7位・1位・1位。昨年までは名前しか知らなかった選手だが、大きく飛躍しそうだ。もうひとりユーゴ・パージュも覚えておくべき。ダウンアンダーの3ステージでシングルリザルトを残すとカデルレースではマシューズやユアンにスプリントで競り勝ち2位に。プロ2年目の21歳の初勝利は近いと感じる。マリウス・マイヤーホーファーはプロ初勝利がカデルレースというラッキーボーイ。一発屋にならずにこのまま勝てるようになるかどうかは自分次第だが、DSMは実績がなくても勝負できる若手ばかりなのでチャンスは多いはず。

この中で勢いのありそうな若手の名前をあげておくと、イーサン・ヴァーノンクイックステップ/22歳/2レースに出場し、2位・1位)、アントニオ・ティベーリ(トレック/21歳/ダウンアンダーで総合8位・ヤングライダー2位)、コービン・ストロングイスラエル/22歳/ダウンアンダーの2つのステージとカデルレースでトップ10)、そしてすでに昨季から台頭しているが、マグナス・シェフィールドマウロ・シュミットアクセル・ザングルビニアム・ギルマイはさらに飛躍しそうな雰囲気が充満している。

ここまでの傾向では、オーストラリア人の活躍が目立つのは国内選手権と二つのワールドツアーがあったということで予想の範囲内。またトラブル続きでコンチネンタルチームに入ったMAロペスはトップクラスの実力はあることは実証したといえるが、果たしてヨーロッパに戻ることはできるだろうか。クリーンであることを証明できればいいのだが前途は明るくはない。ビルバオクラークガンナコカールヒルはこの時期にもかかわらず仕上がりがいい。ルイ・コスタは復活しそうだ。10年前のアルカンシェルは再び輝けるか。彼らベテランたちも(ガンナ、ヒルシは若い)充実したシーズンの気配あり。

最後にもう一人、どうやらルノー・デリーは昨年以上の怪物に成長している。下位クラスのレースなのでptは低いのだが、今季ここまで5レースし3勝(2勝は2月なので表では1勝分しかカウントしていない)。その勝ち方がまたエグい。登りスプリントでピーダスンと真っ向勝負して勝つとか、アシストがいない中でアタックをつぶし、自らアタックし、最後にはゴールスプリントで勝つとか、理解不能の強さの領域に入り始めている。3月からはミラノ〜サンレモをはじめ、いよいよビッグレースに出場予定。彼の強さは、無敵と思われてるファンアールトの最大のライバルになる可能性をも感じさせる。

 

レースカレンダーはまだはじまったばかりで、レースはこれから大きくなっていく。3月にかけてビッグネームたちが登場してくると主役たちも様変わりしていくだろう。今年も若手の成長や苦労人のブレイク、ベテランの復活など多くのドラマを期待している。