7月30日からポーランドで開催される【ツール・ド・ポローニュ】。79回目を迎える伝統的な7日間のステージレースであり、ツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャのちょうど間の時期になるため、トップクラスの総合エースの出場は少ない。ステージは平坦が2つ、丘陵が4つ、個人TTがひとつで、ステージ優勝を狙うパンチャーやスプリンターたちを中心に出場している。面白い特徴としては、コースの途中に何箇所かボーナスタイムが設定されているので、総合優勝争いをする選手はそこでも勝負しないといけない。
山岳ステージがないこともあり、総合優勝争いは例年同様僅差での勝負になりそう。調子の良し悪しやメカトラなどわずかな要素でも勝負をわける可能性があるという意味では緊張感のあるステージが続く。あまりいいことではないが、個人的にはこのレースは2年前のヤコブセンと3年前のランブレヒトの事故のイメージがついてしまい、とにかく選手の安全を第一に祈ってしまう。以下、各ステージと注目選手を簡単に紹介する。
*正式なスタートリスト発表前の情報なので、選手が変更される可能性あり。表内の選手のUCI世界ランクと年齢は2021年12月時点。
◎ステージプロフィール
◆Stage1(7月30日):Kielce ~ Lublin|218.8km|獲得標高1231m(平坦)
◆Stage2(7月31日):Chełm ~ Zamość|203.9km|獲得標高966m(平坦)
◆Stage3(8月1日):Kraśnik ~ Przemyśl|229.7km|獲得標高1545m(丘陵)
◆Stage4(8月2日):Lesko ~ Sanok|176.8km|獲得標高2621m(丘陵)
◆Stage5(8月3日):Łańcut ~ Rzeszów|205km|獲得標高2179m(丘陵)
◆Stage6(8月4日):Szaflary ~ Wierch Rusiński|11.8km|獲得標高337m(個人TT)
◆Stage7(8月5日):Valsir ~ Kraków|175km|獲得標高1875m(丘陵)
stage1〜2はいくつかの4級山岳がレイアウトされた平坦ステージ。ゴール前は集団スプリントが予想される。
stage3は獲得標高は少ないが丘陵ステージ扱い。200km近くほぼ平坦なコースを進んだ後で突如パンチのある丘が3つ出て来て、ゴールも登りフィニッシュ。大きなタイム差はつかないが小集団に分断しそう。イメージとしてはいかにもマシューズ向きのコース(彼は出場していない)。
stage4・5は典型的な丘陵ステージが続く。獲得標高はそれほどでもないが、延々とアップダウンが続く、パンチャー系選手の脚の見せ所。ゴール前は平坦基調なので大きな差はつきにくいが、有力選手が逃げに乗ると意外な差がつく可能性もある。
stage6は個人TT。距離は短いがゴールまで5〜6%の登りがずっと続き、大型なTTスペシャリストよりはクライマーやオールラウンダー向け。総合優勝を狙う選手はこのステージで差をつけたい。
最終日stage7は前半に1級を含む山岳を超え、後半はほぼフラットな丘陵コース。標高は600m程度でそれほどでもないが10%前後の傾斜は脱落する選手も出てきそう。山を乗り越えた選手たちによる集団スプリントになると予想。
◎総合優勝候補
本命はあえてビルバオ(もはや願望)。地元スペインのサンセバスティアンを外して出走するこのレースで、ここ最近元気のないバーレーンに勝利という特効薬を持ち帰ってほしい。対抗はカラパス。実績通りでいけば優勝候補筆頭だが、難関山岳ステージもないステージレースで、ボーナスタイム争いで汗をかくイメージがあるかというとやや疑問でもあり、表彰台は固そうだが、優勝には少し説得力に欠ける印象。イネオスではヘイターの方がそのあたりは積極的なイメージがある。ただ、ヘイターについてはいまひとつ特徴を掴みかねている。TTはAクラス、スプリントも強いが、ちょっとした登りで遅れる姿が散見される。もしかしたら総合系というよりは北のクラシックに強いタイプなのかも。優勝候補にはもうひとりイギータ(願望も込めて)もあげておく。彼向きの長い登りはないが、苦手としていたTTも相当改善され、クライマーから総合系の選手にしっかりと力をつけてきた印象。不安があるとすれば総合系のアシストが少し弱いことかも。個人よりもチーム力を見るとイネオスがひたすら強いかもしれない。
前段でも触れたが、他のワールドツアーのステージレースよりビッグネームの出場が少ないため、新たな若手GCライダーたちが台頭する舞台にもなる。そういう意味で気になる存在として、数人優勝候補にあげておく。Tヨハンネセンは昨年のラブニール優勝者で、カタルーニャで総合7位に入るなど売り出し中の若手実力派。ジロ総合18位、ティレーノ総合6位でTTにも強みを見せる新世代の総合系アレンスマン。ツアー・オブ・アルプスで総合6位になるなど伸び盛りの印象のガール。総合系に人材の少ないクイックステップで奮闘し、そろそろクライマーから総合系にシフトしていく雰囲気も感じるファンセヴェナント。総合系の育成に定評のあるユンボではミック・ファンダイクも要注目の選手(双子の弟ティムもユンボに所属し、二人で昨年のオランダU23選手権の1・2位を独占した)。それぞれ総合トップ10に絡むくらいの活躍をしてほしい。若手以外では、クラースはドーフィネ、ロマンディ、ナスクカントリー、パリ〜ニースとビッグレースで全て上位20位以内に入り、着実に力をつけている。ハミルトンもこのメンバーでは上位にくるべき選手。ベテラン勢ではウリッシ、デマルキも普通に走ればトップ10には入りそう。他の上位候補は下記表を参照。
◎スプリンター
なかなか面白いメンバーが揃ったと思う。stage1・2の平坦ステージは集団スプリントが濃厚で、stage7も丘陵を乗り越えられれば勝機はあるだろうか。実績や今季の好調さではカヴェンディッシュとデマールが頭ひとつ抜けているが、個人的なイチ推しはなんといってもユンボのオラフ・コーイ。ステージ総合優勝も含めて今季すでに8勝(うち6月だけで4勝)を上げ、いま一番勢いがある若手スプリンター。カヴたちに勝ってもなんら不思議ではない。他の若手では昨年からの成長が著しいメーウス、グローブスの二人も要注目。実績のある選手ではヴィヴィアーニ、サム・ベネット、アッカーマンがいるが、いずれも今季の成績には不満を感じる。バウハウス、モスケッティ、メレツィコらの中堅どころの方が好成績を期待できそうに感じてしまう。
◎その他の注目選手
チーム別ではイネオスの若い二人トゥレット、シェフィールドは非常によい。総合エースのカラパスのアシストが中心になると思うが、展開次第では総合上位に入っても不思議ではない。バッティステッラ、アレオッティ、ハイス、オルダーニの若手選手は特に注目している。
stage6の個人TTは「TT」とマークした選手に注目。カヴァニャ、シュミット、ソブレロも有力だが、ほとんど登りのコースと思うとアルミライルが本命と見る。他にTTが強いのはカラパス、アレンスマン、ヘイター、ハミルトン、テウニッセン。
◎過去の総合成績(2021年、2020年、2019年)
参考までに過去3年間の総合成績10位までと各賞(ポイント賞・山岳賞)を入れておく。所属チームは今季との比較も。個人でトップ10に複数回入っているのは、ウリッシが3回、ヒンドレー、マイカが2回。チーム別で好成績なのは、スイックステップ、UAE、DSM(サンウェブ)が4人、イネオス、ボーラが3人、その他というかんじに。
出場選手で過去の優勝者はクフィアトコフスキ(2018年)、ウェレンス(2016年)の二人。