ミラノ〜サンレモ 2023|出場選手まとめ
いよいよヨーロッパに春がやってくる。「ラ・プリマヴェーラ(イタリア語で春)」と人々に呼ばれる【ミラノ~サンレモ】は、第114回目を迎える伝統的なレースである。レースの特徴としてはすべてのロードレースの中で最長距離であること(今回は294km)と、他のモニュメントと比較して坂が少なめなこと(獲得標高2154m)でスプリンターが勝負できること。そのため多くのスプリンターたちが“ロードレース人生で最大のタイトル”と位置付けている憧れのレースだ。出場する有力選手と過去の成績を簡単にまとめた。
ちなみに300kmとは、東京から名古屋(か新潟か仙台)の近くまで行ける距離。彼らは7時間弱かけてバイクで走っていく。終盤まで退屈なんて言ってはいけない。
*優勝候補は10人(本命は3人)、その他有力選手は30人までを目安にしています。が、モニュメントなのでちょっと人数多いがお許しを。*情報は3月17日現在。出場選手は変更の可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース概要
今年は長い歴史ではじめてミラノを出発しないルートになった(ミラノ〜サンレモじゃなくなるじゃないかとか言わないように)。アッビアーテグラッソを出発したプロトンは南下し、レースの中盤にトルキーノ峠を登った後、地中海に出る。その後はサンレモに向かう海岸線をひたすら走る。例年、勝負所になるのは残り30kmからのチプレッサと残り10kmからのポッジオという2箇所の峠。昨年はポガチャルが仕掛けたのがチプレッサで、ポッジオで数人に絞られた集団からダウンヒルで抜け出したのがモホリッチだった。登坂距離も勾配もそれほどでもない坂だが、300km近く走ってきた選手たちには過酷そのもの。アタックで抜け出すパンチャーがそのままゴールするか、ここをしのいでついて行けるスプリンターがゴール前で引きちぎるのか。なお今年の天気予報では終盤は強めの追い風が吹きそうで、逃げに有利な条件ではある。
◎優勝候補
まず、今回は過去一番と言っていいほど強力な選手が揃った。なにしろ過去の優勝経験者が8人も出場する(8人は下記《過去の成績》参照)。優勝候補はレース展開によって異なる。集団スプリントでスプリンターが勝つケースと、山岳でアタックする小集団によってゴールが競われるケース。優勝候補のひとりとして全チームが警戒するのは、ポガチャル。今年もすでにキレッキレの状態で、昨年のようなアタックで集団を破壊するような展開になれば、ついていけるのはごくわずかになりそう。マチュー、アラフィリップ他数名みたいな。モホリッチはその登りさえついていければ、昨年見せたスーパーダウンヒルアタックがまた炸裂するかもしれない。事前情報では今年もドロッパーシートポストを使用するようで、ハマってしまえば分かっていても誰もついていけないかも。スプリンターでは2位を2回経験しているカレブ・ユアン、登坂を苦にしないアルカンシェル経験者ピーダスン、(厳密にはスプリンターではないが)究極のオールラウンダーのファンアールト、登りもこなし抜群のスプリント力を誇るギルマイ。ギルマイはモニュメントはこれで2回目と、まだ経験値に乏しく上位には入っても優勝は厳しいと思っている(初出場の昨年は12位に入ってもいる)。彼らはポッジオの登坂についていける脚力は十分ある。そして個人的にワンチャンありそうな選手として、アランブルとクフィアトコフスキを選んだ。今年はモビスターの積極的にレースを動かす姿勢はすごく好印象で、ガビリアとガルシアをプロトンに入れておけばアランブルがアタックすると想像、先頭グループに残れればピーダスンにだっていい勝負ができる。またゴール前で少人数の先頭集団になって牽制が入ったらクフィアトコフスキがするすると先着するなんてこともありそうだ。妄想はこの辺にしておいて、個人的にはファンアールトかピーダスンがアクシデントがなければ優勝すると思っている。なお近年は小集団からの優勝者が出ることが多めでスプリンターは厳しい傾向。残念なのは、ピドコックとマシューズの欠場(とはいえこれ以上ないほどのメンバーが揃っている)。
◎その他の注目選手
上記優勝候補以外にも多くの有力選手が出場する。まず特徴としては、スプリンターで狙うチームとそうでないチームに分かれていることで、スプリンターとそれ以外の選手で分けて表を作成した。スプリンターのいないチームは昨年ポガチャルが仕掛けたチプレッサでのアタックを警戒しスプリンターは無理と判断したのだろう。スプリンターで勝負をかけてきたのは(つまりチプレッサ以降でもついていく)グルパマ、コフィディス、アルケア、アスタナ、ボーラ、ロット、トレック。どのチームが残り50kmを過ぎたところから主導権を握っていくのか注目したい。ただしクイックステップではバッレリーニを入れたが、ヤコブセンやメルリールは外れているので、基本的にはスプリント勝負ではない展開を想定している。同様にフィリプセンを入れてきたアルペシンも、マチューとクラーウアナスンがポガチャルに対抗していくのが基本線。スプリンターの中ではデマールとラポルトは上位候補か。今季好調のヴェンドラーメとコルトも終盤の逃げグループに入れたら面白い。モニュメント初参戦のドゥリーの活躍は期待したいが、さすがにこのクラスのレースはまだ勝てるとは思えない(ユアンと一緒に走るのははじめてかな?)。スプリンター以外ではナーセン、クラーウアナスン、トレンティン、トゥルジスは過去に上位に入っていて相性のいいレースで、アスグリーン、ストゥイヴェンはモニュメントタイトルを持つ実力者。パウレス、ガンナ、ヴァルテルは春のクラシック戦線で個人的に注目している選手で好成績を期待。
ポガチャル要するUAEは多くのエースクラスの選手を揃えて、ユンボも複数の勝負できる選手がいて、この2チームを中心にレースが展開されると予想している。そこにイネオス、バーレーン、クイックステップが絡み、仕掛けそうなのはモビスター、アルペシン、EFあたり。
◎過去の成績(2022年、2021年、2020年)
参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。所属チームは今季との比較も。3年間で複数回トップ10に入っているのは、マシューズ、ファンアールトが3回、モホリッチ、テュルジス、マチュー、クラーウアナスン、サガン、アランブルが2回と、パンチャー系の選手が比較的好成績。
出場選手中、過去の優勝経験者は8人もいる。モホリッチ(2022年)、ストゥイヴェン(2021年)、ファンアールト(2020年)、アラフィリップ(2019年)、クフィアトコフスキ(2017年)、デマール(2016年)、デゲンコルプ(2015年)、カヴェンディッシュ(2009年)。
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