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ブエルタ・ア・エスパーニャ 2024|出場選手リスト

 

【ブエルタ・ア・エスパーニャ】の出場選手や展望についてざっくりとまとめました。チームの特徴や個別の選手の理解への手助けになれば幸いです。

なおブエルタの記事は需要が少なさそうなので、ツール用のようにステージプロフィールや過去の成績まとめの記事は作成しません。またツールは初心者向けを意識していましたが、ブエルタはある程度観戦経験がある方が読者層と想定しています。

*表内の選手のUCI世界ランクは2024年6月現在で、年齢は2023年12月時点。開幕前にXで公開した表に一部修正を加えています(脚質などに入力ミスがあったので)

 

 

 

 

◎チーム&選手一覧

チーム紹介はゼッケン順で全選手をリスト化。名前、国籍、脚質、年齢、注目度を表にしています。年齢の水色はヤングライダー対象者。注目度は、総合系(ピンク)パンチャー&ルーラー系(グリーン)スプリンター系(ブルー)で色分けし、★の数で強さを表している。なお脚質や注目度は基本的に主観です。*リストはレース前に作成しているので既にリタイアしたり総合成績が遅れた選手もいますがご容赦くださいませ。

 

 

 

総合優勝に近い注目チームは3チーム。まずはディフェンディングチャンピオンのセップ・クスを要するヴィスマ・リースアバイク。ただし昨年のような絶対的な強さはない。今年はチーム全体がずっと不運につきまとわれ、期待はしつつも不安要素の方が多いと感じている。クスは今年はコロナ感染もあり不調が続き、TTが得意ではないことも有利とはいえない。またグランツールを総合リーダーとして臨むのは初めてという部分も未知数。アシストたちも実力者揃いだが、山岳で他に差をつけられるほどの戦力ではなく、苦戦しそうにも感じている。

ツールからチーム名が変わったレッドブル・ボーラ・ハンスグローエは期待が大きい。過去3回マイヨロホを獲得したログリッチは実績・経験値では間違いなく最有力。とはいえツールでの落車・骨折からの回復具合は気になる所であり、度重なる落車は大きな不安要素。ジロ総合2位のダニエル・マルティネスウラソフという総合トップ10を狙える程の実力者によるアシストは強力であり、アレオッティリポヴィッツの若手クライマーも十分期待できるが、全員好不調のムラが大きいことに加えて、今年はチームとして機能しているとは言いづらく期待値は微妙に感じている。どちらにしてもログリッチの出来次第か。

3チーム目のUAEチームエミレーツを本命視したい。アルメイダアダム・イェーツのWエースという体制だが、実質アルメイダがエースと思われる。母国ポルトガルを走ることもモチベーションは高いはず。ツールでは総合トップ10に入る素晴らしい成績を残し(アルメイダ4位・アダム6位)、スイスでは総合ワンツーでフィニッシュと、二人とも状態も良い。マクナルティは他のチームならエース格のレベルであり、シヴァコフヴァインもトップクラスの山岳アシスト。ジョーカー的な存在の新人デルトロも派手な活躍をしそうな期待感がある。メンバー的には全チームで最強といっていいだろう。少しだけ懸念点があるとすれば、ビョーグやポリッツのような平坦路での働き者がいないことが集団コントロールを任された時にどう影響するか。余談だが本来ならエース格の一人であるアユソがメンバーから漏れたのは残念。契約期間を残しながらチーム移籍の噂もあり、不協和音も聞こえている。

他に総合成績で上位を狙えそうなチームは、トレックスケルモースデカトロンオコーナーイネオスカルロス・ロドリゲスモビスターマスクイックステップランダ。それぞれエースも山岳アシストも実績も実力も十分であり、どれだけ登坂力を発揮できるかコンディション面が成績にちょっけるするだろう。

 

ブエルタは大会自体が立ち位置的に選手のアピールの場になっている観点で見ると、好成績を目指す若手のチャレンジと、今年不調であったライダーのリベンジや来季の契約に繋がるアピールをするライダーも多くいる。若手では、ロットファンイートヴェルト(22)、dsmマックス・プール(20)、イスラエルリッチテロ(21)は個人的には活躍を期待している。彼らはレース中の急激な成長もありえるので、最終的にマイヨブランコ候補でもあり、総合上位に入っても不思議はない。不調気味のライダーでは、EFカラパスグルパマゴデュコフィディスマルタンジェイコダンバーあたりは、トップ10に入っても不思議はない実力者だがTTも得意ではないことも含めて、近年のパフォーマンスを見ると上位に入るのは容易ではない。逃げによるステージ優勝狙いになるだろうか。

敢えて名前をあげて恐縮だが、ティベーリアイデブルックスについては非常に期待値の高い若手としてスキルは認めるものの、どちらも個人的には応援したくない。

 

 

 

◎傾向と展望

総合勢はトップクラスのライダーが多く出場する。今大会の特徴として、超がつくほどのクライマー向けであることが大きな理由。総獲得標高は59279m(今年のジロは44650m、ツール52230m)という過酷さ。ステージ構成は、平坦:1/丘陵:7/山岳:11/個人TT:2で、山頂フィニッシュが半分近い9つもある。スプリンターや大柄なルーラーなど登坂が苦手なライダーは参加していない。

また3週目に厳しい山岳が設定されていることと、総合成績を狙うチームが多いことはレース傾向に影響があるだろう。優勝候補にあげられるログリッチやアルメイダは攻めるよりも守るレース展開に終始する可能性も考えられる。絶対的な優勝候補が不在でチーム力も拮抗し、多くのライダーが上位に入るチャンスがあるためで、マイヨロホ争いは最後まで逆転含みの僅差になると今年のグランツールでは一番面白い展開になるかもしれない。全体的にサバイバルな総合争いで生き残ったライダーがマイヨロホに近づくが、その中で勝負をかける戦略や勇気の差が勝負を分けるだろうか。

 

スプリンターは、グローブスが本来の力を発揮できれば頭ひとつ抜けているだろうか。他にはコカールストロングマーリッツアベラストリあたりは集団スプリントでは上位に絡みそう。他にはスプリンターの括りにはしていないが、ファンアールトナルバエスバチェクアドリアヘルマンスパシェカナルビットナーロータはスプリント勝負も期待できる(特に登り絡みで)。

 

引退を表明している選手は以下の通りで、彼らの走りは目に焼き付けておきたい。ヘーシンク(38歳)、ウラン(37歳)、マテ(40歳)。またデヘント(37歳)はワールドチームで走るのは最後と話しているが、下のカテゴリーでレース活動をする以降はある模様。

 

 

◎総合エースたちについて考察した直近の記事はこちら

 

◎移籍市場・残留争いについては別記事を書いています。近日中にアップ予定。