【ツール・ド・フランス】紹介記事第3弾は、コースプロフィール。今年は長い歴史の中でも初めてとなる二つの特徴がある。ひとつ目はイタリアがグランデパール(開幕地)になることと、もうひとつはニースがゴールになること。例年ならばパリのシャンゼリゼがゴールになるのだが、今年はパリ五輪の影響でゴール地点が変更された。
イタリアで最初の三日間を過ごした後、アルプス山脈をまたいでフランスに入り、北上してから中央山塊を南下、ピレネー山脈から再びアルプスで総合成績を競った後に地中海沿いのニースでゴールを迎えるというざっくりというと反時計回りにフランスを一周するようなルート。総走行距離は3484kmに及ぶ、長く熱い3週間の旅である。
◎ステージプロフィール
各ステージの特徴を箇条書きでざっくりまとめた。コース名(地域名)、日にち、《平坦/丘陵/山岳/個人TT》の区分、走行距離、獲得標高、山岳の種類と数、ゴール状況(山頂フィニッシュ/集団スプリント等)を記載。今回のステージは平坦=8/丘陵=4/山岳=7(うち山頂フィニッシュ=5)/個人TT=2で構成される。
またステージに向いてるタイプの選手も優勝候補として記載。実際には調子の良し悪しやチーム状況(総合狙いかステージ狙いか、アシスト専念か自由があるか等)やレース展開によって(逃げは強力か、追走グループはタイム差をつけるか等)勝負に絡む選手は変わるので、あくまで目安程度にご覧下さい。*個人的に特に注目したいステージは《stage1・9・15・19・21》で、コメントもしてます。
◎1週目
まずは1週目。イタリアで始まるツールはいつもと少し雰囲気も違うかもしれない。最初のステージから注目度は高い。
◆Stage1(6月29日/丘陵):FLORENCE > RIMINI
距離206km|獲得標高3600m|2級山岳×3、3級×4
◎ステージ優勝予想:パンチャー(or総合勢)
最初のステージからハードな展開になるか。アルデンヌクラシックのような激しいアップダウンのプロフィール。ひとつひとつは然程でもないが、連続する7つの山(丘ではなく山)は、ピーダスンやマシューズ等“登れるスプリンター”であっても困難で、最後の30km弱はダウンヒルからの平坦フィニッシュになることから、山岳で抜け出した30人程度の先頭集団によるスプリントで決着がつくと予想。マチューやファンアールトでも厳しいかも。順当にいけば登りを苦にしないスプリント力のあるライダーで、母国開催でイタリア王者になったベッティオールを筆頭にファンヒルス、アランブル、ピドコック、ジングレ、グレゴワールを優勝候補に挙げたい。今年勢いのあるローランス、ラペラも注目。総合エースたちは先頭集団に残りつつもさすがにステージ優勝争いはしないと思うのだが(厳しい山岳連戦のある3週目にピーキングをしたいので)、ポガチャルという規格外の存在がライバルにとっては不気味。波乱が起きそうな緊張感のあるステージになる可能性もある。
◆Stage2(6月30日/丘陵):CESENATICO > BOLOGNE
距離199.2km|獲得標高1850m|3級×5、4級×1
◎ステージ優勝予想:パンチャー & 登れるスプリンター
前日の顔ぶれに加えて“登れるスプリンター”が優勝候補か。順不同で、マッズ・ピーダスン、マシューズ、コカール、ファンデンベルフ、ドゥリー、ギルマイ、クリストフが有力。マチューやファンアールトにもチャンスはありそうだが、スプリンターが残っていると勝つのは厳しい。
◆Stage3(7月1日/平坦):PLAISANCE > TURIN
距離230.8km|獲得標高1100m|4級×3
◎ステージ優勝予想:スプリンター
ピュアスプリンターの見せ場第一ラウンド。今大会最長の230kmという距離で、優勝候補はフィリプセンを筆頭に、フルーネウェーヘン、ヤコブセン、サム・ベネット、テイッセン(ギルマイ)、カヴェンディッシュ、ピーダスン、コカール、ドゥリー、デマール(モッツァート)あたり。バウハウス、ファンデンベルフ、ガビリアにもチャンスはあるか。個人的にはツール初出場のアッカーマンにも頑張ってもらいたい。
◆Stage4(7月2日/山岳):PINEROLO > VALLOIRE
距離139.6km|獲得標高3600m|超級×1、2級×2
◎ステージ優勝予想:クライマー(or 逃げ)
最初の山岳ステージはイタリアからフランスに入ってアルプス山脈を走る。まだ脚慣らし的な登坂で総合争いは本格化しないと思うが、総合エースたちの調子の良し悪しはある程度測れると想像。距離が短めの割に獲得標高はそれなりにあるのは曲者で、UAEがふるい落としを仕掛けてくる可能性もある。総合争いからの脱落者は出るかも。
◆Stage5(7月3日/平坦):SAINT-JEAN-DE-MAURIENNE > SAINT-VULBAS
距離177.4km|獲得標高1050m|4級×2
◎ステージ優勝予想:スプリンター
*stage3のコメント参照
◆Stage6(7月4日/平坦):MÂCON > DIJON
距離163.5km|獲得標高1000m|4級×1
◎ステージ優勝予想:スプリンター
*stage3のコメント参照
◆Stage7(7月5日/個人TT):NUITS-SAINT-GEORGES > GEVREY-CHAMBERTIN
距離25.3km|獲得標高300m|山岳なし
◎ステージ優勝予想:TTスペシャリスト & 総合エース
総合争い第2ラウンド。優勝候補はTTスペシャリストで、アルカンシェルのレムコ、キュング、ファンアールト、アルミライル、ランパールト、ポリッツ、ダーブリッジ、ビッセガー、ソブレロ、オリベイラ、ヴァーレンショルト、マッズ・ピーダスンは実力者。上位に絡みそうな総合勢は、ヴィンゲゴー、ポガチャル、ログリッチ、アユソ、アルメイダ、Gトーマス、ウラソフあたり。
◆Stage8(7月6日/平坦):SEMUR-EN-AUXOIS > COLOMBEY-LES-DEUX-ÉGLISES
距離183.4km|獲得標高2400m|3級×2、4級×3
◎ステージ優勝予想:登れるスプリンター
*stage2のコメント参照
◆Stage9(7月7日/丘陵):TROYES > TROYES
距離199km|獲得標高2000m|4級×4
◎ステージ優勝予想:クラシックレーサー
コース発表された時に話題になったステージである。グラベル(未舗装区間)が14セクターも配置された、スタートからゴールまでトラブル不可避な油断ならないコース。個人的には“楽しみ”とはいえず“不安”しかない。荒れた道で有名なストラーデビアンケもパリ〜ルーベも大好きなレースだが、グランツールにそういう趣向はいらない派である。どちらにしても軽量なクライマーが多い総合エースたちには試練の多いステージでとにかく安全に無事にタイム差もつかずに終えられることを願う日だ。マチュー、ファンアールト、ピドコックの“シクロクロス三銃士”はもちろん優勝候補筆頭だろう。総合勢ではストラーデビアンケを制したポガチャルはもちろん、MTB出身であるベルナルも得意そうである。
ここで、ようやく最初の休息日。
◎2週目
◆Stage10(7月9日/平坦):ORLÉANS > SAINT-AMAND-MONTROND
距離187.3km|獲得標高950m|山岳なし
◎ステージ優勝予想:スプリンター
*stage3のコメント参照
◆Stage11(7月10日/山岳):ÉVAUX-LES-BAINS > LE LIORAN
距離211km|獲得標高4350m|1級×2、2級×2、3級×2、4級×1
◎ステージ優勝予想:総合エース & クライマー
総合エースたちはまだ動かないだろう。山岳賞争いは本格化してきそう。逃げグループに総合タイム差がついた有力選手がいればチャンスはあるか。
◆Stage12(7月11日/平坦):AURILLAC > VILLENEUVE-SUR-LOT
距離203.6km|獲得標高2200m|4級×3
◎ステージ優勝予想:スプリンター
*stage3のコメント参照
◆Stage13(7月12日/平坦):AGEN > PAU
距離165.3km|獲得標高2000m|4級×2
◎ステージ優勝予想:登れるスプリンター(or 逃げ)
*stage2のコメント参照
◆Stage14(7月13日/山岳):PAU > SAINT-LARY-SOULAN PLA D'ADET
距離151.9km|獲得標高4000m|超級×2(フィニッシュ)、2級×1
◎ステージ優勝予想:逃げのクライマー(or 総合エース)
総合争いが本格化するであろうステージで、ピレネー山脈二連戦の初日。総合勢は翌日に備えてやや牽制気味と想像しつつ、今大会最初の山頂フィニッシュはそれなりのタイム差がつく可能性は十分。
◆Stage15(7月14日/山岳):LOUDENVIELLE > PLATEAU DE BEILLE
距離197.7km|獲得標高4800m|超級×1(フィニッシュ)、1級×4
◎ステージ優勝予想:総合エース(or 逃げのクライマー)
フランス革命記念日であり、盛り上がること必至。ピレネー山脈二連戦の二日目は獲得標高が5000mに迫るクイーンステージで、総合争いに大きな動きがあるはず。あまり考えたくはないが、決定的な差がつく可能性すらある。ちなみにフィニッシュ地点は2015年stage12で使用され、勝ったのはホアキン・ロドリゲス。今大会の出場選手では、トップ10にフルサン、バルデ、メインチェスが入っている。スタート直後からの1級山岳登坂はスプリンターたちにはタイムカットとの戦いも強いられる試練の1日になりそう。
ここで二度目の休息日。
◎3週目
◆Stage16(7月16日/平坦):GRUISSAN > NÎMES
距離188.6km|獲得標高1200m|4級×1
◎ステージ優勝予想:スプリンター
*stage3のコメント参照。スプリンター最後の優勝チャンス、ポイント賞争いも決着か?
◆Stage17(7月17日/山岳):SAINT-PAUL-TROIS-CHÂTEAUX > SUPERDÉVOLUY
距離177.8km|獲得標高2850m|1級×1、2級×1、3級×1(フィニッシュ)
◎ステージ優勝予想:逃げのクライマー(or 総合エース)
*逃げ向きのステージ
◆Stage18(7月18日/丘陵):GAP > BARCELONNETTE
距離179.5km|獲得標高3100m|3級×5
◎ステージ優勝予想:逃げのクライマー(or パンチャー)
*超逃げ向きのステージ
◆Stage19(7月19日/山岳):EMBRUN > ISOLA 2000
距離144.6km|獲得標高4400m|超級×2、1級×1(フィニッシュ)
◎ステージ優勝予想:総合エース(or 逃げのクライマー)
この日から3日間にわたって総合争いに直結する厳しいステージが続く。疲労もピークに達しているはずであり、どのチームもアシストたちも疲弊しいくつかのチームは人数も減らしている可能性が高い。そしてもしかしたら、この日までに総合リーダー争いは決着している可能性もあるが、ここまででまだ逆転可能な差なら(タイム差2分以内なら)目が離せない総合争いが繰り広げられるか。ステージ優勝は中盤に向かっていく超級山岳で形成される逃げグループに乗るクライマーになる可能性が高いと思う。総合タイム差が10分以上ついている場合、カラパス、ヒーリー、チッコーネ、プールス、ジー(あるいは山岳賞狙いに変えた総合エースたちもいるかもしれない。レムコやバルデ、ブイトラゴあたりがいると面白い)が優勝候補と想像(ここまでの状況で顔ぶれは違う可能性も高い)。それとは別に、総合争いが繰り広げられるはずだ(トップ10圏内など)。このステージでも決着がつかなければ翌日のstage20も見逃せない山岳決戦になる。このステージの前までポガチャルが首位にいて1分差以内でヴィンゲゴーが追う展開だと最高のドラマになりそうだが…。
◆Stage20(7月20日/山岳):NICE > COL DE LA COUILLOLE
距離132.8km|獲得標高4600m|1級×3(フィニッシュ)、2級×1
◎ステージ優勝予想:総合エース(or 逃げのクライマー)
前日と似た展開を想像。前日より距離が短いのに獲得標高は高いという残酷なコース。しかも翌日は個人TTと総合争いに逃げ場がない。どれだけ使えるアシストが残っているか、チーム全体のコンディションは前日よりも問われそう。
◆Stage21(7月21日/個人TT):MONACO > NICE
距離33.7km|獲得標高650m|3級×5、4級×1
◎ステージ優勝予想:総合エース
登りありの中距離個人TTによる最終決戦のステージ(といいながら、個人的な予想では既にマイヨジョーヌは決着している可能性は高いと思う)。途中の2級山岳により重量級のTTスペシャリストは脱落しそうで、総合勢が上位を占めるはず。上位勢ではいくつかの逆転もありそう。疲労回復にどれだけ尽力できるか、またモチベーションがどれだけあるのかによって成績は大きく変わるので、レースが始まる前の予想は難しい。ステージ優勝候補筆頭はアルカンシェルのレムコで、続いて昨年のTTで他を圧倒したヴィンゲゴー、ジロでガンナを破る進化を見せたポガチャル、昨年のジロ個人TTで大逆転を演じたログリッチと役者は揃っている。ステージ優勝争いだけでも見せ場はたっぷりとある。
完走するすべての選手とチームに祝福を。
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各ステージのもっと詳細な情報(マップ、登坂プロフィール、ゴール詳細等)を知りたい方は公式サイト(英語)やJ SPORTSの特設ページが詳しいので、以下リンク先をどうぞ。
◎Tour de France 2024 オフィシャルページ ルート詳細
◎JSPORTS ツール2024・ステージプロフィールページ
◎出場選手情報はこちら
◎参考までに過去3年間の総合成績20位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞・チーム総合)をリンク先のページに記載。
◎初心者向け情報はこちら