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エースたち【スプリンター編】

 

今年もはじまったロードレースのシーズン。各チームのエース級の選手たちを紹介するシリーズの3回目、今回は【スプリンター編】です。

 

★他のタイプのエース紹介はこちら

 

 

 

◎各チームのエース

【スプリンター】のエース級選手と得意とするワールドチーム全18チームとプロチーム上位6チームの計24チームを表にした(プロチームはレースによって出場しない場合もあり)。平坦ステージは彼らを中心に回るので、参考にしてほしい。

 

★選手の脚質の違いはこちら参照

 

◎表の項目は、チームの強さの5段階評価《S・A・B・C・D》、チーム名(*チーム名のカラーはジャージをイメージしています)、エース格の選手を上からランク順で記載。名前に色が付いているのは上位50名の選手。

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◎スプリントレースが強いチーム

クイックステップ・アルファヴィニル

・アルペシン・フェニックス

・ボーラ・ハンスグローエ

ユンボ・ヴィスマ

 

上記チームが4強だが、クイックステップとアルペシンがトップを巡って鎬を削る。下の表を見てほしい。優勝・表彰台・トップ10に入る回数は、2チームが完全に抜けている。アルペシンは下のカテゴリー「プロチーム」なのである。少ない予算でのやりくり、総合系は捨ててスプリントとワンデーに特化したチームづくりは見習うべきチームもあるのではと思う。成績表の数字はグランツールに限定しているため、やや偏りがあるが、チームの強さの序列はこの通りと思っていい。

 

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また、移籍による強化したチームはアルペシンバイクエクスチェンジトレック。少し興味深いのが、イネオスモビスターに実績のあるスプリンターが加入したこと。イネオスはトップスプリンターの一人ヴィヴィアーニ。モビスターは中堅のアランブルと若手のカンター。どちらも総合系に重点を置いていたチームなので、今季の方針が気になるところ。

弱体化したチームはイスラエルアスタナ。アスタナは元々スプリント勝負をするチームではないことが、より顕著になったと言える。ボーラロットは期待の若手がいるので、それほど心配していない。

 

 

◎スプリンターの質

スプリンターの強さはいくつかのタイプに別れ、コースによって選手の適性がある。

 

◆ピュアスプリンター:幅が広い直線ゴールで、トップスピードの速さが際立っている選手。代表格は、ユアンヤコブセンフィリプセン。この3人は加速力(トップスピードに入る速さ)と速度の速さ(トップスピードの速さ)が現在最強だと思う。ここに勝ち方を知っている経験値の高い選手として、カヴェンディッシュサム・ベネットアッカーマンニッツォーロデマールヴィヴィアーニフルーネウェーフェンが続く。

 

◆登れるスプリンター:やや登り気味のゴール前スプリントに強い選手。もしくはコースの途中で傾斜の強めの坂があるレースでも脱落しないでゴール前に残って勝負できるスプリンター。代表格は、サガンマシューズラポルト。ただし、ユアンは昨年から登り坂をこなせるように進化してきているので、ここにも入る可能性がある。

 

◆もっと登れるスプリンター:適切なネーミングがしにくい、山岳コースでも登ってしまえるスプリンター。代表格はファンアールトコルブレッリマグナル・コルト。純粋な平坦コースのスプリント勝負では勝ちきれないが、クライマーでも苦戦するようなコースも登ってしまう、ややクラシックレース向きのスプリンターでもある。ファンアールトは、山岳賞も狙えるレベルだったり、TTでもトップレベルだったり、ピュアスプリントでも勝負できる、正直なところ意味不明な選手。

 

 

◎スプリンターとGCライダーの共存をめぐる考察

前回まとめた「GCライダー」に力点を置くチームと、今回の「スプリンター」を強化するチームの表を見比べると、違いがはっきりわかって興味深い。前者は、イネオス、バーレーン、モビスター、EF、アスタナ。後者は、クイックステップ、アルペシン、ロット、アンテルマルシェ。どちらも高次元で共存しているのがユンボUAE、ボーラ。ただし、ユンボにはファンアールト、UAEにはポガチャルという異次元の選手がいるから実現できている成績である。両方を追い求めることは非常に難しいことを実感する。他のチーム、コフィディス、バイクエクスチェンジ、トレック、グルパマ、DSMは両方を求めながら、どちらも中途半端になっている印象である。その点、AG2Rイスラエルは、ワンデーレース勝負に割り切っているのがわかる。

 

この共存については、語りだすと長くなりそうなので、また別の機会に。

 

 

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