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ブエルタ・ア・エスパーニャ 2023|ステージプロフィール

 

8月26日から開催される第78回目を迎えるブエルタ・ア・エスパーニャ。紹介記事第3弾は、ステージプロフィール。今年のルートは、地中海に面したバルセロナをスタートし、アンドラの山岳を通過したあとは東から地中海の海岸線を南下。休息日にバリャドリッドへ大きく移動して個人TTを走ってからピレネー山脈で本格的な山岳連戦。その後はツールのスタート地でもあったバスク地方の近くで2周目を終えて、北から西に向かって海岸線を移動し、“魔の山”アングリルを通って最終日はマドリードでの集団スプリント。総走行距離は3160km、総獲得標高は53000mに及ぶ、マイヨ・ロホ(赤いリーダージャージ)を競う3週間の旅だ。

 

*コースは天候などの理由により変更される場合があります。またプロフィールは公式サイトのものを使用していますが、ブエルタはややアバウトなこともあり、予想以上に急坂だったりすることもしょっちゅうあります・笑。

 

 

 

 

◎ステージプロフィール

各ステージを簡単にリストにした。ルート(スタート > ゴール)、カテゴリー《平坦/平坦&山頂フィニッシュ/丘陵/山岳/個人TTチームTT》、走行距離、獲得標高をまとめている。今回のステージは平坦=4/平坦&山頂フィニッシュ=2/丘陵=6/山岳=7/TT=2(個人TTチームTT各1)で構成される。さらに山頂フィニッシュは半分近い9つもあり(!)クライマー向けのコースで、スプリンターには例年よりも試練が多くなりそうである。

 

以下、ざっくりと各ステージの特徴や予想される展開をまとめている。個人的に特に注目したいのは《stage9・10・13・17》で、総合成績に大きく影響があるステージになると思ってる。

 

 

◎1週目(stage1〜9)

◆Stage1(8月26日/チームTT):Barcelona  >>  Barcelona

 距離14.8km|獲得標高60m

初日はブエルタではお馴染みのチームTTバルセロナの市街地をめぐる観光気分も味わえそうなルートで、有名なサグラダ・ファミリアの近くも通る。市街地コースは真っ平らだがコーナーが多く、油断はできない。初日を勝ちマイヨロホを着用するチームはユンボが最有力で、イネオス、UAEクイックステップの順で速いと予想。ボーラとジェイコも悪くない。総合成績を目標にするチームはここでライバルチームから遅れをとりたくない。

 

 

◆Stage2(8月27日/丘陵):Mataró  >> Barcelona

 距離182km|獲得標高2754m

スタート直後から登坂があり、元気のいいチームは早速逃げに入るだろう。中盤に2級山岳もあり、山岳賞を狙う選手も逃げに入るか。山岳の勾配はそれほど厳しいものではなく、中盤の山岳で多少遅れたスプリンターたちがいてもゴールまでには追いつくと思われる。が、ゴール直前にある3級山岳のモンジュイックの丘(距離1km/平均勾配9.4%)で集団は割れそう。且つゴールも登り基調のためステージ優勝はパンチャーか登れるスプリンターになるだろうか。それほどタイム差がつかなければマイヨロホはチームTTで優勝したチーム内での移動かも。

 

 

◆Stage3(8月28日/山岳):Súria  >> Arinsal. Andorra

 距離157.5km|獲得標高3472m

3日目にして早くも総合争いに火がつくステージ。長くゆるやかな登りで標高2000m近い1級山岳オルディノ峠を超えたあと(登坂途中にアンドラに国境越え)下ってすぐに1級山岳アリンサルの山頂フィニッシュ。総合争いはまだ軽めのジャブ程度ではあるが、総合争いから脱落する選手は早くも出てくる可能性もあり油断は禁物。主導権を握るチームや選手の好不調をチェックしておきたい。ただし、早めにリーダージャージを手放したい意向があるとメンバーによっては逃げ切りの可能性も十分ある。

 

 

◆Stage4(8月29日/丘陵):Andorra la Vella.Andorra  >> Tarragona

 距離185km|獲得標高1822m

前日に入国したアンドラをスタートした直後にスペインに戻り、中盤まではゆるやかな下り基調で、3級山岳を二つ超えるステージ。逃げ屋たちも活発に動きそう(マイヨロホを前日に手放していなければ、逃げる選手によってはタイム差を与えてリーダージャージを一旦手放すかも)。ただし、ふたつの山岳は勾配も緩く、どちらかというと逃げ向きというよりスプリンターの勝負になりそう。

 

 

◆Stage5(8月30日/丘陵):Morella  >> Burriana

 距離186.5km|獲得標高2395m

プロフィール的には前日と似ているステージだが、序盤からカテゴリーのないふたつの山を越え、中盤に超えるカテゴリー山岳も2級になり、スプリンターたちには前日よりはちょっと厳し目のステージ。最後に集団スプリントになると予想するが、前日よりスプリンターの人数は減って、パンチャーたちが中心になるかも。この日からstage9までは暑さ対策にも要注意。暑さによる体力の消耗は総合争いからの脱落に直結する。

 

 

Stage6(8月31日/山岳):La Vall d'Uixó  >> Pico del Buitre.Observatorio Astrofísico de Javalambre

 距離183.5km|獲得標高4013m

獲得標高が4000m超えで急坂の1級山頂フィニッシュを迎える、なかなかハードなステージ。山頂フィニッシュのピコ・デル・ブイトレは平均勾配8%超えで、最大15%にも達する激坂。ステージ優勝は総合エースたちはまだリーダージャージを望まずに逃げ切りの可能性は十分にありそう。

 

 

◆Stage7(9月1日/平坦):Utiel > Oliva

 距離201km|獲得標高1144m

7日目にしてようやくスプリンターたちに活躍の場が与えられる。前日も厳しい山岳を乗り越えてきたプロトンにとっては休息日になるだろうか。スタート直後から緩やかながら起伏が続くが、中盤からは完全にフラットになりカテゴリー山岳もない。海岸線の近くを通る終盤は、横風には注意が必要か。各チームのエーススプリンターとトレインの勢力争いに注目したい。

 

 

◆Stage8(9月2日/山岳):Dénia  >> Xorret de Catí. Costa Blanca Interior

 距離165km|獲得標高3619m

5つもカテゴリー山岳が詰め込まれ、激しい山岳賞争いが勃発するか。ひとつひとつはそれほどでもないが、休む間もなく登坂を繰り返して体力の消耗が激しいレース展開になる可能性もある。そして最後の1級山岳ショレト・デ・カティは平均斜度11%強で最大22%の超激坂。最後の激坂とその後の短い下りでは総合争いも勃発するはず。

 

 

◆Stage9(9月3日/丘陵):Cartagena  >> Collado de la Cruz de Caravaca

 距離184.5km|獲得標高3041m

スタート休息日前に設定された興味深いステージ。特に難関といえるコースプロフィールではないが、個人的には総合争いの鍵になりそうな印象を持っている。その理由は休息日明けの個人TTの前に総合優勝候補たちの思惑が見えてきそうだから。中盤に差し掛かる頃にある1級山岳とその後に続くアップダウンは逃げの形成を促して、最後の2級山岳の登坂は20%超の激坂と下りま混在する複雑な地形で、レース展開の予想は難しい。stage10を見据えたレムコがおそらく勝負を仕掛けて、対応するライバルたちがどのようにふるまうか、総合成績の大きなシャッフルがありそうな予感。

ここで、ようやく最初の休息日。

 

 

◎2週目(stage10〜15)

◆Stage10(9月5日/個人TT):Valladolid  >> Valladolid

 距離25.8km|獲得標高115m

スタートから7km地点にある丘は1kmに満たない短い登りながら斜度は7%超え。好タイムを狙うならうまくこなす必要がある。それ以外は起伏はほとんどなく、パワー系のTTスペシャリスト向け。総合争いの鍵になるステージで、この日を終えてマイヨロホになる選手が誰になるのか、注目している。*この争いには別の記事を書く予定。

 

 

◆Stage11(9月6日/平坦&山頂フィニッシュ):Lerma  >> La Laguna Negra.Vinuesa

 距離163.5km|獲得標高2203m

ブエルタ名物ともいえる平坦だけどゴールは登坂になるという、最終的にはクライマー向けのステージ。ゴールの登坂はなかなかの破壊力で、ラスト1kmは平均9%超えの急坂。総合エースたちの削りあいというよりはステージ優勝狙いのクライマーたちの勝負になると予想(stage13・14の難関山岳連戦に備えて体力温存したいはず)。逃げメンバーのクライマーに注目したい。

 

 

◆Stage12(9月7日/平坦):Ólvega  >> Zaragoza

 距離151km|獲得標高865m

プロフィールを一見すると丘陵ステージのような起伏に感じるが、中盤から終盤にかけての登りはカテゴリー山岳でもないゆるやかな登坂でスプリンターが脱落するようなものではない。普通に考えれば集団スプリントになるが、逃げ切り勝利の可能性も高そうな印象。翌日に備えて穏やかに過ごしたい総合勢は追いかける気はないと思われるので、スプリンターのチームがどれだけ元気なのか次第。

 

 

◆Stage13(9月8日/山岳):Formigal. Huesca la Magia  >> Col du Tourmalet

 距離135km|獲得標高4266m

二日連続のハードな山岳ステージのひとつめ。スタート直後の3級山岳登坂では逃げが形成されるはず。山頂を越えるとフランスに入国だ。超級オービスク、1級スパンデル、超級トゥールマレーと、ツールでもお馴染みの大きな山を三つ登る。そして長い下りも3回あるので、注意が必要だ。最後は今年のツールでも登ったピレネーの名物峠トゥールマレーで、総合エースたちの勝負所のひとつ。おそらくタイム差がつきそうだし総合順位のシャッフルもあるだろう。山岳賞争いも熾烈になる大きなポイントが動く。総合争いの激しさによってはタイムアウトも気にする必要も出てきそう。

 

 

◆Stage14(9月9日/山岳):Sauveterre-de-Béarn  >> Larra-Belagua

 距離156.5km|獲得標高4623m

クイーンステージと呼びたいくらいのハードな山岳ステージ。中盤に超級ふたつは平均勾配が9%前後の難所で、前日に続き山岳アシストたちも総合エースも限界まで登坂力を試されるような山岳。中盤には総合争いをするエースたちを中心にかなり人数が絞られるかもしれないし、ここで総合争いから脱落する選手はきっといるだろう。最後の山頂フィニッシュは比較的ゆるめだが(他が厳し過ぎる)全ての選手が疲労困憊の状態、リカバリーのうまさもポイントになりそう。

 

 

◆Stage15(9月10日/丘陵):Pamplona  >> Lekunberri

 距離158.5km|獲得標高2494m

比較的穏やかなコースプロフィールだが、スタートからゴールまで平坦な場所は少なく、逃げ向きのステージ。ゴールは2級山岳スアララテを二回登る周回コース。前日までの疲労も溜まっているはずで、できれば穏やかに逃げを容認したい選手も多そう。総合成績で大きく遅れたクライマーが逃げに乗れればいいが、総合上位に絡む選手が挽回のために勝負をかけてくると荒れたレースになる可能性もある(可能性は低いと思う)。レース展開はここまでの総合成績次第か。

 

 

◎3週目(stage16〜21)

◆Stage16(9月12日/平坦&山頂フィニッシュ):Liencres Playa  >> Bejes

 距離120.5km|獲得標高2122m

ブエルタ名物平坦&山頂フィニッシュの第二弾で、クライマーの勝負ステージ。ゴールの2級山岳は標高はそれほどでもないが、平均斜度が10%前後とかなりの激坂。翌日の難関山岳連戦に向けて総合勢はなるべく体力を温存したいステージなので、激坂ハンターたちの争いになるか。総合エースたちは最後の登坂はタイム差はそれほどつかなくても、ライバルたちの様子見になる。

 

 

◆Stage17(9月13日/山岳):Ribadesella / Ribeseya  >> Altu de L'Angliru

 距離124.5km|獲得標高3269m

総合争いの最終決戦になるであろう難関山岳連戦のひとつめ。中盤までおだやかに過ぎたあとに、1級山岳をふたつ超えて、最後はブエルタ名物の“魔の山”超級アングリルの激坂フィニッシュ。斜度20%を超える勾配が何箇所もあり、恐ろしいとしか形容のしようがない。総合エースたちの登坂力勝負に全てが委ねられる。

 

 

◆Stage18(9月14日/山岳):Pola de Allande  >> La Cruz de Linares

 距離179km|獲得標高4630m

総合争いの最終決戦になる難関山岳連戦のふたつめ。5つのカテゴリー山岳があり、どれもがかなりの急勾配である。総獲得標高は今大会最大の4630m。最後は1級山岳ラ・クルス・デ・リナレスを2回登る山頂フィニッシュ。この日を終えてマイヨロホのライダーは実質総合優勝にかなり近づく(stage20が曲者のため、まだ確定とはいえない)ため、総合成績の逆転を目指す選手は確実に勝負をかけてくる。同様に山岳勝争いもここで決着するかもしれない。

 

 

◆Stage19(9月15日/平坦):La Bañeza  >> Íscar

 距離177.5km|獲得標高919m

スプリンター向けのほぼ真っ平らなステージ。ゴールは集団スプリントを期待したいが、各チームのリードアウトトレインを含むエーススプリンターがどれだけ残っているか。あるいは残っていてもどれだけ力を残しているか。厳しい山岳を乗り越えた疲労と、落車や体調不良などのアクシデント、できるだけ多くのスプリンターたちの元気な姿が見たい(もはや展望でなく願望)。

 

 

◆Stage20(9月16日/丘陵):Manzanares El Real  >> Guadarrama

 距離208km|獲得標高4361m

最終日前日にして、最長の208kmで3級山岳ばかり10個も超えて総獲得標高も4361mに達するアップダウンを繰り返す周回コース。ひとつひとつは大きな差をうむほどの登坂ではないが、総合タイム差によっては逆転にむけたアタックが繰り返されると相当しんどいことが容易に想像できる油断ならないステージ。大きくタイム差がついたライダーが逃げれば、それを容認したいところだが、果たしてどんな展開になるか。山岳ポイントもここまでで差が小さければ逆転も狙えるかもしれないが、3級ばかりなので全部とってもそれほどではない。

 

 

◆Stage21(9月17日/平坦):Hipódromo de la Zarzuela  >> Madrid. Paisaje de la Luz

 距離101.5km|獲得標高878m

マドリードの市街地を周回するコースで、ツールにおけるシャンゼリゼのような祝福に溢れるパレードランと、集団スプリントによる決着が予想されるステージ。華やかな表彰台に上がる赤いジャージを最後まで見届けたい。

今年のグランツール全ての最終ステージでもあるので、より一層寂寥感を伴う。

 

 

◎ステージ優勝候補たち

有力選手たちを《総合優勝候補、クライマー(山岳)、スプリンター(平坦)、パンチャー(丘陵)、TTスペシャリスト(個人TT)》に分けてまとめてます。上記ステージプロフィールと合わせてステージ優勝の参考にしてみてください。

 

◎参考までに過去3年間の総合成績20位までと各賞(ヤングライダー・ポイント賞・山岳賞・チーム総合)をリンク先のページに記載。

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