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クリテリウム・デュ・ドーフィネ 2022【リザルト】

 

6月12日まで開催されたクリテリウム・デュ・ドーフィネ】ツール・ド・フランスの前哨戦として各チームのエース級の選手たちの仕上がり具合が垣間見れた。そして大会初日から最後まで、すべてを支配したのはユンボ・ヴィスマだった。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

 

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今年2枚目のマイヨジョーヌを手にしたログリッチ。ヴィンゲゴーとオコーナーもよいレースだった。

 

 

◎レース結果:総合トップ10と各賞

◆Stage1:途中のアップダウンでスプリンターたちはふるいにかけられ、ゴール前の小集団スプリントでファンアールトが勝利。リーダージャージも手に入れる。

◆Stage2:序盤に形成した逃げグループが最後まで逃げ切る。ヴュイエルモは3年ぶりの勝利でリーダージャージも獲得。追いかけた集団の先頭はファンアールト

◆Stage3:クライマーを中心に小集団に絞られた登りフィニッシュは、勝ったと思ってガッツポーズしたファンアールトの横をゴデュがすり抜けて先着。リーダージャージはファンアールトが奪いかえす。

◆Stage4:個人TTガンナが貫禄のステージ優勝。ファンアールトは惜しくも2秒差の2位。TT巧者のグリッチヴィンゲゴーから遅れまいと、カルーゾゲイガンハートアユソら総合勢の健闘が光った。

◆Stage5:逃げグループがゴール前100mまで粘って逃げるも、集団スプリントでファンアールトが勝利。ほとんどのスプリンターが脱落する中、メーウスが2位と奮闘。

Stage6:翌日以降の山岳決戦を見据えたメイン集団は逃げグループを容認。その中から最後に抜け出したフェロンがワールドツアー初勝利。総合勢は安全に集団でゴール。

◆Stage7:逃げグループが最後の山岳で次々にメイン集団に吸収される中、一人粘ったベロナグランツール初優勝。追い上げて単独で2位に入ったグリッチがリーダージャージを獲得。

◆Stage8:ゴール前の山岳登坂でのクライスヴァイクの牽引が総合エースたちを粉砕。最後はヴィンゲゴーグリッチが手をつないで1-2フィニッシュ。ユンボの二人は総合でも1-2フィニッシュ。

 

初日ファンアールトの勝利から最終日のヴィンゲゴーの勝利まで、ユンボが支配した大会だった。マイヨジョーヌとマイヨヴェール、総合2位とステージ3勝と、持ち帰れるものは全て手にいれた。ツールの予行演習としては完璧。

トップ10に二人入ったバーレーンEFは善戦。チャベスが復活気配なのは多くのファンが喜んでいるだろう。

 

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stage1のスプリントを制したファンアールト。この後ベルギーチャンピオンジャージで走ることはなかった。

 

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笑ったら申し訳ないが、萎れていくガッツポーズのファンアールトは印象深い。笑

 

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TTでは隙無しのガンナ。2位ファンアールトとはわずか2秒差だが、その差を作り出せる強さが世界一。

 

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最終日のヴィンゲゴーとログリッチの手繋ぎゴール。ここまでの強さは本人たちも予想以上ではないだろうか。

 

 

◎予想結果:総合優勝候補

【予想文面】→ 本命はグリッチ。今年こそ悲願のマイヨジョーヌを手にするべく、万全の体制を整えてきている印象。ポガチャルや本気のイネオスがいない今大会は余裕で優勝するくらいの力を見せつけたいところ。アシストのヴィンゲゴーも展開によっては表彰台も狙えるかもしれない。対抗がマス(願望も込めて)。去年のツール6位、ブエルタ2位と総合エースとして十分な力は発揮しつつ、あと一歩足りないのはTTの走力だろうか。バルベルデが去った後のチームの顔になる存在としてもわかりやすく結果を残していきたい。もうひとりヘイグ(願望も込めて)。昨年はツールはリタイアしたもののブエルタグランツールで初めて表彰台に上がり、チーム全体が登り調子な中、今年のツールにかける期待は特に大きい。同郷のヒンドレーのマリアローザにも刺激を受けていると想像する。カルーゾDトゥーンスと登りに強いアシストの存在も有利か。他に上位に絡みそうな選手として、オコーナーバルギルはかなり調子が良さそう。うまくいけば表彰台に絡むくらいの活躍をするかも。ゴデュMAロペスチャベスは実績も十分だが、今シーズンの調子は登りきっていない印象。ヘイターゲイガンハートも調子はいまひとつ。イネオスボーラツール・ド・スイス組がツール出場メンバーの中心だろう。若手で期待しているのは、マクナルティアユソTヨハンネセン。彼らはクライマーとしての能力が高く、数年後には総合エースとして無視できない存在になる可能性がある。気になる存在としては、いま一番勢いのあるチーム、アンテルマルシェ。エースはメインティスだろうか。

今回は複数のエース候補がいるチームが多かったので有力選手の人数が増えたが、ボーラのケルデルマンとアンテルマルシェのヒルはジロでの回復具合はどうだろうか。どちらもフルで走りきっているので今回はサブエースだと思われる。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ 本命グリッチは力の差を見せつけるような圧勝だった。最後はチームメイトにステージ優勝を譲るほど余力を残してのマイヨジョーヌ。終盤、連日で登坂能力を発揮したヴィンゲゴーも総合2位、この二人は別格の強さだった。3位オコーナー、以下カルーゾヘイグメインティスチャベスゲイガンハートヨハンネセンがトップ10に入り、エースは順調に成績を残しつつも、ユンボとの差を実感したことだろう。落車の影響でリタイアしたマスとTTを終えて総合8位につけてこれからというところで体調不良でリタイアしたアユソの二人は残念だった。万全であれば表彰台に迫る走りを見せただろうと思う。トマヘイターは総合を狙うには少し山岳が厳しかったかもしれない。そんな中stage5で、ゴール前100mまで逃げ続けたトマのチャレンジは胸熱だった。今季ここまで調子があがらなかったチャベスが調子を上げてきて、暑い季節は期待できそう。ヤングライダーのTヨハンネセンも順調に成長中、楽しみな存在。予想の精度は悪くなかったと思う。逆にいうとサプライズは少ないレースだった。

 

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新人賞のTヨハンネセン。総合でも10位と強豪が揃うレースでも結果を出した。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ チーム別ではユンボバーレーングルパマAG2R、モビスターはツール出場メンバーを揃えてきた。UAEイネオスボーラは違うメンバーで臨む。ここ1-2ヶ月のレースで好成績をあげているDトゥーンスゲシュケのクライマーたちは展開によっては総合トップ10に入る力もある。若手で特に注目しているのは、バッティステッラファンヒルストーラー。彼らが逃げるとそのまま逃げ切ってしまう展開も。ツアー・オブ・ノルウェーで総合7位に入ったユイは最近注目するようになった。まだめぼしい結果を何も残していないが、何か化けそうな雰囲気がある。

stage4の個人TTは「TT」とマークした選手に注目。ど平坦の中距離コースなのでパワー系のガンナが優勝候補筆頭だろう。対抗はファンアールトカヴァニャアルミライユが有力か。他にTTが強いのはグリッチ、ヴィンゲゴーヘイターマクナルティ、カッタネオオコーナートマゲイガンハートも悪くないが、軽量級の選手たちは苦戦するかもしれない。

個人的に注目しているのはクリス・フルーム。あの3年前の大怪我から、いよいよ復活の気配が。先週行われたアルプスのワンデーレースで11位。下のクラスのレースだが、獲得標高が4700mの山岳コースでウッズやゴデュらからそれほど遅れず、バルギル、ピノたちよりも早くゴールした。本人も調子を取り戻しつつあると語っており、強いフルームが戻ってくるのは大歓迎。上位に入ったら泣いちゃうかもしれない。

【結果】→ チームとしては完璧だったユンボ以外では、メインティスヒルが好成績を残し、ユイパージェの若手二人が印象的な走りを見せたアンテルマルシェ、復活気配のチャベスゲレイロの二人が総合トップ10に入って存在感が出てきたEFマスのリタイアは痛かったが、総合13位になったヨルゲンソンの台頭とステージ優勝したベロナモビスターは成功といってもいい。また逃げからのステージ2勝をもたらしたトタルエナジーは持ち味を発揮して大成功だったといえる。あとは雑に括れば可もなく不可もなくといった印象。

フルームは途中でリタイアしたものの、調子はあがってきている印象。どこまで成績を戻せたら満足できるのかは正直な所わからない。グランツールを完走できればいいのか、ワールドツアーでトップ10に入るレベルまで望んでいるのか。個人的には、ベルナルが復活して同じレースを走って談笑する姿を見ることができたらそれだけで嬉しい。

 

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健闘が光ったアンテルマルシェ。繰り下がりとはいえマイヨヴェールも着たユーゴ・パージュ。

 

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途中リタイアに終わったが、時折元気な姿を見せてくれたフルーム。復活の日を期待したい。

 

 

◎スプリンター

【予想文面】→ スプリンターたちの名前をあげておくが、平坦ステージはないので、彼らの活躍するステージは限られる。stage1・2の丘陵を乗り越えられれば勝機はあるだろうか。スプリンターの実績ではフルーネウェーヘンが一番だが、起伏にも強いファンアールトが頭ひとつ抜けている印象。ラポルトストゥイヴェンもこのメンバーの中では登りはこなせるほうだろう。バウハウスも力はあるが、ジロにも出ていたので疲労の回復具合は気になるところ。メーウスモッツァートの若手と、昨年一皮むけた印象のモラーノもエースで出場する機会は多くないので頑張りたい。

【結果】→ ファンアールト一人勝ち。起伏の多いコースでは予想通りではあったものの、メーウスが一度だけ2位に入ったのとストゥイヴェンが2回トップ10に入ったくらいで、スプリンターは全滅。しかも完走すらしていないという、何しに来たと言われてもしょうがない結果に終わった。(ラポルトはファンアールトのアシストとしてきっちり仕事をした)余談だが、モラーノはスプリントでやり合ったアンテルマルシェのパージェに対してレース中及びレース後に暴力行為に及び失格に。後味の悪いレースになった。