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リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ 2022【リザルト】

 

4月24日に開催されたリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ。衝撃の集団落車と劇的な独走で勝負が決まった。勝利したのは最年少で、チームに今季のクラシック初勝利をもたらしたレムコ・エヴェネプールだった。

*表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。

 

◆2022年のレースの模様はこちら(シクロワイヤードの記事)。

 

 

 

 

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残り30kmを独走したレムコ。誰もついていけない圧巻のアタックだった。

 

 

◎レース結果:トップ10

バーレーン、モビスター、クイックステップが集団を牽引して進むレースは、残り60kmで大規模な集団落車が発生する。昨年王者のアラフィリップが体を投げ出されて救急搬送されるなど、多くの有力選手たちがここで脱落。多くの選手を残したバーレーンが有利にレースを展開すると、残り30kmでレムコ・エヴェネプールが先頭集団から単独でアタック。ひとりで逃げを全員抜き去るとそのまま独走。追走グループに一度遅れたファンアールトが追いつくと牽制が入り、誰もレムコに追いつけなくなる。TT巧者のレムコ得意のパターンがはまり、ガッツポースをしながらゴール。自身初のモニュメントのタイトルは、アラフィリップを失ったチームに今季初のクラシックタイトルをもたらす、大きな大きな勝利だった。
2位争いとなった集団では伏兵ヘルマンスがファンアールトに先着。ヘルマンスはシクロクロスで活躍を続けていた選手で、モニュメントで2位はキャリアハイの成績。またひとりシクロクロッサーがロードで結果を残した。アンテルマルシェの好調ぶりはまだ続きそうだ。なお表彰台はベルギー選手が独占。レムコはベルギー選手として11年ぶりに優勝した選手になった。11年前に優勝したのは今年で引退するジルベール。最後のリエージュで46位で完走したジルベールは誰よりも地元の大声援を受けていた。

 

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小集団スプリントとなった2位争い。ヘルマンスのスプリントは力強かった。

 

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開催国のベルギー勢で独占した表彰台。レムコとファンアールトはベルギー代表のチームメイト、ヘルマンスとファンアールトはシクロクロスでもライバル。トップ10のライダーの体重は60キロ中盤、ひとり75kgのファンアールトの大きな体の違和感がすごい。この表彰台にいることがすでに特別な選手である。

 

 

◎予想結果:優勝候補

【予想文面】→ 本命はあえてファンアールト。普通なら彼向きのレースではないのだが、昨年ツールでの超級山岳ステージで勝ち切った登坂力を思うと十分勝機はある。ゴールは昨年同様平坦路なのでスプリントになる展開になれば彼に勝てる選手はいないだろう。他のチームならエース格のベノートがいるのも好材料。対抗はアラフィリップ。過去のレースでも好成績をあげており、不本意な成績が続くウルフパックとしても是が非でも勝ちたいはず。翌日に42歳の誕生日を控えたバルベルデも元気だ。スプリントで勝ち切る力がないと思うが表彰台を狙う力はまだまだ十分すぎるほど。他は今季好調なモホリッチコスヌフロワ、も十分勝機あり。フレッシュ・ワロンヌで好成績を残したトゥーンスウラソフマルティネスウッズバルギルも上位に絡みそう。ムラがあるヒルマシューズは本命にはあげにくいが、調子が良ければ勝てる力は十分ある。アルプスで総合優勝したバルデも好調のまま参戦する。残念なニュースでは、本命のひとりでディフェンディングチャンピオンポガチャルは、婚約者のお母さんのご逝去により欠場。ヒルシはその分も頑張らないといけないだろう。他の上位候補は下記表を参照。

【結果】→ 3位ファンアールトダニエル・マルティネストゥーンスバルベルデヒルウッズとトップ10の6人は予想。フレッシュ・ワロンヌの2位に続き7位に入ったバルベルデはレース翌日に42歳になった。これだけの成績を残しているのだから、もう一年走って欲しいと願うのは僕だけではないはず。

リタイアしたアラフィリップは肩甲骨と2本の肋骨を骨折し、血気胸と診断されてそのまま入院した。その落車事故で、自らも落車したロマン・バルデは、優勝候補のひとりでありながらレース復帰を放棄し、動けなくなっているアラフィリップの救出をした。彼の行動に敬意を払う。

 

 

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レース前のプレゼンテーションで手を振るアラフィリップ。今年意欲を見せていたジロもツールも白紙になった。

 

 

◎その他の注目選手の結果と雑感

【予想文面】→ 4日前に行われたフレッシュ・ワロンヌで好成績を挙げた選手が上位にくることも多い。優勝候補にあげた選手以外では、ルーベン・ゲレイロ(7位)、モラール(8位)、シュルツ(14位)、ポッツォヴィーヴォ(15位)、ヘラダ(16位)、パシェ(17位)、スケルモース(18位)、ポーレス(19位)、ヨハンネセン(20位)と、かなりの選手が出場する。他にはカルロス・ロドリゲスレムコ、ポガチャルの代わりに出場が決まったマクナルティも注目。積極的にレースを動かす役割を果たしそうだ。そしてバーレーンは誰が上位に入っても不思議ではない実力者が揃った。優勝候補にあげた二人も含めて、全員がエース級といえる陣容はチームの充実を表していて素晴らしい。

【結果】→ まずは優勝したレムコにあっぱれ。大好きな選手なのに優勝予想から外してごめんなさい。5位に入ったイギータも見事。フレッシュ・ワロンヌを回避していたので体調面を心配したが杞憂だった様子。はまった時の成績はトップライダーの仲間入りと言ってもよさそうだ。8位のポーレスモラールパシェも好成績。バーレーンは思ったほど良くなかった。ウランマクナルティほか落車に巻き込まれた多くの選手たちの早期回復を祈ってます。

 

 

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レースが近代化された過去50年で最年少でタイトルを手にしたレムコ。レース後にスタッフや家族と抱き合って喜んでいた姿も印象的。「自転車選手になって一番嬉しい日だ」。

 

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終盤まで多くの選手を先頭集団に残しレースをコントロールしたバーレーンだったが、いまひとつ成績は振るわず。

 

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名物激坂のひとつ「コート・ド・サンロック」を登るプロトン。レースに華やかさが戻ってきた。

 

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最後のリエージュとなったジルベール。過去優勝しているレジェンドに送られる声援は熱かった。