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ティレーノ〜アドリアティコ 2023|出場選手まとめ

 

3月6日からイタリアで開催される7日間のステージレース【ティレーノ〜アドリアティコ】。愛称は「ラ・コルサ・ディ・ドゥエ・マーリ(二つの海を結ぶレース)」。イタリア半島の西から東へ繋ぐコースがその由来だ。

日程が重なるパリ〜ニースと並んでグランツールの前哨戦として重要なレースに、今年も豪華なメンバーが集まった。毎年厳しい山岳が設定され、代表的なクライマーたちが総合優勝を狙い、ストラーデビアンケにも出場したクラシックレーサーやパンチャーたちが鎬を削る。

*優勝候補及び有力スプリンターは10人まで(本命は3人)、それ以外の有力選手は30人まで絞っている→すみません、増えちゃった。だって削れないんだもん。*選手が変更の可能性あり。表内の選手のUCIランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

◎ステージプロフィール

◆Stage1(3月6日/個人TT):Lido di Camaiore  >  Lido di Camaiore

 距離11.5km|獲得標高3m

レースは個人TTで幕を開ける。総合優勝を狙う選手は初日から遅れないようタイムが求められる。とはいえ、起伏の全くない平坦なコースで距離が短いため、大きなタイム差はつかないだろう。TTスペシャリスト向き。有力選手(順不同):ガンナファンアールトシェフィールドアルミライルミホリョビッチネルソン・オリベイラボドナルなど。総合勢では、アレンスマンアルメイダウラソフログリッチはコンディション次第か。マチューも侮れないが、ストラーデビアンケを見るとトップコンディションにはまだ遠い印象。

 

 

◆Stage2(3月7日/丘陵):Camaiore  >  Follonica

 距離210km|獲得標高1592m

200kmを超える長い丘陵ステージだが、ゆるやかな山岳がいくつかある程度でスプリンターたちの勝負になるだろう。ただゴール前にあるちょっとした坂(丘)でパンチャーが仕掛けるとスプリンターたちは遅れるかもしれない。ステージ優勝を狙いそうな強烈なアタッカーが多くいるからだ。マチューアラフィリップあたりにチャンスがあり、(スプリンターで選んだ)ギルマイファンアールトももちろん強い。*ステージ優勝を狙えそうなアタッカー候補は《その他の有力選手》欄に記載。

 

◆Stage3(3月8日/丘陵):Follonica  >  Foligno

 距離216km|獲得標高2601m

前日からさらに距離が伸び、アップダウンも多くなる丘陵ステージ。5%ほどの登坂なので、スプリンターが振るい落とされるほどではない。終盤細かいアップダウンが多いので逃げ屋向きのステージだが、ここまでのステージではタイム差がついていないはずなので、集団スプリントになる可能性は高いだろう。

 

◆Stage4(3月9日/丘陵):Greccio  >  Tortoreto

 距離218km|獲得標高2503m

3日連日の200km超えのロングステージが続き、ここまでの消耗具合は気になるところ。獲得標高もそこそこあり、残り50kmから周回するコースにある坂は大きくはないがそれなりの登坂になりそう。stage2で名前を挙げたパンチャーたちが制するステージになると予想。総合勢も先頭集団にはいるはずで、調子がよければログリッチが強そうなステージだが、どうなるだろうか。もしかしたら総合勢でも脱落する選手は出てくるかもしれない。

 

◆Stage5(3月10日/山岳):Morro d'Oro  >  Sarnano-Sassotetto

 距離168km|獲得標高3850m

今大会のクイーンステージはスタート直後から起伏ばかりで休む暇がなく、最後の登りはおよそ12km。獲得標高は3850mと、総合争いをするクライマーのために用意されたようなステージ。

 

◆Stage6(3月11日/丘陵):Osimo Stazione  >  Osimo

 距離193km|獲得標高3610m

ゴール地点の登りは4回登る。総合勢の勝負はこのステージで決まる可能性が高いので、ライバルたちをふるい落とすようなレース運びをするチームが現れるはず。前日のステージの結果次第だが、バーレーン、ボーラ、イネオスなど総合上位に絡む選手が複数いるチームが仕掛けると面白そう。短い登りフィニッシュは、マチュー、アラフィリップ等のパンチャーの大好物。

 

◆Stage7(3月12日/平坦):San Benedetto del Tronto  >  San Benedetto del Tronto

 距離154km|獲得標高1660m

最終日にしてようやくスプリンターたちの集団スプリント勝負になりそうなステージだが、スタート直後からの登坂は決して楽なものではない。そこさえしのぎ切れれば、トレインの組めるチームのスプリンターが有利か。

 

 

◎総合優勝候補

昨年総合優勝を争ったポガチャルとヴィンゲゴーは同時に行われているパリ〜ニースに出場している。2年連続で3位だったミケル・ランダにとっては大きなチャンスになるだろう。TTがあまり得意ではないランダにとっても今回はチャンスだ。同じくTTが得意ではないエンリク・マスベン・オコーナーもチャンスだといえる。ボーラはTTも得意なウラソフと強力なクライマーのヒンドレーのWエース体制だろう。二人とも昨年と比べて調整中にみえるので、コンディション次第だろうか。UAEも山岳に強いアダム・イエーツとTTも得意なジョアン・アルメイダのWエースだろうか。イネオスもいいメンバーを揃えているが、誰がエースなのかわからない(僕は今年はほとんどのレースで読み違えている)。今年調子が良さそうなゲイガンハートにをエースと仮定したが、ちょっと自信がない。それ以外の総合エース候補は、ルツェンコピノチッコーネは今年は「ステージ総合は狙わない」という発言もあったので、トップ10からは外れると予想。バルギルロータも強いが、どちらかというとワンデーに特化していきそうな気配。ヒュー・カーシーは昨年から少し成績は下降気味。ブイトラゴはかなりのクライマーになれそうな気配があり、ランダとの兼合いによってはエースとしての働きも期待している。本来なら優勝候補の一番手に据えたいプリモシュ・ログリッチは、昨年の怪我からの手術明け初レース。復帰予定だったレースを前倒しにして急遽出場が決まった状態のため、「総合優勝は狙わない。ジロのための調整レース」との発言を受けて優勝候補からは外した。とはいえ、走ってみたら結構いけるので結果的に優勝しちゃった、なんてことも十分ありそうではあるが。なのでユンボからは個人的に期待値の高いアッティラ・ヴァルテルを優勝候補にしてみた。他の上位候補は下記表を参照。

 

 

◎スプリンター

ピュアスプリンターの勝負になりそうな平坦ステージは、stage2、stage3と最終日のstage7か。スピードではフィリプセンヤコブセンフルーネウェーヘンが3強と言っていいが、ともに山岳が多いコースでどれだけ脚を残せているかが勝負を分けそう。そういう意味では登坂も苦にしないギルマイファンアールトガビリアは強力に思える。ただし、ファンアールトはシクロクロスにほぼフル参戦した疲労具合とストラーデビアンケを直前で出場回避したコンディションは気になるところ。初日のTTの様子をチェックしておきたい。登りの絡むスプリントはサガンが得意とするところだが本来の力は取り戻せていない印象。それでもトップ10には絡んでくるあたりはさすがでもあり、期待している。カヴェンディッシュニッツォーロもトップコンディションとは言いづらい。逆に今季好調そうなのは、メーウスコンソンニマイヤーホーファーモスケッティモラノもUAEツアーではステージ優勝した。

 

 

◎その他の注目選手

総合優勝候補から漏れたが期待値の高いのはイネオス。昨年ブエルタを含む4つのステージレースでトップ10に入った成長中のアレンスマン、今年すでに二つのステージレースで総合表彰台にあがっている覚醒気配のガンナ、ストラーデビアンケで独走勝利したピドコック、ダウンアンダーで表彰台まであと一歩だったシェフィールドと、総合上位を狙えそうな選手は多い。厳しい山岳ではトップクライマーからは遅れそうに思えるが、ついていければ総合上位の可能性はじゅうぶんにある。同様にユンボケルデルマンベノートもチームの状況次第で可能性はありそう。他にはガルカルーゾツインマーマンクリスチャン・ロゴリゲスハルム・ファンハウケも総合上位に入る力はありそうだ。丘陵ステージで優勝を狙いそうなアタッカーは、マチューアラフィリップマドゥアスピドコックコスヌフロワバッティステッラアランブルバジオーリビュルゴドーとバラエティに富んだ強力な選手が多くいる。彼らがレース終盤の坂でアタックをしたらスプリンター勢は要注意だ。

 

 

◎過去の総合成績(2022年、2021年、2020年)

参考までに過去3年間の総合成績10位と各賞を表にした。所属チームは今季との比較も。複数回トップ10に入っているのは、ポガチャルミケル・ランダが2回づつ。

出場選手中、過去の総合優勝経験者はログリッチ(2019年)、クフィアトコフスキ(2018年)、ファンアーヴェルマート(2016年)。

 

 

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