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世界選手権 2022(ロードレース・エリート女子)|出場選手まとめ

 

9月24日にオーストラリアで開催される第89回目の【世界選手権(ロードレース・エリート女子)】(女子は1958年からで64回目にあたる)。女子のロードレースは圧倒的にオランダが強い。世界選手権は過去10年で6回優勝し、UCIポイントによるランキングでは上位4人のうち3人がオランダ人選手であり、今年のグランツール全てをファンフルーテンがリーダージャージを独り占めにし、ツール・ド・フランス・ファムでは8つのステージのうち6つでオランダ人が優勝し、先日行われた世界戦・個人TTでもエレン・ファンダイクが2連覇をした。今年もオランダを中心にレースが展開すると予測されるが、選手層でいうとオランダイタリアが2強だと思っている。続いて開催国であるオーストラリアドイツデンマークあたり。オランダは個の力が強すぎるためか、チームワークという点では疑問が残るレースになることが多い。それでも昨年まで現役だったファンデルブレッヘンやファンフルーテンが凄まじい個の力で頂点に君臨していたわけだが、例年よりは苦しい展開になるかもしれない。

なお、女子選手はあまり詳しくないため、コメントはやや偏っていることはお断りしておく。また国による実力差が大きく、有力選手及び国のみの記載です。

*情報は9月21日現在、出場選手は変更されることがあります。表内の選手のUCI世界ランクは2022年8月末自転、年齢は2021年12月時点です。

 

 

 

 

◎コースについて

コースの総距離は164.3km・獲得標高は2655mと、女子のレースでは相当ハードな部類に入る。翌日に行われる男子と同じコースになるので参考にしたい(男子は市街地の周回コースを女子より3周多く回る)。スタート地点のヘリンズバラから海沿いを南下し(地図上の青い線)、コース上一番大きな山キーラ山を登るが(赤い線)、標高は473mで残り距離を考えるとここで勝負が決する難易度はない。ただし逃げる選手によってはスプリンターたちは追走などで脚を削られてしまう可能性も高い。その後個人TTでも使われたウロンゴン市街地の周回コースを6周まわるのだが、コーナーが多く走りづらいことと、約1km・平均斜度8%を超える坂はそこそこパンチがあり、選手を徐々にふるいにかけていく展開が予想される。生き残ることができた小集団の選手たちによるスプリントか、残り10kmをきってからアタックを決める選手が勝つような展開が予想される。登りをこなせるスプリント力のあるパンチャー系の選手、テクニカルでタフなレースに強いワンデーレーサーが有利だろう。*下の図の高低図は男子用で周回コースを12周するものになっているが女子は6周でゴールになる。

 

 

◎優勝候補

本命にしたい選手のひとりに事件が起きた。オランダのエースと目されていたアネミエク・ファンフルーテン20日に行われたミックスリレーで転倒し病院へ搬送。右腕の骨折が発表された。現時点の情報(9月22日現在)では棄権はせず、ぎりぎりまで痛みの様子をみて出走の可否を判断するとのこと。普通なら優勝予想どころかレースに出ることすらありえない事態だが、彼女には前科がある。2年前のレースで落車し手首を骨折したが、そのわずか1週間後の世界選手権にギプスをつけて出場し、銀メダルを獲得している。今年の4月末にも手首を骨折したが、6月のジロではマリアローザを着ている。それらよりも厳しい状況と想像されるが、彼女の可能な限りの回復を願いたい。

それを踏まえて、優勝候補に3人をあげたい。一人目はデミ・フォレリング(オランダ)。スプリンターが登りで遅れることを想定すると、エースはフォレリングが担うと予想している。ツール2位、ブエルタ3位と好調をキープし、ステージレース中心ではあるが春にはリエージュ2位、フレッシュワロンヌでも3位と登りのあるワンデーでも抜群の強さを発揮している文句無しの優勝候補。二人目はロンゴ・ボルギーニ(イタリア)。イタリアは今回オランダをしのぐほど選手層が充実している印象。普段からトレックでもチームメイトでWエースともいえるロンゴボルギーニとバルサモを中心にチームの結束は固く、ロンゴボルギーニは今年のグランツール全てでトップ10に入り、パリ〜ルーベの優勝を筆頭に4つのUWTワンデーレースでもトップ10に入り、優勝候補筆頭と考えている。イタリアでは若手のペルシコも勢いがあって非常に頼もしい。ジロで総合7位、ツールで総合3位とその後も表彰台に上がり続け、一気にアルカンシェルを獲得してもなんら不思議ではない。そして優勝候補三人目はカタジナ・ニエウィアドマポーランド)を推したい。ここ2年ほど勝利から遠ざかっているが、ビッグレースではことごとく上位に入る安定した強さは誰よりも際立ち、世界選手権でも常に常に入っている。今回のコースは彼女向きだろうと考えて期待している。

他に表彰台に絡みそうな好調の選手は、開催国で地元の応援も心強いグレース・ブラウン(オーストラリア)は個人TTでの力強い走りも好印象。直近のブエルタでも独走でステージ優勝した勢いもある。人気者のルドヴィグデンマーク)は春のワンデーで上位に入りながらも勝ち切れない印象ではあったが、ツール・ファムのステージ優勝から一皮むけた雰囲気もあり、つい最近のスカンジナビアツアーでも総合優勝し、最も勢いを感じる選手の一人。ラブー(フランス)も成長中の若手クライマー。ルドヴィグもラブーも今年のグランツール全てでトップ10に入った選手であり実力は疑いがない。リッパート(ドイツ)もワンデー中心に好成績を連発し、シャベイ(スイス)、ガルシア(スペイン)、モールマン南アフリカ)もトップ10には余裕で入りそうな実力者たち。他の候補は下記表を参照。

 

 

◎その他の注目選手

今回は基本的にスプリンター寄りの選手は優勝候補からは外した。現アルカンシェルバルサ(イタリア)、絶対女王のフォス(オランダ)、バスティアネッリ(イタリア)、マンリー(オーストラリア)、ノルスゴーデンマーク)、コペッキー(ベルギー)らのクラシックレースで活躍していた実力者たちだが、周回コースの坂で遅れると想像している。だが、ゴールスプリントまで残る展開になれば一気に優勝候補になる。

U23(23歳以下)での優勝候補ではジョルジ(イギリス)、個人TTで金メダルだったグアジー(イタリア)、ツール・ファムのヤングライダーだったファンアンローイ(オランダ)がアルカンシェル候補。デウェルド(ベルギー)もさらに若い世代ながら期待値が高い。

東京五輪金メダルのキーセンホファーオーストリア)も注目。序盤から逃げる可能性が高いし、彼女ならひとりでも逃げるが、TT巧者のフォークナーアメリカ)やローセル(スイス)などの有力選手が一緒についていくようだと棄権な逃げグループになりえる。日本から参戦するワールドツアーに唯一所属する與那嶺選手もここひと月ほどレースで好成績をあげていることもあり要注目である。

 

 

◎過去の結果(2021年、2020年、2019年)

参考までに過去3年分の上位10位を入れておく。開催国もコースや傾向も毎年大幅に変わるのであくまで参考程度だが、それでも上位に何度も入賞するのは相当な実力者であることの証明でもある。フォスニエウィアドマブレナウアーが3回、ファンフルーテンロンゴボルギーニルドヴィグ、ファンデルブレッヘン、ラペッキが2回入っている。チーム(国)としては、オランダが8人、イタリア、ドイツが4人、アメリが3人。どの国もほとんどメンバーは重複しているが。

出場選手中、過去の優勝経験者は、バルサ(2021年)、ファンフルーテン(2019・2020年)、フォス(2013・2012・2006年)、バティスアネッリ(2007年)。