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チームと選手の成績チェック【4月終了時】

 

4月、春のクラシックシーズンを終えて、新たな主役たちも現れた。現時点での成績を集計し、チェック。好調なチームとブレイク候補を中心にコメントしていく。5月からの迎えるグランツールの参考にしたい。

*表のUCIポイントおよび勝利数は2023年第17週(5月2日)までの集計。

 

 

 

 

◎チーム成績UCIランク・勝利数)

クラシックレースの好調なチームが大きくジャンプアップしつつ、今季のチームの状態もより一層見えてきた。*表はUCIランク順で、ワールドチーム18チームと昨季上位の4つのプロチームで構成。UCIランクと勝利数は2022年分もグレーで表記。UCIランクは前月から上がったのはオレンジ、下がったのはブルーにしている。

ランキングではUAEチームエミレーツユンボ・ヴィスマが熾烈な首位争いをしている。他のチームから少し抜け出している。昨年1位のユンボは昨年も好調だったクラシックで順調に好成績を残しつつログリッチやヴィンゲゴーがステージレースできっちり稼ぐ隙のない戦い方をすれば、UAEはポガチャルがクラシックでドカンと稼いで、移籍加入したAイェーツも総合優勝など、コンスタントに勝利する。勝利数でもポイントでもこの2チームはこのまま今シーズン最後まで競い合うと想像される。イネオスクイックステップは先月までと同様の構図。イネオスはクラシックでの善戦とステージ総合での苦戦、クイックステップはステージ総合での善戦とクラシックでの苦戦が継続中。

4月に大きくジャンプアップしたのがアルペシン。マチューがロンド2位、パリ〜ルーベ優勝と大暴れしつつ、フィリプセンやクラーウアナスンも好成績を連発。4月で稼いだポイントではUAEユンボとほぼ同じ。ステージ総合ではほとんどとれていない分、ワンデーレースにおけるポイントは圧倒的といえる。トレックEFも好調が続いている。トレックは北クラシックではピーダスンが、アルデンヌクラシックではスケルモースとチッコーネが連続して上位入賞。多くの若手もコツコツとポイントを取り選手層の厚さを感じさせ、今季は飛躍のシーズンとなりそうな雰囲気。EFはいま一番サプライズを起こせるチームかもしれない。エースに成長したパウレスがロンドで5位に入った後は不運なリタイアを繰り返したが、ベン・ヒーリーがとんでもない成績を残して台頭。チャベス、ヒュー・カーシー、サイモン・カーと中堅どころも復調。若手の台頭、ヴァルグレンのレース復帰と日替わりのように明るい話題も尽きない。

バーレーングルパマはチーム状態が似ている。ともに優勝こそ少ないが、総合・ワンデーともにエースたちと多くの若手たちが好成績をあげてポイントは稼いでいる。グルパマはデマールをエースとしたスプリント班の調子があがらないのが懸念材料か。ロットは先月よりは順位を落としたがチーム状態は悪くない。メンテンやフリソンなど若手が台頭してきているのは明るい材料で、ユアンやカンペナールツなどエースたちが本来の活躍が出来ていないのは難点。アンテルマルシェは勢いが失われ足踏み状態。ロンドで巻き込まれて怪我をしたギルマイなど複数の選手がレースに出れなくなったという不運もあり、順位も前月の5位から11位と大きく落ちた。彼らが戻ってきてからの巻き返しに期待したい。今月だけで5勝をあげたコフィディス、若手が台頭してきたDSMは、明るい兆し。モビスターボーラAG2Rは、4月はそれなりの成績か。もっと好成績も期待できる中堅どころのチームとしては低迷とも感じる部分もあり、どこも総合系のエースを揃えているので、これからのグランツールでの成績をどれだけ上げられるかが重要なのも、この3チームは状況がよく似ている。

アルケアジェイコ・アルウラーは厳しい状態が続いている。ジェイコは4月だけでいえばワールドチームで一番獲得ポイントが少なかった。アスタナはルツェンコの孤軍奮闘といった状態。この3チームはいいところを探すのが難しいほどチーム状態は悪い。ポイント獲得だけを狙うなら(言い方は悪いが)グランツールは捨てて、下位クラスのレースにエースを投入していくことくらいしか思いつかない。グランツールで何かしら目立たないことにはスポンサーは納得しないだろうけど。イスラエルはまだ未勝利と苦しいが、チームの状態は上がってきて活躍しそうな兆しはある。トタルウーノエクスは、プロチームとしてはまずまずの成績。ただしワールドチームを目指すにはかなり物足りない。トタルはエース格の選手の調子があがらないのがやや厳しいか。

 

 

◎個人成績UCIランク)

ランキング上位50名を表にした。各チームともエース級の選手たちが先月からランキングを順調にあげて、今年の勢力図(年間上位になりそうな選手が上位に並んでいる)も見えてきた。以下コメントは特に気になる活躍をしている選手にのみ言及する。また活躍したレースが1〜3月中心の選手は下記リンクから辿ってください。

4月はあんといってもベン・ヒーリーの活躍が最大のサプライズだった。わずか一ヶ月で1048pt稼ぎ、今年の成績では9位に躍進。この22歳のアイルランド人は、3月のコッピ・エ・バルタリstage3でプロ初優勝すると3日後のGPインダストリアでも優勝し一躍注目されたが、4月はさらに大きくブレイク。優勝こそなかったもののアルデンヌクラシックで大暴れ。ブラバンツパイルで大逃げして2位、アムステルでは独走するポガチャルを追走して2位、LBLでも独走するレムコを追いかけて4位と、好成績を連発。思い切りのいいアタックとタフな独走力が大きな武器で、この後出場するジロでも目が離せない選手の一人になるだろう。

上位11名までは皆クラシックで好成績をおさめたライダーで占められた。ビッグ3とも呼ぶべき3人は別格として、ピーダスンピドコックは複数のレースで印象的な活躍をして大きく成長を見せた。他に特筆したいのは14位ヨルゲンソン、16位スケルモース。ともに総合系でありながらワンデーレースでも強さを発揮し、上位に入る安定感はこの若さでは驚異的とも言える。さらにTTでも強さを発揮するのも共通点で、この後のグランツールでどれだけ好成績をおさめられるか期待したい。この中で勢いのありそうな選手の名前をあげておくと、ブイトラゴクラーウアナスンは印象的な活躍をした。

チーム別ではユンボが6人と別格の強さで、UAEが5人、バーレーンロットが4人と続く。ロットは大健闘だろう。ひとりも入っていないワールドチームは、アスタナAG2R。5月はジロの成績が大きく影響するので、総合系の選手が躍進してくるか注目していきたい。

 

 

◎過去の月別成績まとめはこちら

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