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クリテリウム・デュ・ドーフィネ 2022|出場選手まとめ

 

6月5日から南フランスのドーフィネ地方で開催されるクリテリウム・デュ・ドーフィネ】。74回目を迎える伝統的な8日間のステージレースであり、少し後に開催されるツール・ド・スイスとならびツール・ド・フランスの前哨戦として扱われ、ツールに出場予定の選手が多く参戦する。特にエース級の選手たちの仕上がり具合をチェックしたい。平坦なコースはなく起伏多めなので、スプリンターはほとんど出場しない。

総合優勝争いは第5ステージまでは穏やかに進むと思われるが、第4ステージの個人TTでは総合成績に優劣が付きそう。第7・8の山岳ステージでクライマーたちの逆転も十分可能である。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。

*正式なスタートリスト発表前の情報なので、選手が変更される可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

 

◎ステージプロフィール

◆Stage1(6月5日):La Voulte-sur-Rhône - Beauchastel|191.8km|獲得標高2473m(丘陵)

◆Stage2(6月6日):Saint-Péray - Brives-Charensac|169.8km|獲得標高2956m(丘陵)

◆Stage3(6月7日):Saint-Paulien - Chastreix-Sancy|169km|獲得標高2707m(丘陵)

◆Stage4(6月8日):Montbrison - La Bâtie d’Urfé|31.9km|獲得標高96m(個人TT

◆Stage5(6月9日):Thizy-les-Bourgs - Chaintré|162.3km|獲得標高1991m(丘陵)

Stage6(6月10日):Rives - Gap|196.4km|獲得標高2958m(丘陵)

◆Stage7(6月11日):Saint-Chaffrey - Vaujany|134.8km|獲得標高3828m(山岳)

◆Stage8(6月12日):Saint-Alban-Leysse - Plateau de Salaison|138.8km|獲得標高3782m(山岳)

 

stage1〜3は3〜4つの3級及び2級山岳を超える丘陵ステージが続く。ゴール前はそこそこの集団によるスプリント勝負か逃げ切りでの優勝争いになりそう。スプリント力のパンチャーが有利か。第3ステージは山頂ゴール、総合争いが軽く繰り広げられる。

stage4は中距離の個人TT。起伏のほとんどないド平坦コース。総合勢はここでのタイム差は総合成績に大きく左右されそう。ログリッチがいるだけに、他の総合勢はなるべく差をつけられないように走りきりたい。

stage5・6も丘陵ステージが続く。5は細かいアップダウンが続き、逃げが一番決まりやすいステージに思える。第6ステージは獲得標高はそれほどでもないが、延々と上り基調のコースが続き、総合勢は地味に体力を削られそう。翌日が大きく勝負がかかるステージになるだけに、なるべく力を温存したい。

stage7はクイーンステージ。134kmの中に3828mもの獲得標高を組み込まれ、更に2600mを超える標高は酸素も少なく、長い下りもあるステージはなかなか過酷。多くの有力候補たちが総合優勝争いから脱落するかもしれない。

最終日stage8も難関山岳。コースの最後の上りは10kmほどの間に1000m近く登るパンチ力のある山頂ゴール。総合優勝争いはここまでもつれるかもしれない。

 

 

◎総合優勝候補

本命はグリッチ。今年こそ悲願のマイヨジョーヌを手にするべく、万全の体制を整えてきている印象。ポガチャルや本気のイネオスがいない今大会は余裕で優勝するくらいの力を見せつけたいところ。アシストのヴィンゲゴーも展開によっては表彰台も狙えるかもしれない。対抗がマス(願望も込めて)。去年のツール6位、ブエルタ2位と総合エースとして十分な力は発揮しつつ、あと一歩足りないのはTTの走力だろうか。バルベルデが去った後のチームの顔になる存在としてもわかりやすく結果を残していきたい。もうひとりヘイグ(願望も込めて)。昨年はツールはリタイアしたもののブエルタグランツールで初めて表彰台に上がり、チーム全体が登り調子な中、今年のツールにかける期待は特に大きい。同郷のヒンドレーのマリアローザにも刺激を受けていると想像する。カルーゾDトゥーンスと登りに強いアシストの存在も有利か。他に上位に絡みそうな選手として、オコーナーバルギルはかなり調子が良さそう。うまくいけば表彰台に絡むくらいの活躍をするかも。ゴデュMAロペスチャベスは実績も十分だが、今シーズンの調子は登りきっていない印象。ヘイターゲイガンハートも調子はいまひとつ。イネオスボーラツール・ド・スイス組がツール出場メンバーの中心だろう。若手で期待しているのは、マクナルティアユソTヨハンネセン。彼らはクライマーとしての能力が高く、数年後には総合エースとして無視できない存在になる可能性がある。気になる存在としては、いま一番勢いのあるチーム、アンテルマルシェ。エースはメインティスだろうか。

今回は複数のエース候補がいるチームが多かったので有力選手の人数が増えたが、ボーラのケルデルマンとアンテルマルシェのヒルはジロでの回復具合はどうだろうか。どちらもフルで走りきっているので今回はサブエースだと思われる。他の上位候補は下記表を参照。

 

 

◎その他の注目選手

チーム別ではユンボバーレーングルパマAG2R、モビスターはツール出場メンバーを揃えてきた。UAEイネオスボーラは違うメンバーで臨む。ここ1-2ヶ月のレースで好成績をあげているDトゥーンスゲシュケのクライマーたちは展開によっては総合トップ10に入る力もある。若手で特に注目しているのは、バッティステッラファンヒルストーラー。彼らが逃げるとそのまま逃げ切ってしまう展開も。ツアー・オブ・ノルウェーで総合7位に入ったユイは最近注目するようになった。まだめぼしい結果を何も残していないが、何か化けそうな雰囲気がある。

stage4の個人TTは「TT」とマークした選手に注目。ど平坦の中距離コースなのでパワー系のガンナが優勝候補筆頭だろう。対抗はファンアールトカヴァニャアルミライユが有力か。他にTTが強いのはグリッチ、ヴィンゲゴーヘイターマクナルティ、カッタネオオコーナートマゲイガンハートも悪くないが、軽量級の選手たちは苦戦するかもしれない。

個人的に注目しているのはクリス・フルーム。あの3年前の大怪我から、いよいよ復活の気配が。先週行われたアルプスのワンデーレースで11位。下のクラスのレースだが、獲得標高が4700mの山岳コースでウッズやゴデュらからそれほど遅れず、バルギル、ピノたちよりも早くゴールした。本人も調子を取り戻しつつあると語っており、強いフルームが戻ってくるのは大歓迎。上位に入ったら泣いちゃうかもしれない。

 

 

◎スプリンター

スプリンターたちの名前をあげておくが、平坦ステージはないので、彼らの活躍するステージは限られる。stage1・2の丘陵を乗り越えられれば勝機はあるだろうか。スプリンターの実績ではフルーネウェーヘンが一番だが、起伏にも強いファンアールトが頭ひとつ抜けている印象。ラポルトストゥイヴェンもこのメンバーの中では登りはこなせるほうだろう。バウハウスも力はあるが、ジロにも出ていたので疲労の回復具合は気になるところ。メーウスモッツァートの若手と、昨年一皮むけた印象のモラーノもエースで出場する機会は多くないので頑張りたい。

 

 

◎過去の総合成績(2021年、2020年、2019年)

参考までに過去3年間の総合成績10位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。個人でトップ10に複数回入っているのは、ルツェンコミゲルアンヘル・ロペスピノバルデが2回。チーム別で好成績なのは、アスタナが5人、イネオスが4人、ボーラAG2Rグルパマが3人、その他というかんじに。ドーフィネの優勝者が同年のツール・ド・フランスを優勝するのは、過去10年では4回ある。(うち3回はフルーム)

出場選手で過去の優勝者はクリス・フルーム(2016、2015、2013年)だけ。なおツール・ド・スイスに出場する選手にはこちらの過去大会優勝者が多い。