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ティレーノ〜アドリアティコ 2022【リザルト】

 

3月13日に閉幕した【ティレーノ〜アドリアティコ】。大きな波乱もなく、有力選手が実力通りに成績をあげた印象のレースになった。そしてポガチャルが無双。ツールでライバルになりそうなエースたちはパリ〜ニースに出ていたとはいえ、彼らがいてもポガチャルに歯が立っただろうかと思えてしまう。このスロベニア人の何が凄いのか─これだけの成績をあげながら、いまだ発展途上だということ。これから何を成し遂げても驚かない。

 

 

 

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危なげなく2連覇を果たしたポガチャル。トロフィー代わりのポセイドンの槍を手にしてご満悦。

 

◎レース結果:総合トップ10と各賞

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◆Stage1:個人TTガンナが王者の実力通り圧勝。レムコが2位、ポガチャルが3位と好発進。

◆Stage2:力勝負となった大集団スプリントをメルリールが制して今季初勝利。昨年からマスドレース初日に見せる部類の強さは継続中。

◆Stage3:2日連続となった集団スプリント、緩斜面の登りを物ともせず、好調を維持するユアンが勝利。

◆Stage4:登坂での加速の違いを見せつけてポガチャルが余裕の勝利。ボーナスタイムを加えて早くも総合首位に。

◆Stage5:逃げ集団の中から残り5kmでアタックしたバルギルが終盤の激坂を登りきり、ワールドツアーでは5年ぶりとなる勝利。

Stage6:クイーンステージは残り16kmから単独アタックしたポガチャルが圧勝。2位に1分以上の差をつけ総合首位をほぼ決めた。

◆Stage7:スプリントを集団をバウハウスが後方から加速し一気に抜き去り勝利。バーレーンに今季ワールドツアー初勝利をもたらした。

 

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TTの強さに磨きをかけたレムコ。あとは激しい登りとグラベル対応ができれば総合成績もあがる。

 

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寒さも激坂も悪路も、難なくこなすポガチャル。悪条件になるほど強さが増す。すでに弱点はないのか。

 

 

◎予想結果:総合優勝候補

【予想文面】→ 本命はポガチャル。対抗がヴィンゲゴーカラパスと昨年のツール表彰台メンバーが並ぶ。他はマスウランあたりは表彰台に絡んでくると予想。地元イタリアからは、チッコーネにも本格化してほしいし、カルーゾの昨年ジロのような活躍を期待したいがランダビルバオとトリプルエース体制か。ピノはかつての調子を取り戻せるか。ブシャールケンデルマンバルデもトップ10に入る力は十分。そして期待が大きいのはエヴェネプール。難関山岳が多いレースはどこまでいけるか。ポガチャルとの直接対決は見もの。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ 優勝はポガチャル。2位ヴィンゲゴー、3位はランダ。大方は予想通りといえる。トップ10のうち6名は予想。マスも落車がなければトップ10には入っていただろう。カラパスブシャールは残念な結果だった。ケンデルマンウランも実力からすればもっと上位にいけたはずでトップコンディションには遠い状態。ポガチャルの無敵ぶりとアシストしたソレルイカも含めてUAEのチームとしての総合力が目立った。去年ブレイクしたヴィンゲゴーは本物だ。パリ〜ニースを席巻したログリッチ組と一緒にツールを走るユンボも確実に厚みを増している。総合トップ10にランダカルーゾビルバオの3人を送り込みながら最終ステージで優勝したバウハウスと、バーレーンの好調ぶりも期待感が増す。ピノの復活気配は嬉しい。グランツールでは表彰台に絡むほどの活躍を期待している。エヴェネプールはやはり難関山岳は課題。彼のアシストも含めてブエルタまでの成長を楽しみに待ちたい。

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◎その他の注目選手の結果と雑感

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総合系では、かつてジロで表彰台に上がったヒンドレーの復活が心強い。ボーラへの移籍がうまくはまりそうな予感がする。また今シーズンで引退するポートはここ数年の好調を維持し、カラパス離脱後、第2エースのゲイガンハートも最終的に崩れたイネオスでエースとして働き、終わってみれば表彰台に一番近いところにいた。アシストとしてみた時に、これほど頼りになる選手はそうはいない。それにしても、DSMは毎年若い選手が出てくる。総合6位に入ったアレンスマン(21歳)とパリ〜ニースで総合11位に入ったレックネスン(22歳)と、まだまだ発展途上で要注目の選手になりそう。

アラフィリップコスヌフロワ等のパンチャー系の選手はステージ優勝を狙えるほどの活躍はなかった。そんな中、山岳賞を獲得したクイン・シモンズは、まだムラがあるもののビッグレースで勝てる底力を感じさせる活躍だった。

 

 

◎予想結果:スプリンター

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好調を維持するユアン。この後に続く春のクラシックでも優勝候補になるだろう。

 

【予想文面】→ ピュアスプリンターの勝負になりそうな平坦ステージは、第3と最終日の第7ステージ。現在の実力では、カヴェンディッシュユアンが頭一つ抜けている印象。ともに山岳が多いコースでどれだけ脚を残せているかが勝負を分けそう。他の優勝候補はヴィヴィアーニアッカーマンメルリールデマール。実績でトップクラスのクリストフブアニバウハウスらも上位に絡む力は十分。本来ならポイント賞候補の筆頭にあがる二人、サガンマシューズはどこまで調子を戻せているか次第。サガンは新型コロナによる影響、マシューズは5日のストレーデビアンケでの落車の影響が気になる。個人的には力をつけつつあるコーイメーウスダイネーゼの若手にも注目している。

【結果】→ 平坦ステージの優勝はメルリールユアンバウハウス。その他にも複数回トップ10に入ったデマールニッツォーロモスケッティも好調を維持。勝利こそなかったものの3回ともトップ10入りしたコーイは驚異的な加速力を見せ、非常に楽しみな20歳である。風邪で体調を崩したカヴェンディッシュと直前のレースでの落車の影響か精彩を欠いたマシューズは調子を上げて欲しいところ。マシューズの代わりにエースを務めたグローブスも健闘した。

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なおポイント賞はポガチャルが獲得。スプリンターに有利な設定ではなかったとはいえ、最終ステージまでしっかり結果を残す抜きん出た存在のスプリンターが不在で、言葉は悪いがどんぐりの背比べ状態にもなっていた。パリ〜ニースも含めて、多くのスプリンターたちは、この後のクラシックレースに向けての調整のようにしていたのかもしれない。

 

 

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