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ジロ・デ・イタリア 2023|成績まとめ(stage15終了時)

 

2週目は、少々残念な大会になってしまったというのが、正直な感想。今回のジロへの期待が大きかったことの反動もあるのかもしれない。レムコが去り、ゲイガンハートが怪我をし、ウラソフやピーダスンも去った。そんな状況も僕の消化不良に感じている理由でもあるが、マリアローザを着用することが罰ゲームみたいな奇妙な展開。うーむ・・・。気を取り直して、ここまでの成績を簡単に振り返る。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

 

◎総合成績上位

 

休息日でレムコが去った後にマリアローザになったのはG・トーマスだったが、2周目を終えて総合リーダーになったのは、ブルーノ・アルミライル。これは予想した人はおそらくいなかっただろう。本人もチームも驚いたはずだ。今回はピノのアシストとして参加したフランスTT王者は、TTステージでの好成績と逃げに乗ったstage14で総合勢(主にイネオス)がマリアローザを譲ろうとして意図的にタイム差を作り、逃げグループにいた中で一番タイムが良かったアルミライルが総合リーダーになった。フランス人としては24年ぶりだそうで、マリアローザになることはそれほど難しいのかと改めて思うと同時に、今回きっちりマリアローザを着たレムコと昨年初出場ながらstage1でしれっと勝ってマリアローザを着たマチューのスーパースターぶりも実感した。またアルミライルが総合リーダーになったことにより、チームメイトであるピノは少し戦いづらくなったかもしれない。個人的にはピノは総合上位よりもステージ優勝を狙ってほしいのだが、総合タイム差は逃げを容認されるには少な過ぎるし、総合勢と一緒に走るにはアシストを使わされることになり、難関山岳ステージを控えて条件は良くない。

2週目に総合勢の勝負はほとんどなかったため順位変動は脱落した選手の分であった。1週目の終わりに上位にいたゲイガンハート(前週4位)とウラソフ(前週7位)がリタイアし、シヴァコフ(前週10位)とヴァイン(前週11位)が落車で遅れた分を繰り上がった選手たちが上位に並んだ。山岳で順位をあげたカーシーピノルビオがトップ10に迫ってきたのは予想通りで、難関山岳が続く3週目はさらに上位を目指すだろう。個人的にはレムコが去った後残り3人になってしまったクイックステップで総合16位まで順位を上げたヴァンウィルデルの孤軍奮闘は讃えたい。レムコも応援してるだろう。

チームとしては一時は上位11位までに5人もいたイネオスはまだ3人が上位にいて、バーレーンもヘイグが遅れながらも3人いるのは強み。UAEボーラは単独エース体制になったが、ともに2週目でステージ2勝をあげるなどチームの士気は高いはずで、3週目は総合でももっと上を目指していくうえでチーム状態は良さそうだ。

3週目はようやくバチバチの総合争いが展開される激しいステージが続くだろう。特に獲得標高が5000mを超える難関山岳ステージのstage16とチーマコッピの山頂フィニッシュになるstage19ではチーム全員とエースたちの力比べになり、後半激坂登坂があるstage20個人TTは最後まで勝負の行方はわからない。個人的には現状上位にいるGトーマスグリッチアルメイダの争いになると想像している。3人にはそれほど大きな差はなさそうで、アシストを含めたチームの総合力が問われるはずだ。

 

 

◎各賞上位

 

各賞の5位までを表にした。

ポイント賞は1週目からチクラミーノを着用したミランがその座を守った。想像以上に登りにも強く、中間スプリントも積極的に狙う姿勢も好ましいし、何よりstage11で見せたスピードはちょっと驚いた。ライバルだったグローブスピーダスンはともにリタイアしたこともあり、順調ならミランが獲得する可能性は70%以上はあるだろう。ウプリンターでは調子をあげてきたアッカーマンが3位につけているが、逃げて逃げて逃げまくる新星デレク・ジーがこつこつポイントを重ねて2位に上がっているのが驚き。同様に逃げからステージ2勝をあげたニコ・デンツが4位にいるのも興味深い。ジーデンツはポイント賞を狙うならstage17は逃げようとするはず。それをミランがきっちり差せるかが見所か。

 

山岳賞争いは、上位4人に絞られたと言っていいだろうか(難関山岳で全部山頂フィニッシュで勝つ総合勢がいれば別だが)。この中で山岳賞へのモチベーションが高そうなのはD・バイスヒーリーピノルビオは総合成績との兼ね合いもあり積極的な逃げには入らないと思うが、山頂フィニッシュで上位にはいれば自然にポイントは加算される。3週目は山岳が多いため、まだ誰にもチャンスはあるが、逃げでのポイント加算次第になるようなら逃げでの強さを見せるヒーリーが優位かもしれない。

 

ヤングライダーは、総合でも表彰台を狙うアルメイダを少し遅れてレックネスンが追いかける形。落車で大きく遅れたシヴァコフが順位を下げて、ステージ優勝で総合順位を上げたルビオが4番手にあがった。この後の山岳ステージでもルビオはさらに順位をあげるかもしれないが、トラブルがなければアルメイダ一択だろう。

 

チーム総合バーレーンが逆転で首位に立った。これは総合上位につけるカルーゾ、ヘイグ、ブイトラゴの存在以上にstage14でパスクアロンとズッタリンの二人が逃げて上位に入ったことが大きい(そのステージは総合勢が20分遅れでゴールしたので40分近くイネオスからリードをした)。同様にEFイスラエルも逃げで上位に複数入ったことによりタイムを稼ぎ2位・3位に上がった。ユンボイネオスは3週目の難関山岳ステージで順位をあげていくことが予想されるが、バーレーンを逆転するのは難しそうに思える。バーレーンはここまでリタイア者が出ていないことも利点であり、新城幸也の働きぶりも好調さを強く支えている。

 

 

◎各ステージ優勝選手

 

2週目は6つのステージ中5つが逃げ切りでの勝利。その中で著しく活躍したチームは表を見ると一目瞭然。EFエデュケーション・イージーポストイスラエル・プレミアテックだ。どちらも6ステージ中4人もトップ3に入っている。EFは今季はずっと好調を維持しているが、このジロでも見事に結果を出している。そしてステージ2勝をあげたのがボーラUAE。この4チームはすでにジロは成功といってもいい。

 

stage10(丘陵)は、レース前に9人がDNS。また雨の中で体調を崩す選手が続出し総合4位につけていたウラソフ他4名がDNFと荒れたレースになった。逃げた3人でのスプリントをマグナス・コルトが制してトリロジー(3つのグランツールでのステージ優勝)達成。4位以降はピーダスンらのスプリントになった。マリアローザはGが着用。

 

stage11(丘陵)は、8人がDNS(うち4人はクイックステップ…)。また途中で総合1位〜3位にいるG・トーマスグリッチゲイガンハートが落車(ゲイガンハートは骨折しリタイア)し、2日続けて多くの選手がジロを去るサバイバルな展開に(Covid-19陽性者の多発によりマスク着用が義務化されるなど、ピリピリした雰囲気になっている)。レースはゴール手前で逃げを捕まえて集団スプリントで決着。アッカーマンミランカヴェンディッシュが横並びでゴール、写真判定でアッカーマンが4年ぶりのジロ勝利。マリアローザはGがキープ。

 

stage12(丘陵)は、序盤に形成された30人弱の大人数の逃げグループからアタックして抜け出した3人によるスプリントで、ニコ・デンツが嬉しいグランツール初勝利。スクインシュは惜しくも2位(今大会4度目のトップ10入り)で、バーウィックは殊勲の3位。これまでシングルリザルトすら片手で数えられるほどだったプロ3年目の23歳が大きく名を売った。マリアローザはGがキープ。

 

stage13(丘陵)悪天候によりコースを大幅に短縮、前半の山岳がなくなり、後半の74kmの二つの山岳を登るコースに変更され、序盤から逃げたクライマーたちによる勝負に。ルビオグランツール初勝利、一緒に逃げて果敢にアタックを繰り返したピノセペダは最後に失速。ピノは山岳賞でトップに立った。マリアローザGトーマスがキープ(いま振り返るとイネオスはコース短縮がなければこのステージでマリアローザを手放すつもりだったのかも。だとするとピノマリアローザのチャンスだったな…)。

 

stage14(山岳)は、およそ30名が逃げる展開で、前半の1級山岳での雨もありメイン集団は安全に下りくことを選択し(それでも90km/h以上出てるが)大きくタイム差が広がる。逃げグループからは4名が抜け出すが、速度を上げる追走グループにゴール前ギリギリで差され、ニコ・デンツがステージ2勝目。メイン集団はあえてタイム差をつけて21分遅れでゴールし、マリアローザアルミライルに移動。

 

stage15(山岳)も、20人弱の逃げグループが形成されて、メイン集団はゆくり追いかける展開に。途中の山岳ポイントをヒーリールビオが取り合い、勢いのまま最後の登坂でアタックしたヒーリーに下りでマクナルティが追いつき、さらにフリーゴがゴール前で追いすがるが、3人によるスプリントは脚を溜めたマクナルティが勝利。グランツール初優勝でUAEはステージ2勝目。マリアローザ争いに動きはなくアルミライルがキープ。

 

休息日明けは北上しアルプスに突入、本格的な山岳が始まり総合優勝争いはいよいよ激しさを増していく。



◎その他・雑感

2週目は多くの逃げ切り勝利があった。逃げの勝利は好きなんです。好きなんですが、これはさすがにちょっとどうなんだろう…。いろいろと思うところあって長くなりそうなので、別記事にします。

>準備中

 

 

◎stage9までの成績まとめはこちらから

 

◎レース前の出場選手まとめはこちらから

jamride.hateblo.jp