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2023年チーム個別成績まとめ【アンテルマルシェ/ユンボ/リドル】

 

2023年シーズン、チーム個別成績まとめ。主要チーム(ワールドチーム18+プロチームの上位4チーム)を3チームづつに分けてアップしていく。

 

◎表の見方について

*選手は2023年のUCIランク順で記載。*左端はネオプロorトレイニーの分類。*脚質タイプはあくまで目安(主にチクリッシモを参考にしつつ成績等の傾向から振分け)。*年齢は2023年12月31日時点/背景色は、25歳以下=水色・31歳以上=ベージュ。*UCIランクは2023年と2022年/成績大幅アップ=ピンク・ダウン=ブルー。*勝利数は2023年分。*来季移籍先は2023年12月13日現在の発表済のみ。契約未定の選手は不明と表記。*チームの強さはレースタイプ毎に★印で五段階評価(チームのリザルトを基準にしていますが、主観混じりなのはご了承ください)。

 

 

 

 

◎アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ

 

 

◆2023年総括:良い時期と悪い時期の浮き沈みが激しかった。ランキングは昨年の5位から14位に下がり(昨年は出来過ぎだったともいえる)、不運も重なり不本意なシーズンだった。スタートから3月にかけては破竹の勢いで、移籍加入したルイ・コスタを筆頭に日替わりで新顔が活躍し、なんとチームランキングで首位に立つという快調ぶり。しかし春が終わる頃には、ギルマイタコさん、ホーセンスメインチェス等の複数の主力が怪我や体調不良に見舞われ、グランツールが始まる頃には複数レースがある日は満足にチームが組めないほどの状態に陥った。それでも最終的に年間勝利数は20勝(3月までに8勝)に達し、11人もの選手が勝利したことは、チーム状態を考慮するとよく頑張ったと思う。なにしろ2023年は前年の上位10人のうち4人も退団していたのだから。来季はルイ・コスタが抜け、3年連続でチームの稼ぎ頭を失うが、逆境に負けず奮起を期待したい。

◆主要選手の成績:移籍加入してきたルイ・コスタが完全復活。ベテランらしい強かな走りで5勝をあげ、エースとしてチームを大いに盛り上げた。昨年台頭したテイッセンツィマーマンも順調に成長。テイッセンは4勝し、ビッグレースでもトップスプリンターに勝負を挑めるほどになった。ツィマーマンはドーフィネの山岳ステージで優勝し、シーズン終盤はワンデーでシングルリザルトを連発(ジャパンカップでも5位でしたね)。若手のパージュホーセンスマーリッツレックスもブレイクの兆しを感じさせる好成績を残したのも頼もしい。平均年齢高めのチームには彼らのような若い力の台頭が必要である。特にホーセンスは逃げからプロ初勝利を上げた直後に連勝する(しかもワンデーレース)という離れ業は鮮烈だった。チーム全体で積極的に逃げ切り勝利を狙うことが多く(戦力的に伏兵が多い)、チャレンジングな姿勢は好感を持って応援している。一方でエースとして期待していたギルマイロータメインチェスは、不運もあったが期待に応える結果には至らなかった。ベテランのタラマエ、脳震盪でいまだに苦しむタコさんも含めて、2024年は彼らに復活を願う。

◆ブレイクした注目株:

 ユーゴ・パージュ(22歳/156位←307位/1勝)

 コーブ・ホーセンス(27歳/187位←378位/2勝)

◆主な成績:

年間20勝(ワールドツアー4勝)

ジロ・デ・イタリア総合27位(ローレンス・ハイス)

ツール・ド・フランス総合47位(ゲオルク・ツィマーマン)

ブエルタ・エスパーニャ総合41位(ルイ・コスタ)

ジャパンカップRR(ルイ・コスタ)

 

 

◎ユンボ・ヴィスマ

 

 

◆2023年総括:2023年も最強チームとして昨年以上の存在感で君臨した。史上初めて同一年でのグランツール全制覇を達成し、ブエルタでは総合表彰台独占という快挙も成し遂げた。年間の勝利数も69勝と記録的。特にヴィンゲゴー/15勝、ログリッチ/15勝、コーイ/13勝の3人だけで43勝に達した(それよりも勝利したのはユンボ以外では2チームしかない)。ワールドツアーにおいては38勝と更に圧倒的で、ビッグレースは1年を通して独壇場といえるほどの強さを発揮した。チームランキングでは残念ながらUAEに次いで2位だったが、ユンボが最強チームだったことには異論はないだろう。選手個々の能力はもちろん、選手編成やレース戦略におけるマネージメント、スタッフも一丸となっての細部に至るまでの実行力、何ひとつ欠けてはいけない最強チームの集大成のような出来であったと思う。重箱の隅を突くような問題点をあげるなら、エースクラスは他のチームよりも高齢化が始まっていること。エースクラスではコーイ以外に若手がいない。とはいえ、グローグヘスマン、さらに自前の育成チームにも才能は集まっているのでそれほど心配は不要か。

最後に敢えて余計なことを記するが、シーズン終盤にはチームに乱れが生じた。ブエルタのエース問題に端を発したログリッチの契約途中での移籍、クイックステップとの合併買収騒動、アイデブルックスの強奪と、レース以外でのゴタゴタ(どれも特大のスキャンダル)が立て続けに起きてしまったのは何故か。それらに強者の傲慢さを感じたのは僕だけだろうか…。

◆主要選手の成績:GCエースとしてツールを2連覇したヴィンゲゴーと完全復活のログリッチのダブルエースに加えて、全グランツールに出場した最強クライマーのセップ・クスの働きは大きかった。彼らの仕事は歴史を作った。ヴァルテルケルデルマンの移籍組のアシストも効果的に機能していた。ファンアールトラポルトベノートファンバーレを中心にしたクラシック班も強かった。欲を言えば、ファンアールトにはモニュメントを取ってほしかったが、それは欲張り過ぎだろう。2年続けて二桁勝利を達成したオラフ・コーイは若くしてもはやトップスプリンターと呼べる。2024年はグランツールデビューを条件に契約更新したと見られる。双子では昨年活躍したミックに変わりティム・ファンダイケの方が今年は躍進。シーズン終盤には半年入院するほどの大怪我から復活したミラン・ファデルがエモーショナルなプロ初勝利を上げるなど、最後までチームの勢いは止まらなかった。トラトニクファンバーレの主力が怪我をしても、これだけの成績を残すのは選手層の厚さとリスクヘッジの高さの賜物。ファンホーイドンクも素晴らしかった。年間のベストアシスト賞を受賞する働きをしながら石畳系クラシックでは上位に入ってサブエース級の活躍をして、これからという時期での心臓疾患による早過ぎる引退は本当に残念だった。

◆ブレイクした注目株:

 セップ・クス(29歳/16位←282位/2勝)

 ミラン・ファデル(27歳/197←2357位/2勝)

 ティム・ファンダイケ(23歳/260位←1052位/─)

◆主なレース成績:

年間69勝(ワールドツアー38勝)

ジロ・デ・イタリア総合優勝(プリモシュ・ログリッチ)

ツール・ド・フランス総合優勝(ヨナス・ヴィンゲゴー)

ブエルタ・エスパーニャ総合優勝(セップ・クス)総合2位(ヨナス・ヴィンゲゴー)総合3位(プリモシュ・ログリッチ)

ティレーノ〜アドリアティコ総合優勝(プリモシュ・ログリッチ)

ボルタ・ア・カタルーニャ総合優勝(プリモシュ・ログリッチ)

イツリア・バスクカントリー総合優勝(ヨナス・ヴィンゲゴー)

クリテリウム・ドーフィネ総合優勝(ヨナス・ヴィンゲゴー)

ツアー・オブ・グワンシー総合優勝(ミラン・ファデル)

オムループ・ヘットニュースブラッド(ディラン・ファンバーレ)

E3サキソバンク・クラシック(ワウト・ファンアールト)

ヘント〜ウェヴェルヘム(クリストフ・ラポルト)

ドワーズドール・フラーンデレン(クリストフ・ラポルト)

 
 

◎リドル・トレック

 

 

◆2023年総括:2023年は大成功と言えるシーズンだったと思う。特にリドル社がメインスポンサーになったツール以降は勢いを増した。カラフルでオモチャみたいなジャージも見慣れてしまえば強いチームの象徴に見えてくる。年間27勝し、ランクは13位から5位にまで上昇。エース全員が結果を出して、若手も成長の跡を見せて、ベテランも持ち味を発揮、バランスの良さを感じる申し分ない成績を残した。特に二人のエースのデンマーク人(マッズ・ピーダスンスケルモース)は、クラシックからグランツールで平坦でも山岳でも、ステージ総合やTTまで様々なタイプのレースで活躍し、多くのポイントを稼いだ。よくなかったことを探すのが難しいくらい(誤算だったのはティベーリの解雇くらいだろうか)。成績を見てもリドル社の予算面での貢献は大きい。2024年はGC、スプリンター、クラシック、ベテランアシストと全方位に実力者を獲得し、さらなるチーム力の向上が伺え(セガフレード社がスポンサーを降りてからイタリア色が強くなるのは皮肉でもあるけど)、チームの黄金時代を迎える期待感すらある。

◆主要選手の成績:エースのマッズ・ピーダスンは、大エースにまで登りつめた(今年トレイニーで入ったマーティン・ピーダスンは弟で、これからは“マッズ”をなるべくつけるようにする)。年間での7勝は昨年よりも減ったが、モニュメントを含めてビッグレースでシングルリザルトを連発。マチューとファンアールトと3強と呼べるほどのライダーになった。スケルモースも完全にトップライダーの仲間入り。7勝以外にも表彰台は18回、TOP10には37回もあがり、様々なレースに対応する万能さは新しい世代のオールラウンダーぶりを感じさせる。チッコーネスクインシュもキャリアハイの好成績。チッコーネは3-4月と大暴れし、絶好調で迎えるはずだった最大の目標のジロはCoid19感染の影響で出れなかったが、ツールでは山岳賞も獲得して鬱憤を晴らした。ストゥイヴェンEトゥーンスのベテラン二人も勝利こそなかったものの、狙ったレースでは上位に入る十分な働き。若手ではネオプロのティボー・ネイスが、2勝&表彰台8回と非凡な才能を示した(現在シクロクロスで今シーズンすでに3勝し活躍中)。タイプ的にはピドコックにスプリント力を加えたような印象で、来期は更にロードにフィットしてくると面白い。調子を落としたのはバウケ・モレマテスファツィオン。どちらも実力からすると物足りない。

◆ブレイクした注目株:

 ティボー・ネイス(20歳/243位←509位/2勝)

◆主なレース成績:

年間27勝(ワールドツアー8勝)

ジロ・デ・イタリア総合31位(トム・スクインシュ)

ツール・ド・フランス総合29位(マティアス・スケルモース)

ブエルタ・エスパーニャ総合17位(ファンペドロ・ロペス)

ツール・ド・スイス総合優勝(マティアス・スケルモース)

ベーメル・サイクラシックス(マッズ・ピーダスン)
グラベル欧州選手権*(ヤスペル・ストゥイヴェン)
 
 
 
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◆ロット/イスラエル/トタルエナジーズ/ウーノエクス > coming soon

 

 

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