6月12日からスイスで開催される【ツール・ド・スイス】。85回目を迎える伝統的な8日間のステージレースであり、開催中のクリテリウム・デュ・ドーフィネとならび、ツールの前哨戦として扱われる。エース級の選手たちの仕上がり具合をチェックしたい。こちらも平坦なコースはなく起伏多めなので、出場するスプリンターは少ない。
総合優勝争いはstage5までは穏やかに進むと思われるが、stage6以降は連日総合順位が入れ替わる程の難関ステージが続き、最後まで目が離せない。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。
*正式なスタートリスト発表前の情報なので、選手が変更される可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◎ステージプロフィール
◆Stage1(6月12日):Küsnacht - Küsnacht|177.6km|獲得標高2746m(丘陵)
◆Stage2(6月13日):Küsnacht - Aesch|199km|獲得標高2746m(丘陵)
◆Stage3(6月14日):Aesch - Grenchen|177km|獲得標高3125m(山岳)
◆Stage4(6月15日):Grenchen - Brunnen|191km|獲得標高2062m(丘陵)
◆Stage5(6月16日):Ambri - Novazzano|193km|獲得標高2610m(丘陵)
◆Stage6(6月17日):Locarno - Moosalp|180km|獲得標高4155m(山岳)
◆Stage7(6月18日):Ambri - Malbun|196km|獲得標高3881m(山岳)
◆Stage8(6月19日):Vaduz - Vaduz|25.6km|獲得標高131m(個人TT)
stage1は、ずっとアップダウンが続く丘陵ステージ。ゴール前の急坂は周回コースで計4回登坂するので、途中で登れる選手を見極められるかも。スプリンターには厳しくパンチャー向け。
stage2は中盤までゆるやかな勾配で進み、終盤にかけて2級ふたつと3級山岳を超える。やや下り基調のゴールは登れるスプリンターの勝負になるか。
stage3は中級難易度の山岳。10%前後の勾配を含む1級から3級山岳を超えてゴール前はゆるやかな下り。クライマーと総合勢の小集団スプリントと予想。逃げのメンバーと展開によっては逃げ切りの可能性も。
stage4は全ステージの中で一番平坦。ただしゴール手前15kmに2級山岳があり、そこを超えられたスプリンターたちの勝負か。逃げ切りの可能性も十分あり。
stage5は長い下りの後に2級山岳を超え、3級山岳を含むアップダウンを3周して山頂フィニッシュ。獲得標高はそれほどでもないが、そこそこパンチ力のある登坂なので、パンチャーたちの小集団スプリントか。
stage6は難関山岳で、標高2000m超えの山を二つ登り、山頂フィニッシュ。どちらも登坂距離が長く、総合勢は多くの選手が脱落する可能性がある。アシストも含めたチームの総合力が問われる。
stage7は難関山岳のクイーンステージ。1級、3級×2、1級山頂ゴール。最後の12kmに及ぶ登坂の半分は10%以上の勾配になるかなりの難所。総合勢の勝負どころで、山頂を制する者は総合優勝に大きく前進する。
最終stage8は中距離個人TT。起伏のほとんどないド平坦コースはパワー系TTスペシャリストが有利。総合勢はここでのタイム差は総合成績に大きく左右されるのは間違い無く、総合優勝争いは最終日までもつれるだろう。
◎総合優勝候補
本命はダニエル・マルティネス、もしくはAイエーツのイネオスコンビ。ツールを見据えて仕上がり具合の確認になるだろう。対抗はウラソフ。ジロで見せたボーラのチーム力はサブエースのイギータも含めてイネオスに全く引けを取らない。この2チーム・4名が総合優勝争いの中心になる。その他の有力候補は、ヨン・イザギレ、ウッズ、ルツェンコの実績十分のベテランは表彰台に絡む力はあるが、個人TTではタイム差をつけられてしまいそうで優勝には一歩及ばなく感じる。若手ではエヴェネプール、ジロでも活躍したアレンスマン、ブレイクの兆しが見えるルビオは注目。特にエヴェネプールは総合勢の中では別格と言えるTTの速さがあり、丘陵ステージで大逃げからの独走を許してしまうと一人勝ちすらありえる。とはいえ、各チームのマークも厳しく、長い登りを有する終盤の難関山岳ステージは苦戦が予想される。今年出場予定のブエルタを睨んだ挑戦の意味合いが強いだろう。その他では、成長曲線が上昇中のマーダー、EFの次世代総合エースのポーレス、復活気配のフランスの人気者ピノー、スーパー山岳アシストのクスらの実力派もトップ10に入る力は十分あり、彼らも調子次第では表彰台に近づける。それぞれに特徴のある選手が揃った印象で、面白いレースを繰り広げそうな予感。他の上位候補は下記表を参照。
◎その他の注目選手
チーム別では(エースも含めて)イネオスはツールメンバーを揃えてきた。他に総合系のツールを睨んだメンバー選考なのは、UAE、ボーラ、EF、イスラエルあたりか。ツールの前哨戦というにはやや見劣りがするが、ステージ優勝狙いのパンチャーやクライマーとオールラウンダーは強力なメンバーが揃っていて、レースとしては面白い駆け引きがありそうな雰囲気がある。コスヌフロワ、モスコン、ヴァルグレン、ピドコック、ファンバーレ、フルサン、ジルベール、クラーウアナスン、クイン・シモンズ、ヒルシ、テュルジスと、キレのあるアタックが得意な選手が多い。コーヴィ、オルダーニとジロで初ステージ優勝した選手もいる。積極的なアタック合戦になったら楽しそう。
最終日の個人TTはパワー系のTTスペシャリスト向け。TTの得意な選手も多く参戦し、なかなか見応えあるステージになりそう。優勝候補筆頭はキュング。デニス、アスグリーンが対抗だろう。表の左側にTTと記入している選手は有力候補で、総合勢でTTが強いのはエヴェネプール、ウラソフ、アレンスマンも強い。ダニエル・マルティネス、Aイエーツ、ヨン・イザギレも速いが、軽量級の選手はやや不利に思える。とはいえ、難関山岳を終えた最終日なので、コンディションが大きく左右しそうだ。
また新城幸也も急遽参戦が決定。もしかしたらツール出場に向けた意味合いも含まれているかも。26日には全日本選手権も予定されているので、慌ただしい日程だが頑張ってほしい。
◎スプリンター
平坦ステージはないので、ピュアスプリンターには勝機はほとんどないだろう。stage2・4だけ、登りにも強いスプリンターあるいはパンチャーにはチャンスがあるかんじか。マシューズ、トレンティン、アランブル、クリストフまでがステージ優勝の可能性はあるだろうか。グローブス、ボル他は登りの練習で出場するような状況に思える。注目したい選手は、ペーター・サガン。今季は不調が続いているが調子を取り戻せれば、彼の独壇場になる可能性はある。10日に同じスイスのワンデーレースに久しぶりに出場するので期待したい。
◎過去の総合成績(2021年、2019年、2018年)
参考までに過去3年間の総合成績10位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。2020年は新型コロナの影響で中止された。個人でトップ10に複数回入っているのは、ポッツォヴィーヴォ、サム・オーメンが2回。あまり重複している選手はいない。チーム別で好成績なのは、アスタナ、クイックステップ、サンウェブ(DSM)が3人づつ、他はいろいろなチームが入っている。サガンが2回ポイント賞をとり、ツールへの調整も兼ねた相性の良いレースでもある。
出場選手で過去の優勝者はルイ・コスタ(2014、2013、2012年)のみ。