ジロ・デ・イタリア 2022|出場選手まとめ
いよいよ今年のグランツールが始まり、イタリア中がピンク色に染まる。
5月6日からイタリアで開催される【ジロ・デ・イタリア】。105回目を迎える伝統のステージレースは、21日間ステージ、総走行距離は3500kmを超え、獲得標高は51000mにも及ぶ、空前のレースである。今年のコースの特徴は、ハンガリーでスタートし3日間走った後シチリア島に移動し、イタリア半島の長靴の先端から北上するステージ構成。前半は平坦ステージが多く、例年以上に豪華なメンバーが揃ったスプリンターたちが激しくゴールを争う。終盤に向かうにつれて険しい山岳に突入し、途中スロベニアを通過しながら、まだ雪の残るアルプスを登っていく。
ジロ・デ・イタリアは、他のグランツール(ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)と比較して、険しい山が多く(5月なので標高の高い山には雪が残っていたり)終盤に総合成績が逆転するドラマや波乱が起きやすい大会でもある。それは若手の選手が多く走るのでニュースターが出現することもひとつの要因。最終日までハラハラが楽しめる大会(選手やチームスタッフは大変だと思うが)。またイタリアの情熱的なファンの声援や、イタリアの古城や町並み、海岸やアルプスの壮大な風景も見所である。
*オフィシャルのスタートリスト情報だが、選手が変更される可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◎ステージプロフィール
各ステージの特徴を簡単に表にしました。《平坦/丘陵/山岳/個人TT》の区分、走行距離、獲得標高、山岳の数と種類、ゴール状況(山頂フィニッシュ/集団スプリント等)をまとめているので、レースを見るときの参考になればと。
まず個人TTがふたつ、stage2とstage21(最終日)。どちらも距離が短めなので、総合優勝争いに決定的な差はつきにくいかもしれない。例年よりはTTが苦手なクライマーにもチャンスはある。*TTが得意な選手はページ下部に記載。
平坦ステージは前半に多く、全7ステージ。ほとんどはエーススプリンターたちの集団スプリントで決着すると思われるが、stage1はスプリンターには厄介なコース。ゴールが5kmほど5%前後の上り坂が続くのだ。なので、登れるスプリンターが有利で、トレインも組めないかもしれない。優勝候補ではユアン、コルト、ギルマイ。あるいはファンデルプールが本命と思われる。他のステージも海岸沿いのコースが多く、横風などのトラブルも要注意か。
丘陵・山岳ステージは例年以上に過酷。特にstage7、stage9、stage15〜17、stage20は獲得標高が4000mを超える厳しいステージ。総合優勝争いは中盤・休養日前の5000m超えのstage9で人数が絞られ、終盤に進むにつれてどんどん人数が減っていくサバイバルレースに突入していくだろう。stage16とクイーンステージの20は、一番の見所のあるステージになるはず。
◎総合優勝候補
本命はアルメイダ。ジロとの相性もよく、年々実力をつけてきている印象。チームもウリッシやフォルモロなど頼りになるベテランクライマーを揃え、いよいよ優勝を狙えるのではないか。対抗はカラパス。実力・実績では間違いなく一番だろうと思われるが、個人的にムラがある印象が強い。次いでビルバオ。ランダもエース格の働きをしそう。チームの総合力ではバーレーンがジロで一番かもしれない。ケルデルマン、サイモン・イエーツ、バルデ、マルタンも上位を狙える実力派。ロペス、カーシーは実力はありながら今季は調子がいまひとつ。上位争いに絡みそうなイタリア人では、チッコーネ。ここ数年期待されながらトップレベルには届かない印象が強いが、一皮剥けることに期待したい。デュムランとバルベルデは実績は最高クラスだが、総合優勝を狙うには厳しいだろうか。特にデュムランは登りで普通に遅れていく姿しか見ていない印象で、登坂力が必須のジロでは厳しいと感じる。バルベルデは体力が3週間もつかどうか。積極的にステージ優勝を狙う方が面白い存在になりそうだが。個人的に大きく期待しているのはヒンドレーとガール。ヒンドレーは今季好調だがケルデルマンとのエース扱い次第か。ガールはバスクカントリーで総合12位、アルプスで総合6位と山岳多めのステージレースで結果を残している。あとは3週間という長丁場のレースの耐久性がどこまであるか。ヴァルタは地元ハンガリーのスタートで張り切っている。昨年は一時マリアローザを手にしているだけに、今年も一発狙ってほしい。他の上位候補は下記表を参照。
◎スプリンター
獲得標高が多い難コースのため、例年以上にスプリンターは少ないのではないかと懸念していたが、意外に多くの有力選手が出場し、楽しそうな気配が漂う。スプリンターとしての強さ(速さ、テクニック、勝負勘、実績)では、ユアンとカヴェンディッシュの二人が別格だろう。他に実績のある選手では、デマール、ニッツォーロ、ガビリアが続く。今シーズンの調子の良さでは、ギルマイ、バウハウス、コンソンニ。中でもギルマイはクラシックでも結果を残し、上り坂のあるようなステージでも強そう。ポイント賞争いでも上位に行く可能性が十分感じられて楽しみな存在。地元イタリアではチモライ、バッレリーニ、ダイネーゼも奮起しそう。チモライは昨年ジロの平坦ステージはほとんど一桁フィニッシュしているので今年も期待大。(イタリア人は名前の背景色を緑にしている)
少し話は逸れるが、カヴェンディッシュは本当は「ツール・ド・フランスに出たい」と昨年から公言していたが、チーム方針通りにジロへの出場となった。これでツールはヤコブセンが走ることが濃厚だが、カヴが走る可能性は少し残されたと感じている。その理由が、急遽出場が決まった最強のリードアウト役モルコフの存在。カヴが圧倒的な走りを見せることができれば、ツールの出場、つまり通算勝利数の更新も期待していい。
◎その他の注目選手
ビッグレースだけに注目選手は非常に多い。この表にあげた以外にも有力選手はいるのだが(逃げそうな選手など)多すぎるのも節操がないのでなるべく削った。星印をつけた選手(多くてすんません)は調子がいい、或いはジロと相性がいい選手(イタリア人は名前の背景色を緑にしている)。
まずはニバリ。地元シチリアを走るステージは特に大声援を受け、張り切るにちがいない。今シーズンは全く調子があがってこないが、レジェンドらしく本番では強さを見せつけたい。
続いて、リッチー・ポート。今年いっぱいで引退を宣言した名選手。最後のグランツールは、カラパスのアシストをすると明言しているが、まだまだ頼りになる力のある選手。山岳でエースのために前を引く姿や、ライバルつぶしでダンシングでアタックする姿は見納めかと思うとちょっとウルウルしてしまう。ポートは個人的に思い入れが強い選手なので、得応援する。
もうひとりは、マチュー・ファンデルプール。ジロ初参戦ながら、ふたつみっつステージ優勝を持ち帰りそうである。個人的には第1ステージの登りフィニッシュはマチュー向きだ。ここで勝てばいきなりマリアローザ。可能性はかなりあると思ってる。
調子の良さそうなクライマー、パンチャーは、ブイトラゴ、ケムナ。ふたりとも基本的にはエースの援護にあたるはずだが、展開によっては丘陵・山岳ステージで逃げの優勝もありえる選手。若手ではソーサ、ファンセヴェナント、アレンスマン、テトファツィオンは調子が良さそうなら総合上位も狙えるかもしれない。ソーサはバルベルデの後継者として奮起を期待したい。テトファツィオンは今季大きくブレイクしたギルマイと同じくエリトリアの選手。奇抜な髪型含めて非常に目立つので注目している。イタリア人では、UAEの3人と、バルディアーニ、エオロコメタの二人も奮闘するだろう。中でもフォルトゥナートは昨年ステージ優勝して(総合でも16位に入る大健闘)チームオーナーのコンタドールを歓喜させたのは記憶に新しい。今年もあの興奮をぜひ再現してほしい。
個人TTでは、トラトニク、ポート、フォス、アッフィニ、ソブレーロ、タラマエ、アレンスマン、クラドック、デラクルスが強い。総合勢のデュムラン、アルメイダ、サイモン・イエーツ、カラパスと、スプリンターではコルトも上位入賞候補か。
参考までに過去3年間の総合成績20位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞)をリンク先のページに記載した。情報量が多くなってしまったので別ページに。