ロードレースみるひと

ロードレース観戦ガイドのブログ

世界選手権 2022(ロードレース・エリート女子)|リザルト

 

すごいものを見た。このレースは伝説になると言っても大袈裟ではないだろう。

9月24日に開催された【世界選手権(ロードレース・エリート女子)】は衝撃の結末だった。多くの選手に勝つ可能性があり、有力選手たちが自らの得意な展開に持ち込むべく様々なアタックをしかけ、最後までハラハラするレースは、最後の1分にとんでもないドラマが待っていた。

*表内の選手のUCI世界ランクは2022年8月末自転、年齢は2021年12月時点です。

 

 

 

 

◎レース結果:トップ10

果たしてレース前にこの結果を予想した人はいただろうか。優勝したのは3日前に落車し右肘を骨折したアネミエク・ファンフルーテン。レースは予想どおり市街地の周回コースの坂で集団はばらけて多くのスプリンターたちは先頭集団からいなくなった。残り25km、プレザント山で抜け出した5選手に優勝は絞られるかに思われたが、オランダを中心に懸命に牽引する追走グループが追いつき、最後のプレザント山で10名ほどの先頭グループにしぼられる。そのまま集団スプリントになると誰も思った残り700m、集団を右側から猛スピードで抜き去っていくひとりの選手、手負いのファンフルーテンが渾身の一撃を繰り出して、2度目のアルカンシェルを手にいれた。集団ではさすがのスプリント力を見せて2位に入ったコペッキーが、ハンドルに拳を叩きつけて悔しがった。

終わってみればオランダ、ベルギー、イタリアが表彰台に入るという結果は、さすが自転車強豪国。なお参考までに普段所属するチームも記載しておく。

 

◎優勝候補

【予想文面】→ 本命にしたい選手のひとりに事件が起きた。オランダのエースと目されていたアネミエク・ファンフルーテン20日に行われたミックスリレーで転倒し病院へ搬送。右腕の骨折が発表された。現時点の情報(9月22日現在)では棄権はせず、ぎりぎりまで痛みの様子をみて出走の可否を判断するとのこと。普通なら優勝予想どころかレースに出ることすらありえない事態だが、彼女には前科がある。2年前のレースで落車し手首を骨折したが、そのわずか1週間後の世界選手権にギプスをつけて出場し、銀メダルを獲得している。今年の4月末にも手首を骨折したが、6月のジロではマリアローザを着ている。それらよりも厳しい状況と想像されるが、彼女の可能な限りの回復を願いたい。

それを踏まえて、優勝候補に3人をあげたい。一人目はデミ・フォレリング(オランダ)。スプリンターが登りで遅れることを想定すると、エースはフォレリングが担うと予想している。ツール2位、ブエルタ3位と好調をキープし、ステージレース中心ではあるが春にはリエージュ2位、フレッシュワロンヌでも3位と登りのあるワンデーでも抜群の強さを発揮している文句無しの優勝候補。二人目はロンゴ・ボルギーニ(イタリア)。イタリアは今回オランダをしのぐほど選手層が充実している印象。普段からトレックでもチームメイトでWエースともいえるロンゴボルギーニとバルサモを中心にチームの結束は固く、ロンゴボルギーニは今年のグランツール全てでトップ10に入り、パリ〜ルーベの優勝を筆頭に4つのUWTワンデーレースでもトップ10に入り、優勝候補筆頭と考えている。イタリアでは若手のペルシコも勢いがあって非常に頼もしい。ジロで総合7位、ツールで総合3位とその後も表彰台に上がり続け、一気にアルカンシェルを獲得してもなんら不思議ではない。そして優勝候補三人目はカタジナ・ニエウィアドマポーランド)を推したい。ここ2年ほど勝利から遠ざかっているが、ビッグレースではことごとく上位に入る安定した強さは誰よりも際立ち、世界選手権でも常に常に入っている。今回のコースは彼女向きだろうと考えて期待している。

他に表彰台に絡みそうな好調の選手は、開催国で地元の応援も心強いグレース・ブラウン(オーストラリア)は個人TTでの力強い走りも好印象。直近のブエルタでも独走でステージ優勝した勢いもある。人気者のルドヴィグデンマーク)は春のワンデーで上位に入りながらも勝ち切れない印象ではあったが、ツール・ファムのステージ優勝から一皮むけた雰囲気もあり、つい最近のスカンジナビアツアーでも総合優勝し、最も勢いを感じる選手の一人。ラブー(フランス)も成長中の若手クライマー。ルドヴィグもラブーも今年のグランツール全てでトップ10に入った選手であり実力は疑いがない。リッパート(ドイツ)もワンデー中心に好成績を連発し、シャベイ(スイス)、ガルシア(スペイン)、モールマン南アフリカ)もトップ10には余裕で入りそうな実力者たち。他の候補は下記表を参照。

【結果】→ 予想の結果は悪くないと思う。トップ10のうち9人は予想。本命視していたフォレリングDNSは想定外だったが、彼女の欠場によってオランダはファンフルーテンで勝負せざるをえないのではとも思ったが、さすがに優勝は驚いた。残り25kmで5人(ロンゴボルギーニルドヴィグリッパートニエウィアドマモールマン)が抜け出したときは予想どおりの展開!と思ったが、そこでレースは終わらなかった。

 

 

 

◎その他の注目選手

【予想文面】→ 本命今回は基本的にスプリンター寄りの選手は優勝候補からは外した。現アルカンシェルバルサ(イタリア)、絶対女王のフォス(オランダ)、バスティアネッリ(イタリア)、マンリー(オーストラリア)、ノルスゴーデンマーク)、コペッキー(ベルギー)らのクラシックレースで活躍していた実力者たちだが、周回コースの坂で遅れると想像している。だが、ゴールスプリントまで残る展開になれば一気に優勝候補になる。

U23(23歳以下)での優勝候補ではジョルジ(イギリス)、個人TTで金メダルだったグアジー(イタリア)、ツール・ファムのヤングライダーだったファンアンローイ(オランダ)がアルカンシェル候補。デウェルド(ベルギー)もさらに若い世代ながら期待値が高い。

東京五輪金メダルのキーセンホファーオーストリア)も注目。序盤から逃げる可能性が高いし、彼女ならひとりでも逃げるが、TT巧者のフォークナーアメリカ)やローセル(スイス)などの有力選手が一緒についていくようだと棄権な逃げグループになりえる。日本から参戦するワールドツアーに唯一所属する與那嶺選手もここひと月ほどレースで好成績をあげていることもあり要注目である。

【結果】→ バルサフォスなどスプリンターたちが遅れるのはほぼ想像通りだったが、コペッキーが最後まで先頭集団に残れたのは彼女の強さを改めて思い知った。男子ででいうファンアールトみたいな選手である。ステージレースはともかくワンデーなら激坂でなければ勝負できる。なおU23では12位に入ったニアム・フィッシャーブラックアルカンシェルに。期待していたキーセンホファーは未出走であった。