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ツール・ド・フランス 2025|成績まとめ(最終成績)

 

【ツール・ド・フランス】の最終的な成績をざっくり振り返ります。ツールが終わってすぐのタイミングでないのは微妙で申し訳ないが、自分の中で今回のツールを消化できない部分もあり、時間がかかってしまった。少し時間をおいたことで冷静に振り返ることができたので、ブエルタが始まる前にアップします。速報性が必要な内容でもないので、まあ良いかと…。どちらにしても読み物というよりも記録的な意味合いのページです。*個人的な考察は長くなるので、ページ下部の《雑感》にリンクを貼りました。

 

 

 

 

◎総合成績上位

 

マイヨジョーヌはタデイ・ポガチャルが圧倒的な力を発揮し4回目の戴冠を果たした。2位はヨナス・ヴィンゲゴーで、この二人だけで過去5年の総合1位と2位を独占。少し嫌らしい言い方かもしれないが、「二人の一騎打ちと他の選手による3位争い」という構図がここ5年のツールドフランスである。良いか悪いかは別として。

3位にはリポヴィッツが入り、4位オンレー、7位ヴォークランの3人による若手総合エースたちは最終週まで総合上位をキープして確かな実力を示し、今回のツールにおいて新しい風を呼び起こした準主役たち。5位ガル、6位トビアス・ヨハンネセンは3週目で順位を上げて、トップレベルのクライマーとしての意地を見せた。8位ログリッチは3週目はリポヴィッツにエースを譲った形で積極的に逃げるなど、ステージ優勝を目指すアグレッシブな姿勢は多くの関係者とファンに刺激を与えた。そして5年ぶりのツール完走でパリで迎えられた彼の勇姿は安堵感と歓びに満ちていて、ようやくマイヨジョーヌの呪縛から解放されたと感じて印象的だった。9位ヒーリーは今年の主役の一人と考えている。stage6での単独逃げ切りによるステージ優勝(stage16モンバントゥ・フィニッシュの惜しい2位も)、stage10で手にしたマイヨジョーヌは間違いなく勲章であり、スーパー敢闘賞も納得の評価である。なおかつ厳しい山岳でも耐え切っての総合9位はGCライダーとしての可能性を大いに感じさせ、EFとしても大成功の大会だった。10位ジェガットも立派な成績。力の劣るプロチームのライダーとしてはトビアス・ヨハンネセンに次ぐ順位で、stage20で見せた逃げによるジャンプアップを狙った根性と執念も讃えたい。残念ながらトップ10からは漏れたが、11位オコーナー、12位アレンスマンはステージ優勝も果たして3週目に大きく総合順位を上げ、チームの総合エースとしての意地を見せた。

13位以降は表には記載していますが総合タイムは1時間以上遅れている。その中でヴィスマが3人もいるのはどう捉えるべきだろうか。アシストの役割だったとはいえ、本来なら彼らはもっと上位にいて有効に機能していたらヴィンゲゴーももう少し勝負できたはずである。それでも彼らの粘りによってチーム総合で1位になれたという部分は認めるとしても、個人的には頑張ったというよりは残念だった印象が強い。

 

 

◎各賞上位

 

各賞の5位までを表にした。こちらも2週目で予想された順位になった。

 

ポイント賞は、ステージ2勝したミランが1位。中間スプリントでも積極的に加算して、ツール初出場にして初受賞。ジロと合わせて二つのグランツールのポイント賞を獲得し、トップスプリンターの勲章を手にいれた。総合よりもスプリンターに力を入れたリドルのチーム編成の勝利といえる。勝負事に「たられば」は禁物だが、フィリプセンマチューアルペシン二人のリタイアがなければもっと苦戦していたはずで、そういう意味では少し幸運もあったか。2位ポガチャルと4位ヴィンゲゴーの二人も総合エースが上位に入ったのはスプリンター受難の大会だったことを象徴している。3位ギルマイは意欲的に狙っていたがstage17での落車もあり伸ばせず、5位テュルジスは本来ならスプリントエースだったジャニエールのリタイアによる代理での参戦と思えばよくやったし、フランスのプロチームとしては好成績だったといえよう。

 

山岳賞争いは、結果的にポガチャルヴィンゲゴーが1位・2位となり、総合エースたちが山岳で存分に力を発揮したともいえるし、逃げのクライマーには厳しいステージ構成だったともいえる。初日に総合争いから脱落したレニー・マルティネスアレンスマンが逃げからの山岳ポイントを加算し積み上げたがあと山二つ分ほど足りなかった。どちらも実力のある若手クライマーなのは間違いないので、さらなる成長を期待したいし、本来は山岳賞よりも総合成績でトップ10を狙っていくべき選手。また個人的にレニマルは応援しているので、スティッキーボトルによる減点は非常に残念であった。どうしても山岳賞を獲りたいという執念はある意味認めたいが、大いに反省してほしい。またバーレーンのスタッフ(というかチーム全体に)も常に不正の疑念が付きまとうのはこういう所。根本的な改善を望む。

 

ヤングライダーは、リポヴィッツがかろうじて逃げ切った。クイーンステージのstage18で2位オンレーにタイム差を縮められたが、翌日のstage19で逆に突き放した根性と登坂力は見事。二人とも厳しい山岳ではポガチャルとヴィンゲゴーの次に登れていたこととタイムトライアルも上位に入るスキルもあり、ますます今後が楽しみな存在。3位ヴォークランは3週目でやや力尽きたとはいえ、総合でも7位という成績は立派。激坂は強いが長い距離の登坂には課題があることは明確だったので今後GCを狙っていくなら、そのあたりの向上が鍵か。4位ヒーリーはと5位ラウル・ガルシアも好成績。GCライダーとしての適性を示したと言え、今後の成長を期待したい。ガルシアはタイム差があり過ぎるので総合で好成績というには時期尚早ではあるが。

 

チーム総合は、ヴィスマが1位で、2位UAEになんとか意地を見せた形。これもUAEのアルメイダがリタイアしていなかったら負けていた可能性は高く、かろうじて勝てたという印象も残る。3位レッドブルは総合上位に入った新旧エースの二人の働きが大きく、チーム全体の総合力をつけてきたことが窺える。4位アルケアはチーム存続の危機がありながら選手たちはかなり頑張ったと思う。母国のレースで意地を見せた彼らライダーやスタッフのチーム全体の健闘を個人的には大いに讃えたい。5位デカトロンもガルを中心に3週目は最終の山岳ステージでも総合エースだけになるような展開でもアシストが残って頑張っていたのが結果に繋がっている。来季の新しいスポンサーにもいいアピールになったはずである。ただし、4位と5位の2チームはタイム差も考えると他の強豪チームが自滅した結果のたなぼたとも感じている(イネオス、バーレーン、モビスターなど)。

 

 

◎各ステージ優勝選手

 

こちらは3週目だけでなく全21ステージの表彰台の選手を一覧に。全体的な傾向だけコメントを。

レースの決着では、集団スプリント:3(スプリンター受難)、小集団スプリント:5、逃げ切り勝利:8(うちマッチスプリント:2/ソロアタック:6)、ソロアタック:2、個人TT:2。

個人ではポガチャルが4勝。メルリールミランアレンスマンが2勝、他は1勝づつ。

チーム別ではUAE:5勝、スーダル:4勝、アルペシン:3勝、ヴィスマリドルイネオス:2勝、EFウノエックスジェイコ:1勝。計9チームが勝利し、未勝利が14チーム。プロチームではウノエックスのみ1勝をあげた。

選手の国別で1週目と合わせて、ベルギー:5勝、スロベニア:4勝(ポガチャル1人で)、オランダ:3勝、イタリアオーストラリア:2勝、アイルランドイギリスノルウェーフランスが1勝。

全体を通した印象では逃げ切り勝利が多く、逃げ切り勝利が好きな自分的にはstage6ヒーリーの残り40kmからの目の覚めるようなソロアタックからの逃げ切りのお手本のような力強い勝利と、stage16のモンバントゥで有力選手たちが次々にアタックを繰り広げて、最終的には突然現れたファンウィルデルの好アシストからのヴァランタン・パレパントルによるフランス人唯一の勝利になった二つのステージをベストステージにあげたい。

またコース発表時から多くの賛否の声が上がり議論されたモンマルトルの石畳の坂を取り入れた最終ステージはファンアールトの劇的な勝利で多いに盛り上がって、結果で見れば成功だったといえるだろう。ここにマチューやレムコがいたら更に熱いレースになったと思う。ちなみに個人的にはモンマルトルの丘については賛成と反対と半々の気持ちである。新しいことにチャレンジする姿勢は尊重したいし、最終日まで総合争いがあって目が離せなくなる展開を狙うという意味では賛成であり(近年の総合タイムが大きく開く傾向では意味がないと感じる)、最終日のシャンゼリゼはトップスプリンターたちの競演という伝統を守ってほしいという気持ち的には反対で、どちらも有りという認識。また今年のように雨が降る場合は石畳の下りは危険であり、最終日に落車によってリタイアする選手が出るとか重要な総合順位に大きく影響が出る可能性については“大反対”である。

 

 

◎その他・雑感

あくまで偏見に満ちた個人的な感想で恐縮だが、今年のツールには不満を覚えた。タデイ・ポガチャルヨナス・ヴィンゲゴーによるお約束のようなマイヨジョーヌ争いは、2週目には(実質1週目とも感じている)早々に決着してしまった。ヒリヒリするような緊張感は2週目以降は感じられなかったのは僕だけではないだろう。とはいえ、彼らが悪いわけではない。抜きん出た実力をきっちりと示したことには敬意を払いたい。だって、この二人がリタイアしてしまったら、もっとがっかりしていたはずで、この二人以外の選手がマイヨジョーヌを手にしたら「なんか違う」と感じてしまうだろう。この悩ましい問題は、それに続くライダーの出現を待つしかないと思う。「4強」などとメディアではいわれがちだが、レムコは怪我によるアクシデントがあったとはいえまだ二人には及ばないレベルで、ログリッチは総合争いから手を引いてしまった。少なくてもあと2年は(一強に近い)二強時代が続くと思われる。

ポガチャルのモチベーションが下がっていることも気がかりである。彼はツール後に引退をほのめかす発言をした。2028年のオリンピックまでは頑張る=その後はレースをする意味を感じない、という趣旨の発言であった。まだ若いとはいえ、ほとんどの勲章は手に入れてしまったし、マチューとヴィンゲゴーがいなかったら(TTでのレムコも強敵の分類か)、彼は本気を立ち向える相手がいない状態である。チームとの契約は2030年までである。それまでには、ポガチャルを実力で凌ぐような(せめてライバルといわれるレベルの)選手の台頭を心から望む。

 

上記も含めた感想は長くなるので別記事にします。内容としては、

◎ぶっちゃけツールは面白かったのか

・タイム差のつき過ぎた総合争い ─ 異次元の二強時代

・ステージ優勝もポガチャルの匙加減?

・では、ジロは面白かったのか

 

 

◎一週目の成績まとめ(stage10まで)はこちら

 

◎二週目の成績まとめ(stage15まで)はこちら

 

◎レース前の出場選手まとめはこちら

 

◎ポガチャルや現代の環境に対しての感情の吐露です…

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