ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

ミラノ〜サンレモ 2023|リザルト

 

「ロードレースは面白い」ということを改めて感じさせてくれる、とても良いレースだった。さすがモニュメント。3月18日に開催された【ミラノ~サンレモ】は、“役者が揃った”名勝負であった

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

最後まで目が離せないスリリングなレースは、トップライダーたちの本気の勝負。マチュー・ファンデルプールがモニュメントの栄誉を掴み、天国のおじいちゃんに捧げた。奇しくも彼の祖父プリドールさんが62年前にミラノ〜サンレモを優勝したのと同じ日。ちなみにマチューはこれでモニュメントは12レースに出場し、3勝・トップ10が11回という恐ろしい成績。彼の調子がよほど悪くなければ優勝候補から外してはいけない。レースに動きがあったのはやはり、残り30kmからのチプレッサと残り10kmからのポッジオ(最後の30分見ればいいとか言わないように)。昨年と同じようにUAEが先頭を引き集団を絞り、特に今季加入したウェレンスの引きは強力でトレンティンの働きもあり集団が中切れを起こしたところでポガチャルがアタック。ついていけたのはガンナファンアールトマチューのみ。その後ろをクラーウアナスンピーダスンパウレスが必死で追うも最後まで捕まえることはなかった。ポッジオの頂上手前で猛アタックをしたのがマチュー。単独で抜け出すとそのまま加速しっぱなしでゴールまでたどり着いた。追走グループの3人の後ろはモホリッチ(2022優勝)、テュルジス(2022・2位)、ストゥイヴェン(2021優勝)と過去好成績を残した選手たちがトップ10に滑り込んだ。

 

 

◎予想結果:優勝候補ほか

予想結果は「悪くない」と思ってる。トップ10のうち上位5人しか当たっていないが、トップ10に入った選手は全員★をつけていたので、選手の力関係やチーム状況は自分なりにうまく整理できていたから。予想面でのただひとつの心残りはガンナのエースを読み違えていたこと。今シーズンの好調さを含めていい走りは期待していたが(予想時の文面でも《パウレスガンナヴァルテルは春のクラシック戦線で個人的に注目している選手で好成績を期待》と名指しで言及)優勝候補まで想像していなかった。イネオスは直前にピドコック欠場の発表があったので、こういうプランが狂ってしまった時にレースを作るのはクフィアトコフスキだと思ってしまったのだ。ガンナは元々「プランB」だったのか、イタリアのレースだしね、そりゃそうだ。個人的推しだったアランブルは中盤に落車したのは響いたか。5位集団で走る力はあったと思ってるんだが。やはりスプリンターには厳しい展開だった。32秒遅れでゴールした集団では、バッレリーニラポルトコルトフィリプセンユアンという順番だった。

 

◎その他・雑感

素晴らしいレースだった。マチューはこういう勝ち方をするからファンになってしまう。2021年のストラーデビアンケの終盤の驚異的なアタックを思い出した。今の強さのポガチャルを登坂のアタックで置き去りにするのってマチューしかいないんじゃないか。あの最終局面でガンナファンアールトポガチャルのTT強者3人の追走から逃れられるのもマチューしかいないだろう。すべてのライダーが力の全部を出し尽くしたレースだったはずだ。

アルペシンとしては快心のレース。個の突出した力もあるがチームとしての強さを見せつけた。スプリンターが揃ったメイン集団には強力なフィリプセンがいて、追走グループで先着し5位に入ったスプリント力も備えたクラーウアナスンがいて、彼らの存在がマチューを間接的に強力にアシストしている。アルペシンはこの3人だけでこのレースでUCIポイントを1215ポイント稼いでしまった。ほんの10日前に今シーズン初勝利を挙げたチーム(ワールドチームで最も遅い勝利)はこのレースに完璧に照準を絞っていた。ここまでクラシック戦線での圧倒的な強さを見せていたユンボイネオスと、圧倒的な個の力を示していたポガチャルを相手にして、完全な勝利である。マチュー、ファンアールト、ポガチャルのガチ勝負はこの後、ロンド、パリ〜ルーベへと続く。

ギルマイドゥリーなどの若い勢いのある選手たちもやはり簡単に勝てるレースではなかった。他のレースとは厳しさが違う。その厳しさとは、レースの難易度のレベルが違うこと(ミラノ〜サンレモでいえば距離がこれだけ長いレースは他になく補給ひとつとってもわからないことが多いだろうし、例年同じコースを走るので経験のある選手とは差が出て当然)、そして実力ある選手が多く出場し、彼らが勝ちに飢えていること。それでも今回の経験は次回につながるはずで、来年は優勝候補になるかもしれない。

個人的に残念な気持ちがあるのは「ファンアールト、悔しいだろうなあ…」と。今年の2月に行われたシクロクロス世界選手権に続きマチューの引き立て役にされてしまったから。どちらのファンでもあるので、嬉しさと悲しさと半々でもある。勝者がいれば必ず敗者がいる(3位で敗者というのはかわいそうだが)。勝者の歓喜の裏側には敗者の涙がある。だからロードレースは美しい。

 

 

◎プレビュー記事はこちら。

jamride.hateblo.jp