ボルタ・ア・カタルーニャ 2023|リザルト
3月20日から26日まで開催された【ボルタ・ア・カタルーニャ】。主役は想像通り、というか想像以上に総合優勝争いが激しくて、昨年のブエルタの再戦はログリッチのリベンジになったが、この後ジロに続いていく。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース結果:総合トップ10
最初から最後まで、ログリッチとエヴェネプールの意地の張り合いが続いた。二人だけの別世界のようだった。ともにステージ2勝づつあげて、ポイント賞と山岳賞も分け合って、最終的なタイム差はわずか6秒。最終ステージの中間スプリントでのボーナスタイムも奪い合うという、このレベルのレースではあまり見れないような激しい総合争いだった。構図としてはレムコが常に仕掛けて、ログリッチが冷静に対応、ローテーションにほとんど加わらずゴール前にログリッチが仕事をし、レムコが悔しがるところまでがセット。それでもインタビューではレムコは「ログリッチは僕のアイドルだ」と語り、この争いを楽しんでいるようだった。最後のステージ優勝をレムコに譲ったように見えたのは、最後まで本気で挑んできたレムコへの敬意に思えた(ログリッチが勝ちを譲ったのは僕の記憶では1回しかない)。表彰台にあがったアルメイダもここまでは仕上がりの状態がいい。二人には差をつけられたが、ティレーノも含めて他の選手には常に優位に立っていた。ジロでも、この3人がマリアローザ争いの中心になるのだろう。
4位ソレルは地元カタルーニャ出身ということもあり終盤のステージで大いに盛り上げた。5位以降も状態のよい有力選手が続いた。ウッズは昨年から調子を落としていたので、総合上位に入ったのは久しぶり。個人的に好きな選手なので、この成績は嬉しい。チッコーネもステージ優勝を上げるなど状態はよかったが、最初の二日で重要な山岳アシスト二人を失い、最終的にはファンペひとりしかいなかったので、それが総合成績に響いた。ソレル、アダム・イェーツ、マイカと揃えていたUAEのアルメイダとの差はその辺りも大きい。ウランもまだまだ元気。スペインは相性もいいのかな。このトップ10で一番目立つのは、アイデブルックスだろう。初のワールドツアーでヒンドレーのアシストをしながら総合9位は立派。去年ブレイクしたアユソのような雰囲気がある。近い将来ビッグレースでも上位の常連になるかも。総合上位を目指すボーラの若手ということと、レムコに続いて出てきた優秀なベルギー人GCライダーということも要注目ポイントか。
◎ステージ優勝者
◆Stage1:3月20日/丘陵
優勝:ログリッチ/2位:エヴェネプール/3位:スヘリング
初日から二人の総合優勝にかける熱い戦いはログリッチとレムコのスプリント勝負で幕を開ける。ゴール前の上り坂はスプリンターはかなり苦戦する中、スヘリングが3位に滑りこむ。ゴール前にスプリントをしてログリッチのすぐ後ろに迫ったレムコの悔しさにハンドルを叩くシーンを見て、勝利にかけるただならぬ熱量を感じさせた。リーダージャージは早くもログリッチに。
◆Stage2:3月21日/山岳
優勝:チッコーネ/2位:ログリッチ/3位:エヴェネプール
2日目にして厳しい山岳ステージは、前戦ティレーノからの好調ぶりを見せたチッコーネが登りフィニッシュの3人で並ぶようなゴールスプリントを制した。チッコーネにとっては前日に落車したカタルド(複数箇所骨折で全治6ヶ月の重傷)とこの日に落車したエリッソンド(骨折はなかった)の二人のチームメイトに捧げる勝利で、ゴール後に涙を流すポポヴィッチ監督と抱き合うシーンはエモーショナルだった。
◆Stage3:3月22日/山岳
優勝:エヴェネプール/2位:ログリッチ/3位:チッコーネ
前日に続いて総合成績を左右する難関山岳ステージはレムコの意地の勝利。2日続けてスプリントで僅差でログリッチに負けていたが、最後は秒差をつけるも、ここまでのボーナスタイム差でリーダージャージはログリッチのまま。それすらも計算済みのようなログリッチの冷静な様子に隙はない。
◆Stage4:3月23日/丘陵
優勝:グローブス/2位:コカール/3位:ストロング
ようやく訪れたチャンスにスプリンターたちが張り切ったステージ。ストロングが先行したゴールスプリントはコカールとグローブスが追いつきハンドルを投げ合い、グローブスが移籍後初勝利をあげる。総合順位は変動なし。
◆Stage5:3月24日/丘陵
優勝:ログリッチ/2位:エヴェネプール/3位:アルメイダ
総合争いの勝負のステージは、最後の登坂でやはりレムコが仕掛け、最終的にはログリッチと一騎打ち。レムコは残り300mから一気に突き放そうとしたが、逆にログリッチが先着した。最後に力尽きたレムコはわずか数十メートルで6秒もの差をつけられた。わすかに6秒だが、その差が大きい。
◆Stage6:3月25日/丘陵
優勝:グローブス/2位:コカール/3位:スヘリング
直前にコース変更があり、終盤の山岳がなくなり(急な下りが危険との判断らしいが、それはもっと早く気付いてほしい)、スプリンターが勝負できるステージになった。ゴールスプリントの準備で慌ただしくなるタイミングでメカトラでチームメイトとバイク交換したグローブスがステージ優勝。このスプリントステージでも最後のスプリントまでもがいたレムコとログリッチの総合争いはまだ終わらない。
◆Stage7:3月26日/丘陵
優勝:エヴェネプール/2位:ログリッチ/3位:ソレル
最後の最後まで総合優勝を諦めないレムコが何度もアタック。それでも全てログリッチは後ろにホイールをつけて離されない。中間スプリントポイントをレムコが1位通過すればログリッチも2位通過し、油断は見せない。集団から抜け出した二人は最後まで競い合い、レムコがステージ2勝目。最後はログリッチがステージ優勝を譲ったように見えた。
◎予想結果:総合優勝候補ほか
予想は総合トップ10のうち6人、いまひとつですね。今季初レースのウラン、調子を落としていたウッズは当てにくいが、ソレルは地元で有力選手に挙げられたか。とはいえ昨年はいいところもなかったし、チームにはAイエーツもいるので、なかなか予想しにくいか。
カラパスとGトーマスはやはりまだコンディションをあげていなかった。彼らはグランツールまではこんなかんじで過ごすのだろう。若手で注目していたレニー・マルティネスが総合12位と想像以上の成績。これからも楽しみに注目していきたい。ウラン、チャベス、ルビオとコロンビア勢も山岳では元気を見せたが、ベルナルの落車リタイアは残念。試練が続くが、ベルナルの元気な復活を期待している。あとチームの母国レースということもあるだろうけど、モビスターはチーム全体が今年はずっと調子がよい。エースクラスは出場していないが存在感は感じられた。終盤でもアシストとして先頭を引く姿が再三見れた新城幸也はさすがの仕事ぶりで安心感がすごいのと、スペインの子供達に囲まれてサインをしていた様子に嬉しくなった。この後はバスクカントリーに出場予定で、彼の半分地元と呼べるスペイン連戦が続くのも楽しみである。
◎予想結果:スプリンター
*表のリザルトはポイント賞の順位。
グローブスが2勝をあげて、カタルーニャとの相性の良さを見せた。スプリンターには厳しいステージレースの中で、彼らには拍手を送りたいと思う。勝利には届かなかったが二度表彰台にあがったコカール、ヴァントゥリニ、Eヘイター、マーリッツ、メンテン、ストロングは複数回トップ10に入るなど、らしい走りだった。表には入れていなかったが、イーデ・スヘリング(ボーラ)、ドリアン・ゴドン(AG2R)はともにスプリンターではないが好成績をあげていたので記載しておく。初日落車の影響で早々にリタイアしたオフステテールは残念だった。
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