1週目を終えた【ブエルタ・ア・エスパーニャ】は最初の休息日。ここまでの成績を振り返りつつ、注目したい選手やトピックスをざっくりまとめました。
◎総合成績上位

1週目はいくつかの山岳ステージと山頂フィニッシュを越えたが、総合成績はまだ僅差で展開。ヴィンゲゴーを基準に考えると14位ガルシアピエルナまでおよそ3分差で総合優勝に絡むタイム差と考えられる。
マイヨロホはトースタイン・トレーエン。サプライズな選手だが、1週目を終えて最終的な総合優勝候補ではない選手が着用している可能性という意味では、なかなか丁度いい感じの選手ともいえる。stage7で逃げから2位に入りヴィンゲゴーたちから大きくタイム差を稼いで総合リーダーになると、そのままキープしている。バーレーンとしてはティベーリとブイトラゴの両エースが遅れてしまい、トレーエンをエースとして少しでも引っ張る形。休息日明けの山頂フィニッシュになるstage10を凌げればあと3日間ほどマイヨロホでいられるかもしれないし、最終的に総合トップ10は彼らにとって目標になる。
2位以降の上位は各チームの総合エースたちがずらりと並ぶ。ヴィンゲゴー、アルメイダの二人は最終的なマイヨロホ候補として順当に実力を発揮している。*総合争いについては下記雑感でも言及。4位ピドコックは想像よりも上位にいる。本人が総合上位を狙うと宣言し、そもそもイネオスを離れた理由がGCライダーとしての扱いへの不満からだったとはいえ、これほど総合に強い選手になるとは思っていなかった。ピドコックの才能には改めて敬意を払いたい。難関山岳をどれだけ上位にこなせるか。5位ガルと6位チッコーネは、まずまずの好位置。7位フォルトゥナートは逃げでジャンプアップ。このままできるだけ上位で粘りたい。8位ジョーゲンソンはヴィンゲゴーをアシストしながらでいい位置をキープしている。トップ10に入る力は間違いなくある。9位ヒンドレーと10位ペリッツァーリはこのままの好位置をキープしつつ、どこかで勝負できると面白い。ダブルエースと呼べる体制は武器であり、レッドブルとしてチーム戦略の巧みさを問われる。11位ベルナルはここからもっと上位を狙いたいが容易ではないかもしれない。
ここまでの登坂で総合エースたちの状態は確認できたが、まだまだ挽回可能な範囲である。2週目の山岳ステージが最終的な総合成績を左右することになるだろう。特に注目したいのはstage14の激坂アングリル。大きなタイム差がつく名物の難所で見どころ。
◎各賞上位

各賞の5位までを表にした。
ポイント賞は、まだ混沌としている。登り絡みのステージや中間スプリントで積極的にポイントを積み重ねた本命ピーダスン、平坦ステージでは格の違いを見せつけているフィリプセン、ステージ優勝こそないもののポイントを外さず上位に絡むヴァーノンのスプリンター勢に加えて、山頂フィニッシュで多くのポイントを稼いでいるヴィンゲゴーとチッコーネがそれを追う展開は、かなり僅差の接戦。現状ではチームのやる気も含めて(今年の全グランツールのポイント賞獲得の偉業がかかっている)登坂力とタフさを兼ね備えたピーダスンが中間スプリントを制していければ有利と考えるが、平坦ステージのフィニッシュでは上位に入れないのは苦しいところ。ゴデュに敗れたstage3は本当に悔しかっただろう。
山岳賞争いも、まだ全くわからない。1週目では平坦ステージと平坦・山頂フィニッシュという山岳ポイントが少ないステージが多かったためどの選手も多くのポイントを稼げなかったからだ。つまり2週目以降の成績次第で誰にでもまだチャンスはある。stage6とstage7の山岳フィニッシュを制したヴァインとアユソ、逃げからコツコツとポイントを積み重ねたフェルヴァーケとクイン、ニコロウが上位5人だが、過去にブエルタで山岳賞を取っているヴァインがチームから自由を与えられているならば、実力的には取れる可能性は十分ある。それは総合争いから脱落した(おそらく意図的に)アユソにもいえることで、stage10でどちらが逃げに入るかは注目したい。他には総合エースたちの動きにも注目。彼らが本気で山頂フィニッシュを狙ってくるなら本命と言ってもいいが、実際にはここに名前のない逃げのクライマーも絡んでくるかもしれない。例えば、フリーゴ、フォルトゥナート、ヴェルマークなど。
ヤングライダーは、ペリッツァーリが首位、リッチテロが2位。ガルシアピエルナ、ルセルフも含めて注目していた若手が好位置をキープ。ややタイム差がついているとはいえ、5位ロペスも含めて全員に十分チャンスがありそう。ここまでの印象では、登坂力ではリッチテロ、チーム力と経験値ではペリッツァーリという印象だが、レッドブルはヒンドレーで総合を狙う場合はペリッツァーリはアシストとして力を使う場面もでてくるかもしれない。逃げからのジャンプアップがあったとはいえ予想以上に健闘しているガルシアピエルナは、個人TTも得意なので穴的な存在になりえる。個人的に期待していたルセルフはエースのランダが総合争いから脱落したのは追い風でもあり、すでにチームは二人もリタイアしているのは逆風でもあるか。
チーム総合は、UAEにが2位ヴィスマに少し差をつけているが、逃げに入ってステージを取ったヴァインとアユソの分のタイム差といえ、実質チーム差はほぼないレベルに感じる。この後タイム差がつきやすい山岳ステージでは、アユソやヴァインは逃げからのステージ優勝を狙いそうではあるがそれほどタイム差がつかなければ、むしろヴィスマの方がアシストは強力に感じているので、逆転する可能性は考えられる。3位以降はまだどこが強いかわからない。逃げによる上位入賞でタイム差を稼ぎそうなアスタナやバーレーン、総合上位に複数入りそうなデカトロンとレッドブルあたりもまだチャンスがありそう。ただし3位以降はどのチームもそれほど成績にはこだわらないだろう。
◎各ステージ優勝選手

それぞれのステージ展開は省略し、傾向だけコメントを。
集団スプリント:4、小集団スプリント:1、逃げ切り勝利:2(ソロアタック)、ソロアタック:1、チームTT:1。
個人ではフィリプセンとヴィンゲゴーが2勝。他は1勝づつ。
チーム別ではUAEが3勝で、アルペシンとヴィスマが2勝、2チームが1勝、未勝利が18チーム。勝利はないが2位2回のリドルと2位3回のイスラエルは悔しい結果で、2週目以降の雪辱に燃えているだろう。
選手の国別ではベルギーとデンマークが2勝、フランス、イギリス、オーストラリア、スペインが1勝。
2週目以降は多くの逃げ切り勝利に個人的に期待。休息日明けのstage10・11・12は特にチャンス。3週目もstage16・17は逃げ向き。山岳賞を狙う選手と総合から遅れた選手たちは積極的に逃げそう。例えばヴァイン、アユソ、カストリーリョ、アルミライユ、ティベーリ、テハダ、ロペス、ゴデュ、ヴェルマーク、フリーゴなどは逃げから勝利を狙える実力者。ベロキ、ビジオー、ガロフォリ、ローランあたりの若手もうまく逃げに乗ればワンチャンあるか。
◎その他・雑感
総合争いの趨勢と、個人的に考えさせられた二つのことについて軽く述べたい。
ブエルタの1週目は、ツールと比較して穏やか且つバラエティ感のあるレースが続いていて、個人的にはとても好印象である。ステージ毎に活躍する選手やチームが変わり、最後まで誰が勝つのかわからない展開であること。逃げの選手にも総合エースにも、スプリンターやアタッカーにも等しくチャンスがあるように感じているし、新人もベテランも多様な選手が活躍しているのも良い。他には致命的なトラブルや不用意な落車が少ないこともレースを見る上では気持ち良さにも繋がっている。様々な要因があると思うが、ステージを狙うチームと総合を狙うチームがはっきりと分かれていること、スプリンターが少ないことも落車の減少の要因かもしれない。これについてはもう少し後日別記事にして語りたいと思う(*“良いレース”とは的な内容の予定)。
総合争いに目を向けると、やはりヴィスマとUAEの一騎打ちになりそうな雰囲気が漂っている。ここまでの印象ではヴィンゲゴーの状態の良さが目立つ。山頂フィニッシュのステージを二つ勝ちきった登坂力はもとより、すべての局面で後手を踏むことなく対応する姿には余裕を感じるし、彼は基本的に1週目よりも2・3週目に力を発揮するタイプなのでこの後状態を上げてくると予想している。クスとジョーゲンソンの二人のアシストも重要な登りの場面で強力に機能していて、山岳が本格化してくるとさらにその差は開きそうに思える。一方UAEは、アルメイダの状態は良さそうであり、チームとしてステージを3連勝するなど一見状態が良さそうに見えるが、内実は不安たっぷりと感じてしまう。Wエースとみられていたアユソが早々に総合争いから離脱。ステージ優勝したヴァインは好調そうだが、その分山岳賞への色気もありそうで総合エースのアシストとしてはあまり機能しているとは思えない。実際にstage9の登坂ではアルメイダが孤立してしまった。この2チームを比較した場合、選手の成績や能力的にはほぼ互角だが、チームワークにはかなりの違いを感じてしまうのは僕だけではないだろう。どれも具体的に数値化できない主観的なイメージで恐縮なのだが、ヴィンゲゴーという絶対的なエースの存在と各選手の明確な役割分担、チームプレイに徹する選手の性格、監督やスタッフの戦略や計画性・準備など、それらはヴィスマがUAEを尽く上回っているように思える。例えは適切ではないかもしれないが、UAEは四番打者ばかり集めた野球チームのような印象を持っている。
チームワークについては後日別記事にしてもう少し語りたいと考えてます(*“良いチーム”とは的な内容の予定)。
◎レース前の出場選手まとめはこちら
