イツリア・バスクカントリー 2023|リザルト
4月3日から8日まで開催された【イツリア・バスクカントリー】。地元スペインの選手が連日活躍して、情熱的な観衆たちも盛り上がる印象的なレース。ツールを目指すクライマーたちの仕上がり具合も気になる中、ヴィンゲゴーの圧倒する走りはある種の狂気さえ感じるほどだった。
*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。
◎レース結果:総合トップ10
すでにヴィンゲゴーは仕上がっている。昨年にはあまり見られなかった超積極的なレース運びで終始圧倒し、タイム差がつきにくいレースにもかかわらず最終的に2位以下を1分以上引き離した。彼は見えない敵と戦っていたのだろうか(スロベニアの宇宙人)。地元出身のランダも常に積極的に勝負を仕掛けたが、ヴィンゲゴーが2枚くらい上手だった。stage2でリタイアしたビルバオがいたらバーレーンももう少し違う展開に持ち込めていたかもしれない。3位に入ったヨン・イサギレはこのレースではほんとに強い。いつもの3割増しくらいか。3位から10位までは21秒しか差がついていない混戦で、以下、ゴデュ、マス、イギータ、サイモン・イェーツも順調に仕上がっている印象。マクナルティとガルはたしかな成長を感じさせ、ヤングライダー争いをした。総合優勝争いには加わらなかったが、クイックステップはチームとしての積極的な姿勢があって好印象(ベルギークラシックでもこういうのが見たいんだが、ごにょごにょ)。総合8位のノックス、11位シュミットほか、バジオーリらもステージ優勝に絡み表彰台にも4回あがった(勝ちきれなかった部分はあるけれど)。
◎ステージ優勝者
◆Stage1:4月3日/丘陵
優勝:ヘイター/2位:シュミット/3位:アベラストゥリ
初日から中間スプリントでヴィンゲゴーらの総合勢が動くなど、チームの駆け引きが激しく衝突。登り基調のゴールは集団スプリントになり、地元出身のフライレにお膳立てされたEヘイターが遅ればせながら今季初勝利。総合勢も上位に絡んでやる気満々。ウルフパックはバジオーリで勝負と思ったがシュミットだった。チームで好調そうなのは嬉しい。
◆Stage2:4月4日/丘陵
優勝:スヘリング/2位:ソブレロ/3位:ゴデュ
ステージ中盤からダウンヒルが多く、特にフィニッシュ前の下りはやはり緊張感があった。先頭グループにいた10名ほどの選手たちには恐怖心が麻痺しているに違いない。少し前から調子を上げているスヘリングが優勝(意外にもWT初勝利)しリーダージャージも獲得。ソブレロやアランブルなどの猛者たちに混じって、ゴデュとウランが先頭集団で入るのには驚いた。そういえばクレイジーなダウンヒルをこなす選手だった。
◆Stage3:4月5日/丘陵
優勝:ヴィンゲゴー/2位:ランダ/3位:マス
最大26%の超激坂フィニッシュをヴィンゲゴーが制しリーダージャージも手に入れる。登り口の前までヴァルテルが完璧にアシストしたユンボに隙は見当たらない。登坂途中でバランスを崩したフアン・ロペスにぶつかって止まってしまったイギータとカラパスは不運だった。それでも激坂は距離が短かったので決定的な差にはならず、総合優勝争いはここから更に激しくなっていく。
◆Stage4:4月6日/丘陵
優勝:ヴィンゲゴー/2位:ランダ/3位:シュミット
終盤の2級山岳でアタックしたのリーダージャージのヴィンゲゴー。唯一ついていったランダとそのままゴールまで逃げてステージ2連勝。地元のランダは総合逆転を目指して粘るも惜しくも2日連続2位でボーナスタイム分の差をさらにつけられてしまう。3位争いは小集団スプリントでシュミット。
◆Stage5:4月7日/丘陵
優勝:イギータ/2位:バジオーリ/3位:スケルモース
終盤まで逃げ続けたのはカッタネオとカヴァニャのウルフパックの二人という珍しい展開。終盤の登坂で残った小集団でのスプリントは集団内でも一際小柄なイギータが、猛スピードで駆け抜けて今季初勝利し総合順位もあげる。今後のグランツールでの活躍を期待したくなる素晴らしい走りだった。総合上位勢の顔ぶれは変わらないが、1分差以内に13人もひしめく混戦は最終日に向けてより激しくなった。
◆Stage6:4月8日/山岳
優勝:ヴィンゲゴー/2位:ノックス/3位:ヨン・イサギレ
終盤の3つ目の1級山岳で集団から飛び出したヴィンゲゴーが先頭グループを抜き去るとそのまま残りおよそ30kmを独走。追走集団に20秒もの差を開き、3つ目のステージ勝利と総合優勝を手にした。追走集団からアタックしたノックスが2位に入り総合でも8位にジャンプアップし、前日まで3位につけていたスケルモースと5位につけていたソブレロは大きく順位を落としてしまった。
◎予想結果:総合優勝候補ほか
予想の結果はあまりよろしくない。トップ10のうち6人的中。しかし表彰台の2人は外してしまうのは言い訳のしようがない。《表の下にいる★ふたつの選手は最後までトップ10に入れるか悩んだ。》→ほら、その二人は惜しかったでしょ。あ、★ふたつの選手が多過ぎる?そうですか、面目ない…。
大枠では実力ある選手たちが順当に活躍したと思う。総合上位の選手たち以外では、チャベス、ファン・ロペスの二人はアタックを繰り返し調子を上げてきているのは好印象。人気者たちなので彼らが活躍するとレースは2割増しで盛り上がる。スヘリング、アランブル、バジオーリと★印をつけた選手も活躍し、ヴァルテルはヴィンゲゴーの総合優勝をしっかりと支えた。ユンボはいい補強をしたと思う。個人的推しの新人ロマン・グレゴワールは、才能の片鱗はじゅうぶん見せてくれた。ユキヤが「一年で一番きついステージレース」と言って最終日リタイアするほどのバスクカントリーで、ゴデュのために(ライバルに取らせないように)最終日に中間スプリントを取りに行くところなんか新人離れした動き。楽しみに成長を見守りたい。昨年優勝したダニエル・マルティネスはやはりムラがあっていまひとつ。こうなると本来なら出場していたはずのカルロス・ロドリゲスの不在は痛い。初日ステージ優勝したEヘイター以外はいいところがなく、チームとしても苦しい展開。ベルナルは復調にはまだ時間がかかりそうだが、レースに出続けているの根性は立派、褒め称えたい。
◎その他・雑感
自転車熱が高いことで知られるバスク地方のレースを見ていると、どこか日本の風景を思い出す。おそらく山の輪郭や色と、そこにある木々が普段見慣れたものに近いからだと感じる。バスク地方は今年のツールのスタート地。夏は更に多くの人々が熱狂するであろう。いつか日本も彼らに負けないくらいの自転車熱が高くなることを願って。
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