ボルタ・ア・カタルーニャ 2023|出場選手まとめ
3月20日からスペインで開催される【ボルタ・ア・カタルーニャ】。フランス国境に近いピレネー山脈中心のコースは山、山、ひたすら山。7日間登って登って登りまくるステージレース。スプリントステージでさえ獲得標高が2000mを超えたり、登れるスプリンターでないとまともに勝負すらできない。今年の出場選手はジロの前哨戦の意味合いが強くなりそうなラインナップ。マリアローザを狙うクライマーたちが登坂力を競う注目のステージレースになる。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。
*優勝候補及び有力スプリンターは10人まで(本命は3人)、それ以外の有力選手は30人まで絞っている→すみません、増えちゃった。だって削れないんだもん。*選手が変更の可能性あり。表内の選手のUCIランクと年齢は2022年12月末時点。
◎ステージプロフィール
◆Stage1(3月20日/丘陵):Sant Feliu de Guíxols > Sant Feliu de Guíxols
距離164.6km|獲得標高2090m
4つの山岳が設定されているがそれほど険しくはないので、スプリンターには数少ない勝負できるステージ。ただしゴールは登り基調なので、パンチャーも勝負に絡みそう。終盤にスプリントポイントが2つも設定されているのも、もしかしたら総合を狙う選手の小競り合いがあるだろうか。
◆Stage2(3月21日/山岳):Mataró > Vallter
距離165.4km|獲得標高3289m
ゆるやかな登りではあるがゴールの山頂は標高2000m超えなので酸素は薄く、こういうステージはコロンビアやエクアドルの南米勢の選手が強い。クライマーを中心に集団は少人数に絞られそうなのでパンチャーがステージ優勝を狙うと思うが、総合争いも始まりそうなステージで、遅れは許されない。
◆Stage3(3月22日/山岳):Olost > La Molina (Alp)
距離180.6km|獲得標高3995m
はやくもクイーンステージの登場で、総合争いは一気に激化する。前日に続き南米勢は張り切りそう。総合タイムにどれだけ差はつくかはわからないが、有力選手はかなり絞られそう。獲得標高が高く長い下りもあるので、仕上がり状態とアシスト含めたチーム力が問われるステージ。
◆Stage4(3月23日/丘陵):Llívia > Sabadell
距離188.2km|獲得標高2437m
集団スプリントになりそうなステージ。とはいえ緩やかながらコースのほとんどはアップダウンが続き、スプリンターには優しくない。総合タイム差がついた有力な逃げが形成されれば逃げ切りもありそう。
◆Stage5(3月24日/丘陵):Tortosa > Lo Port
距離176.6km|獲得標高2623m
小さな山岳とスプリントポイントをこなしながら、最後の登り一発勝負の緊張感あるステージ。思わぬタイム差もつきそうで、逆転のチャンスにかけたアタック合戦によって総合順位も大きくシャッフルされるかもしれない。このステージを勝つクライマーが総合優勝に大きく近づく。
◆Stage6(3月25日/丘陵):Martorell > Molins de Rei
距離183.2km|獲得標高2574m
プロフィール的には逃げが決まりやすそうなステージで、総合タイム差がついたクライマー(あるいは遅れたGCライダー)が逃げを試みると予想。終盤の二つの山岳はなかなかの登坂で、スプリンターには厳しいだろう。最後の総合争いも繰り広げられるかも。山頂からゴールまではそこそこ距離もあり大きなタイム差は余程でないとつかないか。
◆Stage7(3月26日/丘陵):Barcelona > Barcelona
距離135.8km|獲得標高1914m
中盤から入る周回コースは6回超える2級山岳はかなりの曲者。スプリンターには厳しめのステージで、少しづつ人数を減らして最後はパンチャーによる小集団スプリントと予想。総合勢も先頭集団には加わるだろうし、仮にタイム差が小さければ中間スプリントポイントも白熱する可能性もある。
◎総合優勝候補
ジロに出場を表明しているプリモシュ・ログリッチとレムコ・エヴェネプールが総合争いの中心になる。それぞれティレーノとUAEツアーで総合優勝をし順調にきているので見応えある力勝負が期待できそうだ。今年のジロはTTの強い選手に有利な傾向があるがカタルーニャにはTTステージはない。登坂力の差がそのまま総合順位に直結するわかりやすい構図は、彼らがピュアクライマーとどれだけ渡り合えるか注目か(この二人以外にもジロ出場予定の選手は名前をピンクにしている)。本来ならログリッチの方が登坂力はあるがまだコンディションはピークではなく、順調に高地トレーニングを重ねたレムコがやや強いのではと想像しているが、チーム力ではクスやクライスヴァイクを揃えたユンボが有利そうにも思える。昨年のブエルタのリベンジマッチでもある。
他の有力選手も力が拮抗していて、また複数エースを立てているチームもあり、優勝候補は多めにリストアップした。上位10人に予想した選手(表の上10名)と下の表に記載した選手にあまり差はない。実力あるクライマーが揃っているが、中でもオコーナー、ランダ、ヒンドレー、カラパスは強力だ。また今シーズン好成績をあげているのは、チッコーネ、アルメイダ、ガル、メーダー、チャベス、ルビオ、バルデ、Aイェーツ。山岳が多いカタルーニャは南米勢が活躍することも多い。カラパス(エクアドル王者)、チャベス(コロンビア王者)、ベルナル、ルビオあたりは標高の高いステージは特に注目だ。ベルナルは本来の調子さえ戻れば打倒ポガチャルの筆頭にもなりえる選手。一年前の大怪我から奇跡的にレースに戻ったとはいえ、まだ本調子には遠い。それでも1月のオサンフアンでは山岳ステージで4位に入るなど復活の兆しは見えている。個人的な注目株はキアン・アイデブルックス。「ネクスト・エヴェネプール」と呼ばれる新たな才能が満を持してワールドツアー初参戦。今年のツアー・オブ・オマーンではすでに総合9位に入った。まだ10代で少年のような昨年ラヴニールの覇者がどんなレースを見せるのか楽しみしかない。
チームとしては、バーレーン、イネオス、EF、モビスター、UAEは複数の総合エースクラスを揃えていて、いろいろと仕掛けると面白い。他の上位候補は下記表を参照。
◎その他の注目選手
総合上位に入ってもいい選手がちらほらいる。ニコラ・コンキ、ジャック・ヘイグ、ヘスス・エラダ、ウラン、ストーラー、プラップ、タラマエ、クス、ソーサ、ヒルト、ファンヒルス、Dトゥーンスは十分その力はある(あまりにも多くなるので何人かは★印はつけていないが)。スプリンターを連れてきていないチームが多いので有力なクライマーが多い状態なんだろう。いつも積極的な走りを見せる期待の若手のルーク・プラップ、クイン・シモンズもどれだけ山岳に対応できるか見もの。今シーズン初レースのウラン、銃で殴られた後のイバン・ソーサ、1月のトレーニング中の骨折からの復帰レースのファンペドロ・ロペス、(表には入れていないが)ダウンアンダーでの骨折から早くも復帰レースとなるヘーシンクなど、久しぶりにレースで見れる選手が多いのもちょっと嬉しい。そうそう、我らが新城幸也も今シーズン初レースである。日本王者のジャージでワールドツアーを走る姿が見れるのは今年の楽しみのひとつ。
若手ではレニー・マルティネスは個人的な注目株。まだ総合上位に絡むほどではないが、昨年はジュニアクラスの多くのレースでシングルリザルトを連発し、才能あふれる若手が多いグルパマの中でも次代の総合エース候補の一人。はやくもビッグレースに参戦させるのはチームでも期待が大きい証拠だ。
◎スプリンター
他のレースに比べてスプリンターがしょぼいと思ったあなた!正解です。カタルーニャはピュアスプリンターには優しくない。勝負できるのはstage1とstage4くらいなので出場するスプリンターは少なく、勝てるのもいわゆる「登れるスプリンター」だ。この中ではコカールが登りに強い。調子があがってくればオフステテール、グローブズもかなり登れる。現在好調なのはミラン・メンテン。直近のワンデーレースを5連続でトップ10に入っていて、ロットの第三のスプリンターといえる存在。またスプリンターではないが、Eヘイターもスプリント勝負には絡むと想像している。
◎過去の総合成績(2022年、2021年、2019年)
参考までに過去3年間の総合成績10位と各賞を表にした。所属チームは今季との比較も。なお、2020年は新型コロナの影響で中止された。複数回トップ10に入っているのは、アルメイダ、Aイェーツ、マルタン、キンタナ、バルベルデが2回づつ。
チームでは、イネオスが5人、バイクエクスチェンジが4人と続く。コロンビアやエクアドルの南米勢の活躍も目立つ(イギータ、カラパス、キンタナ、チャベス、MAロペス、ベルナルなど)のもレースの特徴。クライマーのためにレースである。
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