ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

ツール・ド・フランス 2025|成績まとめ(stage15終了時)

 

2週目を終えた【ツール・ド・フランス】は2度目の休息日。マイヨジョーヌ争いは残念ながら終結した。ここまでの成績をざっくり振り返りつつ、注目したい選手やトピックスをまとめました。

 

 

 

 

◎総合成績上位

 

予想通りポガチャルが総合1位を奪取&堅守。2位以下に絶望的な大差をつけて実質的なマイヨジョーヌ争いは終結した。この状況でまだ何が起きるかわからないと言うのは、ポガチャルのリタイアを想定しているような発言であり、真剣にレースをしている彼らに対して失礼だと思う。前週のまとめで指摘していたstage12からのピレネー山岳三連戦がマイヨジョーヌ争いの最重要ステージになり、ポガチャルがステージ2勝を含む一人勝ち。2位ヴィンゲゴーは4分以上差がついているとはいえ彼もまた3位に4分近い差をつけていて、奇妙な言い方だが圧倒的な2位である(*総合争いについての考察は長くなるので別途記事を書く予定)

3位には6位ログリッチからエースの地位を受け継いだリポヴィッツがジャンプアップ。レムコの体調不良によるリタイアがあっての繰上げではあったが、レムコが万全であったとしてもかなり拮抗した勝負をしていたはずである。4位オンレー、5位ヴォークランまでの若手総合エースたちの躍進は、非常に見応えがある(*彼らの考察も上記記事に)。7位ガル、8位トビアス・ヨハンネセン、9位カルロス・ロドリゲスはエースとして立派に立ち振る舞っている順位。カルロドはかなり遅れていたが、積極的に逃げに乗って挽回したのは見事。過去に総合5位になった実績も踏まえると、本来なら普通に走ってもっと上の順位でいてほしい気もするが、遅れても諦めずにチャレンジする姿勢と能力は讃えたい。前週マイヨジョーヌだったベン・ヒーリーは10位で粘っていて好印象。早々に脱落していくと思っていたのでちょっと驚きつつ、将来的に総合成績を争うための経験値を増やしている状態で、このままトップ10以内で終えればヒーリーとEFにとって大成功といえる。同様に11位ジェガットの健闘も印象的。ここまで際立ったリザルトは残せていないプロ2年目・26歳のクライマーで、今年はドーフィネとバスクカントリーとメジャーなステージレースで総合20位以内に入る好成績もあり、ツールの活躍で近い将来ワールドチームへの移籍もあるかもしれない。

14位以降は表には記載していますが、30分以上遅れているのは総合争いと見なせない成績と個人的には考えています。まだ2週目を終えた段階で多くの選手がこれだけのタイム差がついてしまうのは、あまり好ましくない状況に思えます。

マイヨジョーヌ争いは決着したとはいえ、他の総合成績争いはいくつも見所はある。3週目のstage18・19のアルプス連戦で大きくシャッフルされる可能性は十分。

 

 

◎各賞上位

 

各賞の5位までを表にした。こちらも1位争いは趨勢が見えてきた。

 

ポイント賞は、奇妙な争いになっている。1位はスプリンターのミラン、2位は総合エースのポガチャル、3位はパンチャー系のマチューの三つ巴で、3人には等しくチャンスがある。3週目の予測は、平坦ステージは2つだが最終日のパリは今年は実質パンチャー向き。ミランはstage17の勝利と6箇所の中間スプリントが勝負。ポガチャルは3つの山頂フィニッシュ(stage16・18・19)でのポイント次第(stage21も可能性はないとはいえない)。マチューは丘陵のstage20・最終stage21での順位とミラン同様中間スプリント次第。個人的には中間スプリントでミランが5箇所を1〜2位で、stage17を優勝できれば確定に近いと考える。ポガチャルはポイント賞はそれほど積極的に狙わず、山岳ステージも逃げ切りで他の選手が1位になる可能性も高い。マチューも2週目の終盤は何度も逃げに乗っていたが勝ちきれず、疲労の蓄積を考えると難易度は高い。4位ギルマイ、5位メルリールは可能性はないとはいえないが、平坦ステージでミランと争いつつう逆転するほどのポイント差をつけるのは現実的ではない。

 

山岳賞争いは、レニー・マルティネスアレンスマンが双方ともに逃げでどれだけ稼げるか。ここまでは山岳賞に明確に狙いを定めたレニマルと山岳ステージで逃げからのステージ優勝狙いの副産物としてポイントを稼いだアレンスマンは、3週目はお互いを意識する一騎打ちになると予想。二人に割って入る可能性があるのは2位ポガチャル。ポガチャルは決して積極的に行くことはないと思うが、ここまでのステージのように逃げとのタイム差をあまり与えないレースが続くと結果的に上位3位以内にポガチャルがフィニッシュすれば山岳ポイントを多く取ってしまう。3週目は超級が5つもある(うち3箇所がフィニッシュ)ので、三人がどれだけの順位で行けるか。stage16の超級フィニッシュのモンヴァントゥはモンヴァントゥ・チャレンジというレースでレニマルが勝利しているゲンのいい山岳。ここで勝って勢いをつけたい。ヴィンゲゴーは山岳賞は眼中になく、ウッズは上位二人が積極的に狙うなら逆転は難しい。

 

ヤングライダーは、3週目は一番面白い争いになりそう。リポヴィッツオンレーヴォークランの3人はタイム差が少なく逆転の可能性も十分あり、3人ともに同じくらいのチャンスがあると見ている。この争いは総合表彰台の争いに直結するのでモチベーションも高いはず。ここまでの印象では、山岳での登坂で一番いい脚を見せているのはリポヴィッツで、経緯豊富なログリッチがアシストしてくれたら更に優位といえるが、3人とも急成長中の若者でグランツールの実績もまだこれから。3週目のコンディションが勝負を分けることになるだろう(*新人賞争いについての考察は別途記事に)カルロス・ロドリゲスヒーリーはさすがに逆転は難しい。

 

チーム総合は、ヴィスマが2位UAEに少しリード。逆転は可能とはいえ、16分差はなかなか大変でもあり、トラブルがなければこのままの順位になるだろう。3位以降はレッドブルデカトロンアルケアと僅差で順位が変わる可能性はある。6位以降とはかなり差があるので(ちなみに6位イネオスは1:30:10、7位グルパマは1:38:29の差)、この3チームでの順位移動か。山岳では総合上位に複数の選手がいるレッドブルとアルケアが一見優位だが、デカトロンは逃げから区間上位に入る選手がいれば好成績が望める。

 

 

◎各ステージ優勝選手

 

2週目も傾向だけコメントを。逃げ切り勝利は3つ(うちマッチスプリントが1、ソロアタックが2)、ソロアタックが1、個人TTが1つ。

個人ではポガチャルが2勝し、1週目と合わせて4勝、他は1勝づつ。

チーム別ではUAEが3勝で、ウノエックスイネオスが1勝。1週目と合わせて、8チームが勝利し、未勝利が15チーム。ウノエックスはツール初勝利で歴史を作った。またUAEの3勝(2位1回)に対してヴィスマが2位3回(3位1回)と、総合争いと同様にヴィスマはUAEに対して悔しい思いをしている。

選手の国別で1週目と合わせて、ベルギーが5勝、スロベニアが4勝、オランダが2勝、アイルランドイタリアイギリスノルウェーが1勝。残念ながら、母国フランス人は未勝利。もしかしたら今年は厳しいかも…。

 

 

 

◎その他・雑感

昨年も今年もマイヨジョーヌ争いは早々に決着した。やはりツール・ド・フランスにおける最大の関心事であり、ロードレース界にとってあまり良い傾向とは思えない。例えばジロは今年はstage20で総合1位が逆転しサイモン・イェーツが総合優勝した。2023年はログリッチが、2022年はヒンドレーが同様にstage20で逆転していて、最後まで目が離せない展開が多く発生している。ロードレースファンにとってどちらが面白いレースだっただろうか。総合争いの観点なら、僕は間違いなくジロを選ぶ。それでもヴィンゲゴーがいたおかげで、2年前までは名勝負といえるマイヨジョーヌ争いを繰り広げていたが、そもそも二人で5年間も総合1-2位を独占している状況は健全な競争とは言いづらい。少しばかり語弊を承知で言うが、ポガチャル1強時代は彼が成し遂げる“偉業”を同時代で見れる喜びだけに過ぎない。

これはもちろん、ポガチャルが悪いのではない。彼は自ら常に全力で勝ちにいってるだけであり、アスリートとしてもエンターテイナーとしても全面的に正しい。1強にはいくつか要因が考えられる。UAEという金満チームの存在もそのひとつであるし、良くも悪くもトレーニングや食事で選手のアスリートとしての進化を促し、機材も激しい勢いで進化していることもポガチャルという怪物を産み出した一因とも言える。そもそも時代がポガチャル1強を招いた側面も大いに感じる。今年のstage14が昔と今のレースの違いを顕著に表している。1986年stage13のオマージュとしてほぼ同じコースで開催されたステージは、当時優勝したグレッグ・レモンのタイムは6時間6分37秒。今年は優勝したアレンスマンが4時間53分35秒。一番最後のマウロ・シュミットでさえ5時間36分51秒で走りきっている。機材の高機能化や路面状況などの影響もあると思慮するが、この差は現代のレースがどれだけ高速で緊張感を強いられるかを象徴している。また今年のツールで云えば序盤の丘陵ステージは終盤にパンチの効いた山岳を多く配置してクラシックレースのようになった。毎日がワンデーのような展開は明らかに視聴者の関心を引く目的であり全否定はできないが、その弊害として選手はパンチャー系が増えて、集団は常に緊張感を強いられて疲弊していく。序盤から多く発生した落車は、その多くが選手の疲弊や必要以上に強いられる緊張感と無関係ではないはずだ。ガンナ、フィリプセン、アルメイダ、スケルモースなどの主力の序盤からの怪我やリタイアやレムコの体調不良も激しい展開と無縁ではないし、ポガチャルだって一歩間違えばstage11の落車で大怪我を負っていたかもしれない。ここまでで18人がリタイアしている。

クラシックレースのようなコース設定は結果的にポガチャルによるステージ勝利を促した。考えてみてほしい。ミランとメルリールが繰り広げたド平坦ステージのスプリント勝負はつまらなかっただろうか。ヒーリーやアブラハムセンが勝利したステージはつまらなかっただろうか。そんなことはないはずだ。

正しい進化のあり方を、我々もいちロードレースファンとして考えていかなければと思う。

 

◎ポガチャルや現代の環境に対しての感情の吐露です…

 

 

◎一週目の成績まとめ(stage10まで)はこちら

 

◎レース前の出場選手まとめはこちら

jamride.hateblo.jp