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ロードレース観戦ガイドのブログ

ラ・フレーシュ・ワロンヌ 2023|リザルト

 

4月19日に開催された【ラ・フレーシュ・ワロンヌ】アルデンヌクラシックの2戦目、激坂『ユイの壁』を制したのは、やっぱりスロベニアの宇宙人だった。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2022年12月末時点。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

ポガチャルアルデンヌクラシックを連勝、終始UAEが見事にレースをコントロールした。逃げグループとのタイム差を調整しつつ集団を楽に走らせない速度を維持しながら、優勝候補たちによる危険なアタックを封じ、最後のユイの壁に入るところまでポガチャルを守るように引き続けた完璧な仕事ぶり。途中自ら仕掛けることなく最後の登坂勝負に持ち込んだポガチャルは絶好の位置でユイの壁に入り、残り150mでアタックして引き離すという明確なプランと実行力が勝利につながった。それは過去にこの壁に跳ね返されてきた自身の経験からの教えであり、それを完璧にこなしたポガチャルの学習能力の高さも彼を最強たらしめている一つの要素だ。ロンドの勝利もまた、前回の負けを教訓にしていたことも思い起こす。

以下、上位の10人はユイの壁を早く登った順、である。驚異的な登坂力を見せて追い上げたがポガチャルにはわずかに及ばなかったスケルモースランダが表彰台にあがった。一時先頭になって懸命に粘るが力尽きたウッズ、その後ろにチッコーネラフェベノートファンヒルバルギルが続く。少しアタックが早すぎたバルデは最後に失速し9位に沈んだ。表には入れていないが11位のヴァルテルまでが4位ウッズと同タイムゴール(ポガチャルと3秒差)、その後40位まではポガチャルと30秒差以内という集団でのゴールだった。また、最後に力尽きたが、逃げグループに入り最終盤まで逃げ続けたセーアン・クラーウアナスンと、ラスト一周のタイミングで追走して先頭グループに追いつきユイの壁登坂までアタックしたルイス・フェルヴァーケには拍手を送りたい。こういうチャレンジはとても好印象だし、この二人の走りはどこかで結果につながるはずだ。

 

 

◎予想結果:優勝候補ほか

今回も予想結果は惨敗である。トホホである(死語?)。トップ10のうち4人しか当たらず、次点の候補からも4人、残りの二人はその他有力選手枠からで、かろうじて★印をつけていたのがギリギリ救いだろうか。レースは大きな波乱があったわけでもないので、かなり反省が必要な予想だった。ちょっと謝罪会見が必要なレベルかもしれない。もう、このブログを書くことを辞めようとさえ思う。

え?辞めるほどのことではない?そうですか、なんと優しいのでしょう。ではもう少し続けてみます。あ。そういう茶番はいらないっすか、そうですか。

体調不良で早々にリタイアしたゴデュと、またもや落車に巻き込まれたパウレスは、もう一度予想してもこの二人は入れるべきだと思ってるので後悔はない。予想を外したトップ10の選手でいうと、スケルモースは見事。褒め称えたい。TTが強いので総合系の成績も求めてしまうが本来はパンチャータイプで、この成績は驚くものではない。ただ今回は今季好調のチッコーネが勝負に行くと思ったし実際に勝負していた。ファンヒルはきちんとトップ10予想に入れるべきだった。ちなみに前レースのアムステルゴールドレースとフレーシュワロンヌの両方トップ10に入ったのはスケルモースとファンヒルスだけである(あとポガチャル)。ベノートは上位10名に入れるのを最後まで迷ったのと、バルギルバルデは次点に選んでいたので、まあ良しとする。ルツェンコイギータは冷静に考えれば激坂に強いわけではないので、どちらかというと穴的な予想にしておく方がベターだった。他の反省点ではビルバオよりモホリッチだったし、エラダよりはラフェで、ゲレーロよりはアランブルバジオーリよりはシュミットを選んでいたら(以上は同チーム内での予想変更点)個人的には満足できるレベル。チーム全体でボーラが不調だったのは残念だ。もしかしたらチームごと感染症などの影響があったのかもしれない(ブログ執筆時でアルプスに出場中のウラソフがリエージュに欠員が出たため急遽参戦するとの発表があった)。

 

 

◎その他・雑感

ロードレースは強い選手が勝つ、それは当たり前の事だ。しかし実力差がわずかの差ならば、上位に入るライダーの中から誰が優勝するかは“運”が左右すると言っていいと思う。ここで言う“運”とは、神秘的なラッキーのことではなく、展開や調子の良し悪しから他の選手の状態や天候にいたるまで、レースにまつわる様々な要因(自分ではどうしようもないような事象)が味方になる、というような意味合いだ。

ポガチャルは“運”など関係なく実力で勝ったのだろうか。アムステルゴールドレースではただその強さを誇示するかのような走りで圧倒し、フレーシュ・ワロンヌではタイム差こそないものの余裕を感じさせるほど2位以下とは明確な力の差があったといえる。が、ポガチャルは圧倒的に“強運”の持ち主でもあったからとも思っている。アムステルではメイン集団での落車がなければ展開は違っていただろうし、ポガチャルがメイン集団にいなかったことがすでに強運だ。フレーシュ・ワロンヌでいえば、前回優勝したDトゥーンス、3回優勝のアラフィリップ(ついでに言うと5回優勝のバルベルデ)や、ログリッチ、マチューといった激坂ハンターたちがいたら優勝はもっと厳しいものになっていたはずだ。初めてマイヨジョーヌを着た時も最後のTTは圧巻の走りだったが、ログリッチのバッドデーがなければ逆転は不可能だった。そういうところを“強運”といいたくなるのだ。もちろんレースに結果論でタラレバを言うのは品がないのは承知の上で、彼の実力がトップクラス(モンスタークラスと言いたいレベル)であることに加えて、という話だ。ほんとに恐ろしい子だ。

さて、これでアルデンヌクラシックはポガチャルが2連勝し、残すのはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(LBL)のみになった。多くの難敵がいるが、筆頭はレムコ・エヴェネプールだろう。世界王者にして昨年のLBL覇者である。それでも、今のポガチャルの強さが上回るように思えるし、ポガチャルは一昨年のLBL覇者だ。どちらも得意なコースであるといえるので、クラシックシースンの締めくくりにふさわしい激しいレースが観れるはずだ。ちなみに二人のワンデーにおける直接対決はなんと、5勝5敗。全くの五分。サンセバスティアン、世界選手権とレムコが現在2連勝中である。そのあたりはまたLBLプレビューで記してみたい。

 

 

◎プレビュー記事はこちら。

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