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ワールドチームの残留争いについて【9月20日時点】

 

ブエルタが終わり、好成績をあげたチームは多くのUCIポイントを獲得した。一方「ワールドチームの残留争い」の渦中のチームの状況もこのひと月で様々な変化があった。前回の記事(およそひと月前=ブエルタ開幕前)にかなりのアクセスがあったので、関心がある人が多いと感じ、その後のチームのポイント獲得状況をまとめ直した。

*なお、前回は「降格争い」という言い方をしていたが、今後は「残留争い」に揃えます。

 

*残留争いの8月16日時点はこちら。システムについても記載してます。

jamride.hateblo.jp

 

 

 

 

◎残留争いの現状

まずは現状のチーム順位を確認しよう。19位以下が降格になる(21位以降は全てプロチームなので、降格するのは19位と20位の2チーム)。

表は、2022年9月19日時点でのチームごとの獲得したUCIポイントランキング順。順位の横の矢印はひと月前からの変化。それぞれのポイントは左から3年間の合計→2022年のポイント→2021年→2020年、現状のチームカテゴリー(WT=ワールドチーム/PT=プロチーム)。また参考までに右端にブエルタでチームが獲得したポイントを記載。注)チーム内の上位10名のポイントのみ反映されるので、ブエルタの獲得ポイントが全て反映されるわけではない。

 

 

上位14チームの順位移動は残留争いとはほとんど無関係なので割愛する。重要な変化としては、モビスターEFの順位があがり、コフィディスバイクエクスチェンジが下がったこと。モビスターは18位から15位に順位を上げることに成功。マスのブエルタ総合2位が大きかった。まだ安全圏とはいえないが、下にいる4チーム全てに抜かれるという可能性は低いといえそうだ。EF、コフィディス、バイクエクスチェンジはまだ予断を許さない。18位バイクエクスチェンジと19位ロット・スーダルとのポイント差は558点。20位イスラエル・プレミアテックとの差は1403点。残念ながらイスラエルは逆転は難しいだろう。

残りのレースは、ワールドツアーはイル・ロンバルディアのみで、プロシリーズでもワンデーレースが6つ、ステージレースがひとつしかない。ワンデーの最終戦であるジャパンカップ(1.Pro、10月16日)にはEFコフィディスロットイスラエルと渦中のチームが4チームも参加する。優勝者には200ポイント(2位150、3位125、以下40位3ポイントまで)が与えられる。その時に逆転の可能性があれば当事者のチームの本気度はかつてないものになる。ただしジャパンカップと同時開催になるツール・ド・ランカウイが最終戦(stage8が10月18日)でステージ優勝者は20ポイント、総合優勝者は200ポイント。モニュメントであるイル・ロンバルディアは、優勝500ポイント、2位400、3位325で、表彰台を独占すればチームで1225ポイント獲得できる。非現実的ではあるが。(ちなみに世界選手権優勝は600ポイント)

 

 

◎降格の影響について

現在開催されている世界選手権では、モビスターやロットが代表チームへの選手派遣を拒否するという事態が起きている。派遣要請されるのはエース格の選手が多いだろうし、その選手達でポイントを稼ぎたいと考えるのは当然だと思える。実際一例を挙げると9月14日のワロニーではモビスターのセラーノが3位で125ポイント、イスラエルのDトゥーンスが4位100ポイント・ストロングが5位85ポイント、EFのファンデンベルフが7位60ポイント、コフィディスのザングルが8位50ポイント・コカールが14位25ポイント、ロットもデブルイスト9位40ポイント・カンペナールツが14位15ポイントを持ち帰り、9月15日のコッパ・サバティーニでは、EFはエイキング2位150ポイント・チャベス4位100ポイント・ピッコロ10位35ポイントを、コフィディスマルタンが3位126ポイント、モビスターはアランブルが13位20ポイントを持ち帰っている。この残留争いしているチームの切実ぶりは痛々しいほどだ。*厳密にはチーム内上位10名に入っていない選手のポイントは反映されない。

降格が決まった場合はチーム運営の問題が一番大きいだろう。選手の移籍への影響も避けられない。降格した場合、選手は来季の契約があっても違約金などなく他チームへ移籍することが可能となる(それはそれで選手も大変だが)。チーム側も補強も簡単にはいかなくなるのは容易に想像できる。スポンサーも継続できるのか、運営や活動資金、スタッフの確保、来季出場するレースが変われば準備についても一からはじめる労力も計り知れない。当事者の問題は山積みであり、先行きは全く不透明だ。

当事者チーム側は、コロナ渦での選手の棄権など去年と今年はある種の特殊な状況下であり、降格する場合はチームが存続できなくなるとしUCIを告訴する準備をしているというニュースや、UCIもそれに対して今シーズンの降格はなしにするという報道もあったり騒がしくなっている。その後UCIは報道のようなライセンス拡大の議論はされてなく現状のルールに基づいてワールドチーム18枠の審査を進めると声明文を発表。これからもゴタゴタは続きそうだ。

他にも選手や元選手から、そもそものシステムに対しての批判の声があがったりもしていて一定の同情はするが、個人的な感想でいえばコロナ渦の特殊な状況を鑑みるのであれば、もっと早くアクションを起こすべきで、当事者だけでなくワールドチーム全体の総意を形成することが必要だったと思う。3年間のシーズンを通しての勝者と敗者が生まれるのは残酷でもあるが必然だろう。たったひとつのレースにだって、必ず勝者と敗者がいる、サイクルロードレースはそういう競技なのだ。

 

 

◎チームランキングはこちらで毎週更新されるのでご参考に。

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